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課題だった球際の強度、泥臭さが武器に。0-2から山梨学院を逆転した帝京三が延長V! :山梨

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逆転優勝を果たした帝京三高

[6.18全国高校総体山梨県予選決勝 帝京三高 3-2(延長)山梨学院高 中銀スタ]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(7月開幕、宮城)山梨県予選決勝が18日に山梨中銀スタジアムで開催された。帝京三高山梨学院高が激突した一戦は延長戦の末、3-2で帝京三が逆転勝ち。2年ぶり10回目の全国総体出場を決めた。

 0-2からの大逆転。前半12分に山梨学院のMF増村有哉(3年)にミドルシュートを決められた帝京三は後半7分にもサイドを深く切れ込んだMF野村海(2年)のラストパスを16年U-17日本代表FW加藤拓己主将(3年)に押し込まれて2点ビハインドを追ってしまう。

 プリンスリーグ関東で現在5位につける山梨学院は総体予選で無失点の堅守。2点ビハインドを奪い返すのは困難なノルマのように映ったが、主将のMF阿川奎都(3年)が「ちょっとヤバイって思ったんですけどスタンド見たら応援止めていなかったので、自分たちが止めたらいけない。そこはやり続けました」と振り返り、MF菊地開世(3年)が「嫌な雰囲気はありましたね。でもスタンドを見ると、いつも応援してくれている仲間もいるし、出ているみんなで何とかしようと思った」と語ったように帝京三は諦めない。

 前半21分のアクシデントで投入されたMF小林颯耶(3年)に続いて、0-2になってからMF武井潤(2年)、MF鈴木健人(3年)と攻撃カードを立て続けに切った帝京三は、小林やFW堀川直人(3年)の仕掛けなどからクロスの回数を増やしていく。

 山梨学院は怪我明けの加藤ら前線の運動量が落ちてプレスバックがきかず、帝京三に簡単にクロスを上げられてしまう。それでもPAに入って来るボールをしっかりと跳ね返して得点を許さず。着実に時間を進めていた。

 帝京三は攻めるも、相手の守りをこじ開けられず、閉塞感が漂い始めていたが、背番号2の一撃が流れを変えた。後半23分、帝京三は敵陣中央でこぼれ球に反応した菊地がダイレクトで右足を振り抜く。インフロントでとらえたボールはGKから遠ざかるようにスライスしながら左ポスト内側を叩くと、そのままゴールラインを越えた。

 チームのムードメーカーが決めたスーパーミドルで1点差とした帝京三はさらに28分、鈴木がカットインしながら上げた左クロス後の混戦から、弾んだボールに反応したMF平田和也(2年)が左足シュート。クリーンヒットした一撃ではなかったものの、これがゴール右隅を破って同点となった。

 追いつかれた山梨学院は左MF天野菖梧(3年)の仕掛けから加藤がヘディングシュートを放ち、右SB天野祐介(3年)が右サイドを駆け抜けてクロスへ持ち込むシーンもあった。前線では加藤が必死に空中戦で競り勝っていたが、自陣に押し込まれる時間が増えてしまう。一方、運動量、球際の攻防で上回っていた帝京三は2-2で突入した延長前半3分、小林の突破からファーサイドの武井が決定的なヘディングシュート。これは山梨学院GK大蔦宏汰(3年)のビッグセーブに阻まれてしまったが、直後に勝ち越し点が生まれる。

 4分、帝京三は小林の左CKをニアサイドへ飛び込んだ武井が頭で合わせると、ボールはゆっくりとゴールラインを越えて3-2。山梨学院も反撃するが、帝京三は際のところで強さを発揮して簡単にチャンスをつくらせない。山梨学院は延長後半6分、右クロスからFW安田正太郎(2年)が決定的なヘディングシュートを放つなど最後まで攻め続け、アディショナルタイムにも右FKにCB山田恵大(3年)が飛び込んだが、同点ゴールを奪うことはできず。帝京三が逆転勝ちで全国大会出場を決めた。

 前半、4-1-4-1システムの1ボランチの横のスペースを活用され、主導権を握られた帝京三だが、早々に3-4-3システムへ変更。守備から改善して立て直したチームは勝負どころで、相良和弘監督が「球際、セカンドボール。サッカーはそこにあると思う」という部分で強さを発揮した。

 優勝した新人戦後、帝京三は「技術、戦術的なもののみになってしまっていた。相手に泥臭くやられたら何もできない」(相良監督)ことが反省点となっていた。「ガツガツ来られてそれに全員が引いてしまってそれが敗因だった」(阿川)という関東大会県予選準決勝敗退後にチームは競り合いの強さに定評のある流通経済大柏高や中央大などと練習試合を組んで強化。「基準を上げろと。それをどこに持っていくか」(相良監督)確認したチームはトレーニングから強度を上げて準備をし、それを大一番で示した。

 クロスに対し、相手と接触することを怖れずに勇気を持って飛び込んだり、セカンドボールの攻防でも怯まずに身体を強くぶつけてボールを奪い取った。特に相手エースの加藤に空中戦では劣っていたものの、競り合いでは自由を与えず。もちろん競り負けることも、時にファウルになることもあったが、勝つために身体を張り続けたことは間違いなく帝京三の勝因となった。

 先発した下級生が7人という若いチームは、試合に出ていない3年生たちに支えられて接戦を勝ち抜き、期待に応えた。全国大会へ向けて阿川は「まず一戦一戦大事に戦っていって後から結果がついて来ればいいと思っています」。まずは初戦から一つひとつ。そして12年、14年、15年と過去5年間で3度敗れている全国3回戦の壁を破って上位へ勝ち上がる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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