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「オレもここにいる!」“次の主役達”U-20代表候補がU-20W杯出場のアメリカに善戦も逆転負け

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U-20日本代表候補初選出のFW安部裕葵は積極的なドリブルでチャンスを作り出した

[5.13 練習試合 U-20日本代表候補 1-2 U-20アメリカ代表 舞洲]

 U-20日本代表候補は大阪合宿最終日の13日、U-20W杯に出場するU-20アメリカ代表と練習試合(45分×2本)を行い、1-2で逆転負けした。

 U-20W杯に出場する“本隊の”U-20日本代表が静岡で直前合宿を行っている中、U-20W杯メンバーには選出されなかった選手達による“もう一つのU-20代表候補”チームが将来へ向けての強化に取り組んできた。

 大阪合宿の5日間の総決算となるU-20アメリカ代表戦。前日練習の最後に影山雅永監督が「明日は思い切りやろう!」とメッセージを送り、またMF住永翔(明治大)が「ワールドカップに出る相手にどれだけできるか」と口にしたように、彼らは世界相手に意欲的に戦い、健闘した。

 4-4-2システムのU-20代表候補の先発はGK大迫敬介(広島ユース)、4バックは右SB田中康介(立命館大)、CB中川創(柏U-18)、CB阿部海大(東福岡高)、左SB杉山弾斗(市立船橋高)。中盤は金子大毅(神奈川大)と住永のダブルボランチで右MF鳥海芳樹(桐蔭横浜大)、左MF黒川淳史(大宮)、2トップは小松蓮(産業能率大)と安部裕葵(鹿島)がコンビを組んだ。

 序盤こそ日本が後方からボールを繋いでリズムを掴んでいたが、前半半ばの時間帯は完全にアメリカペース。安部と小松が前から積極的にボールを追っていたものの、幅を使って正確にボールを動かす相手の前に後方の選手が寄せきれなかったり、球際で「ガツッと」当たることのできなかった日本は簡単に間を取られてピンチを招いてしまう。

 12分にはマークのズレから、また23分には自陣でのパスミスから決定的なシュートを打たれてしまった。ボールを奪いきれずに重心が後ろ寄りになった日本だが、ここでよく踏ん張っていたのが前日に追加招集された阿部と中川の高校生CBコンビ。対人で強さを見せる阿部と幅広いカバーリングを見せていた中川の奮闘などによって何とか0-0のまま試合を進めた。

 前半30分頃からは日本の球際での当たりが目に見えて激しくなった。影山監督は「小細工して(厳しく)行かないでやらせないと言っていても、結局やられるんだから、行かなきゃどうしようもないからなと言っていた」というが、それでも実際に試合に入って「厳しく行かなければダメだ」とようやく実感した選手も多かったようだ。

 だが、キャプテンマークを巻いた住永中心に声を出し、その点に気づいて修正した日本は、ファウル覚悟で厳しくチェックするようなシーンが増加。それによって、ボールを奪ったり、セカンドボールを拾う回数が増え、相手のリズムを崩すと同時にカウンターからチャンスを作るようになった。

 攻撃面でも思い切り良く攻めるシーンが増えた日本。特に安部がその個人技によってマークするDFに対して完全に優位に立っていた。安部は飛び込めない相手DFの逆を取るドリブルでチャンスの起点に。また黒川がPAへ勢い良く飛び込んだり、杉山の左足クロスがクロスバーを叩いたり、小松が左足シュートへ持ち込んだりするなど攻める日本は37分、金子の縦パスを受けた安部がハーフウェーライン手前から単独でPAまでボールを運んで決定的な右足シュートを打ち込んだ。

 後半2分に背後を突かれてクロスバーに救われるピンチがあったが、直後の3分に日本が先制点を奪う。敵陣右サイドで小松が相手ボールをインターセプト。そのまま中へ持ち込んだ小松のパスを鳥海がはたき、安部が粘って繋ぐと、最後はPAで上手くボールを拾って抜け出した黒川が右足シュートを左隅へ流し込んだ。

 アメリカは後半開始から6人を入れ替えてギアを上げてきていたが、リードする日本はPAまでボールを運ばれても大迫らが落ち着いて対応。決定機を作らせない。その日本は19分に安部と鳥海に代えてFW安藤瑞季(長崎総合科学大附高)と右MF大山武蔵(C大阪)を投入。24分には黒川に代えて左MFに山根永遠(C大阪)を送り出した。そして28分には住永と杉山をMF山田康太(横浜FMユース)、DF長谷川巧(新潟)へチェンジ。長谷川を右SB、左SBに田中を移した。

 日本は山根の右足FKが左ポストをかすめ、安藤のドリブルシュートがゴールを捉えるなどアグレッシブに2点目を狙う。だが、33分、中盤でボールを奪われるとショートカウンターから最後は折り返しを右FWラゴス・クンガに左足で決められて同点。それでも日本は「あそこでもう一ギア上げて、もう一個パワー出せるのが日本人の強みでもある」という影山監督の「前へ」の声に呼応するかのように、住永からキャプテンマークを受け継いだ金子や安藤らが前に出て勝ち越し点を狙いに行く。だが44分、自陣で中盤、最終ラインの間に落ちたボールをうまく処理できずに攻め込まれると、最後は右サイドのクンガに左足シュートを沈められて逆転負けした。

 黒川は「世界大会に出るアメリカに対してこれだけできたのは良かったと思うんですけど、最後のところ粘れるかというところで失点しないところやもう1点、2点獲るところをこれから追求していきたい」。強敵を追い詰めたが、勝ちきれなかったことを反省。この経験をこれから先に繋げる。

 今回のU-20日本代表候補はU-20W杯メンバーから惜しくも落選した選手や、U-18日本代表の主力組、日本高校選抜でアピールしてきた選手、全国的に無名な存在ながらも抜擢されてきた選手など様々な立場の選手が影山監督の「濃い5日間にしよう!」というメッセージの下、5日間の合宿で精一杯成長しようとしてきた。

 その総決算だったU-20アメリカ代表戦はできた部分も多かった。U-20W杯に出場するアメリカを苦しめることもできた。だが、強敵は自分達にできた隙を容赦なく突いてきて、わずかなミスを得点に結びつけてきた。日本にとっては悔しい逆転負け。それでも影山監督は「ピッチの上で締める時に『5日間面白かったぞ、ありがとうな』というふうに感謝の気持ちを伝えました」という。濃い5日間を送ろう、上に上がろうとする意志を表現していた選手達。そして、指揮官は「U-20W杯に行けなかった選手とか、無名の選手とか、そういったやつらが『オレもここにいるんだぞ』と出したくてウズウズしているんですよね。そういった気持ちなどをしっかり育ててあげたい」と続けた。

 6月には今回の選手達も含めたU-19日本代表が結成され、トゥーロン国際大会(フランス)を戦う。またU-18日本代表は今秋に19年U-20W杯の出場権を懸けたAFC U-19選手権予選に臨む。そして、20年東京五輪……。日本代表のユニフォームを背負って、次の「主役」になることを夢見る選手達はたくさんいる。今回「濃い」5日間の合宿を送って評価を高め、アメリカを苦しめたU-20代表候補のように、「オレも!」という情熱ある選手達が日常から濃い日々を送って、次のチャンスを掴む。

(取材・文 吉田太郎)

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