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なぜモウリーニョは古巣から教え子獲得を熱望するのか…復活のカギはマティッチ?

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モウリーニョ監督とマティッチ、再タッグなるか?

■マティッチを求める理由

 ユベントスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍したポール・ポグバにとって、16-17シーズンはほろ苦い記憶になったと言っても過言ではないだろう。

彼は“世界で最も高額な選手”という代名詞がついて回ったうえに、ユナイテッドでは本来のポジションでプレーする機会を与えられず、その移籍金に見合うだけの活躍ができたとは言い難い。

 だが、ネマニャ・マティッチチェルシーからマンチェスター・Uへの移籍が有力となっており、もし移籍決定となればそれはポグバにとって朗報となるだろう。マティッチが中盤に加わることで、ポグバはより攻撃的なタスクを与えられることになるはずだ。

 16-17シーズンの多くの試合で、ポグバはダブルボランチの一角としてプレーした。いわゆる10番のポジションで起用されることもあったが、チーム事情もあって攻撃的なポジションを任されるることは多くなかった。

 マンチェスター・Uは昨シーズン終盤、4-3-3のフォーメーションを使う機会が増えていたが、これはマルアン・フェライニをスタメンとして起用するために常習化されたものだった。ポグバにとってもチームにとっても決して良いサインと呼べるものではなかっただろう。

 近々、マティッチが加入することでジョゼ・モウリーニョ監督は、ようやく、ポグバを中盤の3人のうちの1人として起用することができる。

 ポグバがマイケル・キャリックアンデル・エレーラとともに中盤で並んでプレーしたことは滅多になかったが、その場合はキャリックの運動量が乏しいが故に、エレーラを起点として中盤を省略した堅守速攻に終始することになった。チームは退屈な攻撃に終始する上、ポグバが攻撃をコントロールする場面が減少し、“世界最高額の男”の持ち味が生かされる状況に持ち込めなかったのである。

 ユベントスにいた頃のポグバは、何度もスペースに向かって走り、チャレンジをすることができた。これは中盤の底に稀代のプレーメーカー、アンドレア・ピルロがいたからこそだ。ピルロが中盤の底で的確に試合をコントロールしてくれるという信頼があり、同時にアルトゥーロ・ビダルが、中盤3枚の一番右で勇猛果敢にアプローチをかけていたために、ポグバは攻撃面の役割に集中できた。

だが、マンチェスター・Uでは、それの再現どころか同じような中盤の組み合わせを実現することさえ難しかった。

■モウリーニョ体制で重要なピースに?

 マティッチがマンチェスターに来ればすべてが変わるだろう。マティッチが中盤の底で賢く立ち回れば、エレーラは右サイドでもっと攻撃的な役割を果たすことができる。そして、ポグバは左サイドでもっと自由にプレーできるようになるはずだ。

 これまでモウリーニョ監督にとって、中盤で守備的なタスクをこなすファーストチョイスにキャリックを起用せざるを得なかった。チームの中で中盤の底でバランス感覚を保ちながら攻守の切り替え役を務め、いざという時に最終ラインのカバーもこなすような、堅実な選手が他にいなかったのである。

 もしマティッチが加われば、歳を重ね、徐々に運動量の落ちてきたキャリックよりも精力的に動き回ることが可能だ。そのうえ、有効なパスを前線に供給することもできるし、戦術的な規律をもたらすことだってできる。

 マティッチがチェルシーの一員としてベストパフォーマンスを発揮し、チェルシーがプレミアリーグ制覇を達成した14-15シーズン、そのチェルシーを率いていたのはモウリーニョだった。あの時と同様のことがマンチェスターで実現できれば、17-18シーズンのマンチェスター・Uはより大きな注目を浴びることになるだろう。

 セルビア代表のマティッチは自分の役割を十分に自覚しており、中盤のアンカーとしての役割を黙々とこなす。チームプレーに徹することができるプレーメーカーで、モウリーニョ率いるチームに加われば、ファーストチョイスとなることは間違いない。

 16-17シーズン、アントニオ・コンテ監督率いるチェルシーのプレミアリーグ優勝のカギとなったのが、エンゴロ・カンテのチェルシー加入であったことは大勢が認めるところだろう。だが、マティッチがピッチ上で果たした役割もまた、大きなものであった。

 マティッチは5月のミドルスブラ戦でゴールを決めた後「僕はゴールマシーンじゃない。ただ、中盤でベストを尽くそうとしているだけだ」と語っている。その後に語った言葉からも彼の堅実な働きぶりを読み取ることだって可能だ。

「僕のポジションは確かに守備的MFだけど、ゴールを決めるチャンスだってもちろんあるし、得点してチームに貢献できるという一面も見せられたと思っている」

 マティッチは、マンチェスター・Uに加入することで、再び自分にとってベストなポジションを任されるだろう。それはポグバにとっても同じことだ。16-17シーズン、マンチェスター・Uの得点数がリーグ戦38試合で54ゴールと振るわなかった(得点数1位はトッテナムの86ゴール)のは、チャンスを得点につなげるべきストライカーの能力不足であることは周知の事実だ。

 だが、その責任は前線の人材によるものだけではない。中盤でも相手を圧倒し、好機を生み出す機会が上位勢の中で少なかったからリーグ6位に甘んじることになったのだ。

 17-18シーズン、チャンピオンズリーグに臨むマンチェスター・Uにおいて、そういった機能不全はあってはならないことになる。マティッチは、エレーラとポグバをより自由にプレーさせ、中盤がより完璧に機能する条件を作り出すためのピースとなるだろう。それはチームにとって中盤のクオリティーが確実に上がる、良いこと以外の何ものでもない。マティッチさえマンチェスターへとやってくれば、我々は真のポール・ポグバを見ることになる。

Kris Voakes/クリス・ヴォークス

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