beacon

伝統校・高松商が『NIKE ACADEMY TOKYO』のトレーニングでフィニッシュ強化。“特別コーチ”小林祐希の指導で新たな発見も

このエントリーをはてなブックマークに追加

MF小林祐希の指導を受ける高松商高の選手たち

 全国高校総体出場32回、全国高校選手権出場22回。高松商高(香川)は95年と98年の全国高校総体で4強入りも果たしている四国屈指の伝統校だ。今年、秋田商高(秋田)が33回目の全国総体出場を決めた一方で高松商は県予選敗退を喫したため、全国総体出場回数首位から転落したものの、彼らが持つ歴史が“特別”なものであることに変わりはない。伝統校のプレッシャーも感じながら全国高校選手権予選連覇、全国大会での勝利、プリンスリーグ四国残留を目標に再スタートを切っている高松商が14日、サプライズで参加した“特別コーチ”の下、意識高いトレーニングでフィニッシュ強化に取り組み、新たな発見をした。

 高松商はこの日の放課後、校内で「継続的な日本サッカーの発展ために、さらなる普及や次世代選手の育成を促進することを目的としたプロジェクト、『JFA Youth & Development Programme(JYD)』」事業に参加。フィニッシュをテーマとした『NIKE ACADEMY TOKYO』のトレーニングセッションと、株式会社明治の栄養士による栄養セミナー、そしてニチバン株式会社の担当者によるテーピングセミナーを受講した。

 高松商OBで、今年4月に高松北高から転任してきた川原寅之亮監督は「今回のテーマが点を取るということで、課題に沿っている。チームの点を取る形もはっきりとしたものがないですし、質が無い。何より(選手たちに)自信が無かったのできっかけになれば」と今回の受講理由について説明していた。プリンスリーグ四国では開幕4試合でわずか1得点、10チーム中9位に沈んでおり、総体予選ではまさかの3回戦敗退。志度高に守りを固められて0-1で敗れてしまった。

 今後の目標達成へ向けた鍵となるフィニッシュ強化を目指して受講したトレーニングセッションには、ヘーレンフェーン(オランダ)で活躍するMF小林祐希が“特別コーチ”として参加。事前に知らされていなかった選手たちは当初、緊張で動きが硬かったが、その中でも発するわずかな言葉も聞き逃さないようにトレーニングをしていた。マークするDFを外してボールを受けるオフ・ザ・ボールのトレーニングで小林は「(動きに)緩急を入れること」「(味方がパス交換する)ボールの移動中に動いておくこと」「(受け手が)動きすぎないこと」など、時に実演しながらアドバイス。また、DFに対しても「相手を触れる距離を維持すること」と注意していた。

 その後、パサーとのタイミングを合わせて抜け出してシュートを放つトレーニングなどを実施。徐々に高松商の特長だという本来の明るさが出てくると、「ルーティーンってあるんですかと聞いたら、小林選手は3分間くらい一人になる時間をもらってずっと深呼吸しているそうです。形から入るのも大事かなと思うのでやってみたいと思います」と語った国体選抜GK西滉太(2年)のように、トレーニングの合間に自分から小林に質問する選手もいた。

 小林とともに指導した『NIKE ACADEMY TOKYO』の小島直人ヘッドコーチは高松商の選手たちが抜け出す動きをアジェストしながら80パーセントの力でやるのではなく、100パーセントで動いていたこと、全力でやっていたとを評価。「あの強気な部分が噛み合えば面白いと思います。オーバーラップや横の動きが多くなればシュートシーンも増えるのでは」と口にしていた。一方で1本1本のパスが雑になっていたことを指摘。ダイナミックな良さを維持すると同時に、1本のチャンスをものにする正確性の向上について求めていた。

 約1時間30分間の“指導”を終えた小林は「実際、プロとトレーニングして真剣にやったらボール取れるんだとか、プロもミスするんだとか、そういうことを体感できただけでも全然変わってくると思う。しゃべるっていうことと、ミスを恐れずに自分のプレーを続けること、味方のミスをカバーすることを常に考えながらできる選手になって欲しいというのは伝えられたかなと思う」。最後はテンションが跳ね上がっていた選手たちに合わせて小林も一緒にパフォーマンスして見せるなど、笑顔で会場を後にした。

 選手たちにとっては海外で活躍するプロ選手の言葉や動きによって発見したことがいくつもあったようだ。FW西村陸(3年)は「重心などを見て相手と駆け引きしてボールをフリーでもらうことや、小林祐希選手のシュートを見ても、自分たちの足りない所ばかりだった」と振り返り、昨年からの経験者であるMF末久傑(3年)も「いつもやっているトレーニングとは質とかが、自分の中でちょっと違っていた。いつもやったら何気なくやっているところも気にして細かいところを意識してやることができました」と語っていた。 

 目標を達成するために必要なこと。それは技術や判断力だけではない。揺らぐことのない意志も必要。小林は「自分の才能とか可能性を疑わないこと。オレはそれだけでやってきたんで(微笑)。それさえあれば、同じくらいの可能性とチャンスは転がっていると思うので、言い続けることじゃないですか。『オレはできる』と。そうしたら言った分、やるようになると思う」。自身を信じて階段を登り続けているMFは将来ある選手たちにエールを送っていた。

 高松商は昨年も総体予選は県準々決勝で敗退。そこから全日本ユース(U-18)フットサル選手権で3位に入るなど自信をつけて冬の選手権出場に繋げた。MF伊賀龍太郎主将(3年)は「まずは去年成し遂げられなかった選手権全国で1勝するというところを目標にしながら、夏にフットサルもあるんで取り組んでいきたいと思います。(全国で勝てなかった要因として)先輩たちも僕たちと同じで得点力がなかったので、きょうのトレーニングをきっかけに上げていければいい」とコメント。自分たちを信じて、可能性に挑戦し続けて、目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
★『NIKE ACADEMY特設ページ』はこちら
●【特設】高校総体2017

TOP