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宮城開催の全国総体は“特別な大会”。 震災後、毎年東北遠征行う大阪桐蔭が前回王者・大阪学院撃破!!:大阪

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大阪桐蔭高のFW今岡陽太は決勝点を決めた

[5.14 総体大阪府予選6回戦 大阪桐蔭高 1-0 大阪学院大高 J-GREEN堺]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)の大阪府予選は14日に6回戦を行い、14、15年優勝の大阪桐蔭高と16年優勝の大阪学院大高との一戦は1-0で大阪桐蔭が勝った。大阪桐蔭は21日の準々決勝で大阪産大附高と戦う。
 
 前回王者と前々回王者が激突したベスト16の注目カード。大阪桐蔭のMF西矢健人主将(3年)は「先週ちょっと浮ついた部分があったんですけど、きょうは試合前からいい雰囲気でできた。アップも工夫して(大阪)学院は最初から来るんで、スロースタートじゃダメなんで、そういうところもしっかり自分達で対策とってアップからやれたと思いますし、最初に失点して相手のペースにならなかったのが良かったと思います」と振り返った。

 立ち上がりから出足の良い攻守をしてくる大阪学院対策として、自分達が良い入りをできるように、自発的に通常よりも早い集合時間を設定して準備していたという大阪桐蔭は、相手に飲み込まれることなく、試合を進めることに成功した。大阪学院はスピードのあるFW山見大登や10番MF乾昂汰(ともに3年)を中心に攻めてきたが、大阪桐蔭は元FWの田中智也と寺井雄紀(ともに3年)の両CBや右SB神戸康輔(3年)が相手をゴールに近づけない。

 また、西矢とMF北田大亜(3年)が正確なパスで攻撃をコントロールする大阪桐蔭は、右のドリブラー、MF菊井悠介(3年)や鋭い抜け出しを見せるFW今岡陽太(3年)が大阪学院ゴールへ迫った。頑張りどころで良く走り、身体を張る大阪学院も、DF岸本拓真(3年)やMF和田圭祐らが集中した守りを見せて対抗。拮抗した試合は0-0のまま前半を折り返したが、後半開始直後に大阪桐蔭が先制する。

 右サイドからカットインしたMF木村勇大(2年)のスルーパスから今岡が先制ゴール。その後もワイドを活用した攻撃から2点目を狙う大阪桐蔭に対し、1点を追う大阪学院はセットプレーから得点チャンスを増やす。だが、GK藤本諒哉(3年)が好セーブを見せるなど大阪桐蔭は1点を許さない。田中が「苦しい時こそみんな声出しているし、(普段から)言われている分、他のチームよりできていると思います」と語ったように、逆境でよくまとまって力を発揮した大阪桐蔭が1-0で勝利。2年ぶりの全国大会出場へ一歩前進した。

「内容のあるサッカーをしなければいけない。勝つことだけを考えた指導をしてはいけない」という永野悦次郎監督の下、大阪桐蔭は大阪学院の厳しいプレッシャーの中でもボールを繋いで、主導権を握ってサッカーをしようとしていた。指揮官は「まだまだイージーミスが多い」と口にするが、技術レベル高い選手の多いチームは、全国総体の行われる宮城での躍進を誓う。

 大阪桐蔭にとって宮城県で開催される全国総体は特別な大会だ。同校は11年3月11日に発生した東日本大震災の翌12年から毎夏、東北遠征を行っている。西矢は「(宮城県)石巻の子たちとサッカーしたりしている。今年は宮城と聞いて。その子らにプレーで元気与えたいし、それをしっかり頭に置いて、『宮城に絶対に行く』という気持ちはどこのチームよりも持っていると思います」。

 震災の“後遺症”に苦しむ地域を目の当たりにして学んできたことがある。「自分達がどれだけ恵まれているのか感じるし、そういうところを意識してみんなサッカーに取り組んだりすれば、ひとつの笛とか気にならないし、宮城に行って成長していると思います」(西矢)。例え、大阪府予選で敗れても東北遠征は実施予定。だからこそ、「何が何でも勝って宮城へ行きたい」という選手たちがその情熱も力に激戦区・大阪予選を突破する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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