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世代屈指のテクニシャン、静岡学園MF渡井理己「マンツーマンが来ても剥がせるように」

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静岡学園高MF渡井理己主将

[5.28 全国高校総体静岡県予選準決勝 静岡学園高1-0 浜名高 草薙陸上競技場]

 静岡学園高の川口修監督は試合後、浜名高のマンツーマンマークに苦戦したエースMF渡井理己主将(3年)について厳しいコメントを並べていた。「物足りない」「前半なんて90パーセントダメ」「これじゃあ、上でできない」……。

 今年、名門の10番を背負う渡井はU-16、U-17日本代表に選出されてきた世代屈指のテクニシャン。PAを個人で打開できる稀有な存在として、下級生時から注目を集めてきた。昨年の全国総体ではチームの8強入りに貢献して大会優秀選手にも選出。だが、この日は浜名高MF金原翔(3年)のマンマークを受けて「機能停止してしまった」(川口監督)。

 渡井は「結構、背負って受ける場面が多かった」。なかなか前を向かせてもらえなかった渡井は意図的に下がり目のポジションを取ったり、サイドへ開いたりするなど打開策を考えながらプレー。左サイドからゴールライン際の狭いスペースをこじ開けて決定機を演出するなど、完全に封じ込まれたわけではなかったが、ボールを受けるタイミングが合わず、珍しくボールロストの多い試合となってしまった。

 後半には指揮官の指示でトップ下から右サイドへポジションチェンジ。スペースを得たことで輝きを取り戻し、終了間際には緩急を活用したドリブルで2人、3人と振り切ってシュートまで持ち込んだ。

 だが、試合を決めることはできず。川口監督は「(1対1だったら前半から)剥がして欲しい」と指摘し、本人も「全然良くなかったです。1対1なんで自分なりにできれば外せると思う。マンツーマンが来ても剥がせるようにしたい。(チームとしても) 距離遠くて繋がり切れなかったのが最後の方もあったので、もうちょっと全体として距離詰めてダイレクトで崩すとかアイディアを出していきたい」と改善することを誓っていた。

 今年は個人的にゴール数が増え、ドリブルの精度向上にもよりこだわって取り組んでいる。各試合で観戦した人々にインパクトを残すほどの活躍を続けてきた。一方でスルーパスは狙うべきところが見えているものの、そこへ通す精度を欠くなど課題に。もう1ランク上のプレーヤーになるために、得点数もアシスト数も増やし、よりボールを失わない選手にならなければならない。

 現在はチームの新人戦に続く2冠達成に集中。静岡を突破すれば、夏の全国大会は高校からプロ入りを目指す自身にとっても将来を左右する大会になりそうだ。「結果出せないと評価されないと思う。(今日は)点取れていなかったのでもっと点にこだわっていきたい」。今後マークがより厳しくなるであろう渡井にとってこの日は良い経験になったかもしれない。自分のプレーを表現できなかった悔しさをバネに、決勝までの短時間でも成長を遂げて優勝を勝ち取り、全国でインパクトを残す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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