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なぜ原口元気は失速したのか?4つの原因と移籍の可能性とは【海外日本人総括】

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充実と失望が入り混じる1年になったMF原口元気

 海外で戦うサムライたちは2016-17シーズンをどのように過ごしたのか? 歓喜の瞬間を迎えた者、充実の日々を送った者、葛藤してもがき苦しんだ者……。彼らが過ごした1年を、改めて振り返る。

■順調なシーズンインを果たすも…

 ヘルタ・ベルリンのMF原口元気にとっての2016-17シーズンは充実と失望が入り混じる1年になってしまった。シーズン開幕直後はベンチからのスタートが続いたものの、8月下旬のリーグ開幕戦では先発入り。第2節のインゴルシュタット戦で2アシストをマークして勢いに乗ると、その後第9節までリーグ戦全試合で先発フル出場するなどチームに欠かせない存在になった。

 その好調ぶりは日本代表でも発揮された。9月のタイ戦ではヘディングで先制点を奪い、10月のイラク戦とオーストラリア戦でも得点をマークする。さらに11月のサウジアラビア戦でもアジア最終予選4戦連続となるゴールを決め、初戦で躓いた日本の救世主となった。

 しかし、11月の第11節アウクスブルク戦で初めて先発から外される。前節のパフォーマンスが良くなく、代表戦の疲労も考慮しての一時的な判断かと思われたが、その後もベンチスタートが増えていった。

 2月初旬の第19節インゴルシュタット戦でようやく今季のリーグ戦初ゴールを挙げたことで再びスタメンの座を取り戻し、そのまま調子を上げていくかとも思われた。だが、思うように結果を残すことはできずに終盤戦はまた出場機会が減ってしまった。

■失速の4つの要因

 なぜ原口は中盤戦から失速してしまったのだろうか? 考えられる要因は4つある。

 まずは疲労だ。原口は序盤戦で文字通りフル稼働しただけでなく、すべての試合で献身的にピッチを駆け回った。そこに長距離移動を強いられる日本代表での戦いも加わった。地球を3/4周以上して週半ばにベルリンへ帰った直後の金曜日に行われた試合で先発することもあった。疲れていたのは体だけではなく、「ちょっと試合が多くていろいろ考えすぎている部分もある」と本人が吐露したように、大きなプレッシャーを背負った日本代表での戦いと次々に試合がやってくる過密日程は確実に原口の心も蝕んでいた。

 加えて、原口にはクラブでゴールを奪えていない焦りもあった。12月の第13節ボルフスブルク戦後に、原口は「若干焦りもあるし、やらなきゃいけないという思いからかシーズン最初の方のような落ち着きはなくなった」と明かしている。”これが決まっていれば…”というシーンがある。第6節ハンブルガーSV戦、左サイドからドリブルでカットインした原口の右足から放たれたシュートは緩やかなカーブを描きながらゴールへ向かったが、惜しくも左ポストに弾かれゴールとはならなかった。ゴール1つで選手の心理は大きく変わる。紙一重の差がシーズン全体を通して尾を引いてしまったようにしか思えない。

 原口がゴールを奪えないでいると、結果を残したカルーに得意とする左MFのポジションを奪われ、右サイドに回されてしまった。これが3つ目の要因だ。カルーがゴールを奪ったのはトップ下として出場した試合だ。しかし、原口は「僕の結果が足りなかった」とそれを受け入れるしかなかった。右サイドでの起用は、得意とするカットインからのシュートという選択肢を奪う。このポジション変更で原口は厳しい状況に立たされてしまった。

 シーズン後半戦には契約延長をめぐるクラブとの軋轢も待っていた。ウィンターブレイク中のキャンプで原口が控え組に回ると、ダルダイ監督は「我々が契約延長を望んでいると彼が知ってから、オーバーモチベーションになっているように見える」とその理由を説明した。しかし、考えれば妙だ。クラブが契約延長を望んでいると知れば、原口の気持ちは落ち着くはずだ。現地報道によるとヘルタは秋ごろから契約延長を提示していたという。つまり、首を縦に振らなかったのは原口の方であり、しびれを切らしたクラブ側がけん制したと考えるのが妥当だ。結局、原口が「干される」ことはなかったものの、この問題はシーズン終盤の地元メディアを騒がせた。

 結果を見れば物足りないが、日本代表での活躍も含めてシーズン全体としてみれば成長を感じさせるシーズンになった。

■移籍の可能性は?

70%

クラブからの契約延長オファーを保留している状態にある。本人に契約延長の意思があればとっくにサインしているはずだが、すぐに首を縦に振らなかったということは移籍を探っていると考えられる。しかし、ヘルタがEL出場権を獲得したことは原口にとっても大きな魅力だ。

文=山口裕平


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