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エースが徹底マーク受けて攻撃リズム欠くも…静岡学園が後半ATの決勝点で浜名を振り切る!

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静岡学園高が苦しみながらも静岡連覇に王手

[5.28 全国高校総体静岡県予選準決勝 静岡学園高1-0 浜名高 草薙陸上競技場]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(7月開幕、宮城)への出場権を懸けた静岡県予選は28日に準決勝を行い、昨年度全国8強の静岡学園高と全国優勝経験を持つ浜名高との一戦は、後半アディショナルタイムにCB江口正太郎(2年)が決めた決勝点によって静岡学園が1-0で勝った。静岡学園は2年連続となる全国大会出場を懸けて、6月4日の決勝で清水東高と戦う。

 後半は規定の40分を過ぎて、アディショナルタイム表示の2分に突入していた。それまで15本のシュートを放ちながらもゴールを奪えずにいた静岡学園が最後のチャンスで1点をもぎ取る。右CKを左SB東山達稀(3年)が左足で蹴り込むと、ニアサイドに飛び込んだ江口が一際高い打点からヘディングシュート。これがファーサイドのゴールネットを揺らして劇的な決勝点となった。

 大興奮のサブ組やスタンドの応援団の下へ駆け寄ってガッツポーズした江口は「みんなが苦しんでいる状況で、最後セットプレーで決められて良かったです」と自身の劇的な一撃で奪い取った1点と勝利を喜んでいた。
 
 試合は11年ぶりの4強入りを果たした浜名の健闘が光るゲームとなった。浜名は高い守備能力の持ち主であるMF金原翔(3年)が静岡学園の16年U-17日本代表MF渡井理己主将(3年)をほぼマンツーマンでマーク。渡井はその中でもボールを受けていたが、金原はチームメートとともに相手のキープレーヤーを挟み込んで、何度もボールを奪い取っていた。

 渡井を封じ込まれたことによって、静岡学園は攻撃のリズムを欠き、PAをコンビネーションで崩す回数がわずかに。それでも、静岡学園はFW伊藤稜馬(3年)や右SB松井温人(2年)ら多彩なドリブラーたちがサイドを切り崩してクロスまで持ち込んだり、正面からわずかにDFを外してシュートを打ち込んだ。だが、浜名は人に良く付いていたDF陣がゴール前でシュートコースを空けず、静岡学園に精度の高いシュートを打たせなかった。

 加えて、静岡学園は川口修監督が「プレッシャーのある中でのミスじゃなくて、フリーでミスしてはいけないところでミスしてカウンターになっている。これも改善しないといけないんだけど、やってはいけないミスが多々あった」と指摘したように、ミスなどから浜名DF陣に前向きの状態でボールを奪われると、ギャップに縦パスを1本通されて攻め返されてしまう。

 浜名はMF染葉達希主将(3年)が好パスを通していたほか、右SB三好翼(2年)が敵陣深く切れ込むシーンもあった。内藤康貴監督が「一つ裏一本になってしまったところもあったので。本当はもっと時間を作って攻撃をやりたかった」と振り返った浜名だが、静岡学園にも得点を許さない。後半も金原がチームメートたちと上手く受け渡しながら渡井を監視。そして良い形でボールを奪うとカウンターを繰り出し、三好の右クロスにFW伊藤綾介(3年)が飛び込んだり、スピード武器の伊藤が抜け出しかけるなど、一刺ししようとする。それでも静岡学園はMF清水綾馬(2年)や江口が突破を阻むなど相手にシュートを打たせなかった。

 前後半計80分終了後に即PK戦の準決勝。何とかPK戦突入前に決着をつけたい静岡学園は後半半ば以降、清水の1タッチパスなどを交えたコンビネーションでPAを取る回数を増やしていく。そしてトップ下から右サイドへ移ってスペースを得た渡井の高速ドリブルも脅威に。38分に渡井が1人でPA中央まで持ち込んだ場面は決められず、41分にFW塩浜遼(2年)が放った右足シュートも左ポストをクリーンヒット。だが、42分にCKから江口が殊勲のゴールを決めて決勝の切符を勝ち取った。

 静岡学園はドリブラーたちがさすがのレベルの高さを見せたほか、守備陣は今大会無失点の安定感を披露した。だが、「全国トップクラスのチームの守りを崩すことを目指している」(渡井)というチームにとっては不満の出来だ。川口監督も課題の多かった一戦について「まだまだ未完成ということ」とコメント。徹底マークをなかなか打開できなかったエース渡井に苦言を呈すると同時に、渡井頼みになってしまっていたチームに全く満足していなかった。

 それでも、勝負強く勝ち切ったことは大きい。指揮官もこの点については「苦しみながら県取って全国へ行く方が成長に繋がる」。そして渡井は「こういう(ゴールへ向かい続ける攻撃的な)サッカーができるのは自分たちしかいないと思う。全国でも表現すればどんな相手でも勝てると思う。ちょっとでもずれると合わない部分があるのでもっと高めたい」。この日の苦戦、課題を良い経験に。そして一週間のトレーニングでよりこだわって精度とスピードを高めて、決勝では観衆を沸かせて勝利する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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