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[MOM443]順天堂大FW旗手怜央(2年)_復帰戦でエースが示した熱、「勝つために一秒でも時間が欲しい」

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仲間に向かって吼えた順大FW旗手

[5.28 関東大学1部L第7節 日本体育大1-2順天堂大 味フィ西]

 その姿勢こそがエースたる所以だった。順天堂大のFW旗手怜央(2年=静岡学園高)は左太腿裏肉離れからの復帰戦でゴールを記録。チームの逆転勝利に貢献した。開幕戦を最後に5試合に渡って戦線離脱していたが、23日に全体練習に復帰。28日に迎えた日本体育大戦でゴールネットを揺らし、4戦ぶりの白星を届けた。

 復帰戦となった日本体育大戦。2-0までスコアが開いていれば、旗手の起用はなかったという。それでも前半を0-0で終え、2トップの動きが良くなかったこともあり、堀池巧監督は旗手の投入を決断。ハーフタイムに「15分、20分でいいか?」と本人に尋ねたが「試合に馴染むまで30分は絶対に欲しい」と訴えられたため、「後半の10分はウォーミングアップに使いなさい」。そして予定通り後半10分に投入しようとしていたところで失点。直後の11分にピッチへ送られた。

 得点以外にも旗手を象徴とするシーンがあった。チームがMF米田隼也(4年=静岡学園高)の得点で1-1に追いついた後半17分、集中応援ということで多くの関係者が詰め掛けたスタンド前で仲間たちは歓喜に沸いた。しかし旗手は頬緩ますことなく、険しい表情で「ボール!!!」と叫んだ。

「集中応援だからって点を決めて喜んでいる場合じゃないし、本当に優勝を目指すなら、引き分けくらいでいいやってことはないので。勝つために一秒でも時間が欲しいので、あの場面は咄嗟に出ました」

 この姿を見た堀池監督は「追いついただけでなく、勝ちきるだけの力を持っているという自負もある。それを証明したいと言う気持ちも強いんじゃないか。2年生とか学年は関係なく、CFとして出ている人がそういう自覚を持ってやるべきですし」とそのメンタルを称える。

 2年生FWの叫びで我に返った順大イレブンは素早くボールを戻し、2点目を目指した。そして後半23分、逆転弾は生まれる。中央からのカウンター。MF杉田真彦(4年=静岡西高)のボールに抜けたFW松島奨真(4年=桐生一高)が後方から迫り来るDFンドカ・ボニフェイス(4年=浦和東高)をかわし、正面に待ち構えるGK山田晃平(3年=鹿島ユース)も引き付けて中へ折り返す。詰めていた旗手が難なく右足で流し込んだ。

「奨真くん(松島)のところにボールが出た瞬間、奨真くんがシュートを打っても打たなくても、自分が横にいれば、相手GKが惑わされるなと。打ったとしても自分もいこうと詰めようと思っていました。そうしたら横パスをくれたので、本当にありがたいなと。あれは奨真くんの得点です」

 指揮官は「決めるべきところにいるというのがすごく大事。難しいシュートではなく、俺でも入るくらいのシュートだったけど」と冗談交じりに2年生FWを称えた。

 ルーキーイヤーの昨季は大きな怪我もなく過ごしたが、今季は初の負傷離脱という経験をした。堀池監督は「“今日は少し休んだら?”と“早く帰ってお風呂入ったら?”と言っても、怜央は“ちょっとだけ”と言って、1時間やっていたりするから、休むこともトレーニングだということに気がつくなど、今回の怪我から何かを学んで欲しい」とも語る。

 現在行われているU-20W杯を戦うU-20日本代表から落選したこともあり、本人も「怪我云々ではなく自分は入っていない。それに怪我しているのも実力。もう一度そういうところに選ばれるためにはどうしないといけないのか、サッカーだけでなく身体とも向き合いつつ、やっていきたいです」と口にした。やみくもにボールを追うだけでなく、一サッカー選手として資本である身体との付き合い方も見直していく。

 今夏には“世界大会”であるユニバーシアード競技大会も控えている。主力メンバーとして期待がかかる旗手は「金メダルを取れないと言われていると思いますが、それは本大会で選手がやるかやらないかだと思う。金メダルを取りたいという4年生についていくだけではダメ。自分から発信していかないといけないし、金メダルを取りたい」と強く誓った。初の負傷離脱を乗り越え、逞しさを増したFWは結果を求め続ける。

(取材・文 片岡涼)

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