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D・アウベスに一体何が起こったのか?パリSG電撃加入までの裏側

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D・アウベスとの交渉が決裂したジョゼップ・グアルディオラ監督

 7月7日、ジョゼップ・グアルディオラはDFダニエウ・アウベスバルセロナで昼食をともにしマンチェスター・シティの未来について話しをしていた。もちろんこの時は、シティの選手やコーチすべての人間がアウベスは翌週アメリカで行われるプレシーズンマッチに参加するため一緒に渡米すると思っていた。しかし予期せぬ事態が起こったのは11日の夕方前だ。この時なんとアウベスは、パリSGのメディカルチェックを受けていたのだ。一体何が起こったのか? 次には何が起こるのか? シティ陣営はまさに今、その事態に頭を悩ましているところである。

 アウベスは自身の行く先について自由に決められる状況の中、かつてのボスであるグアルディオラの下で再びプレーすることを望み、それをユベントスも理解して、彼との契約を解消するという極めて寛容な対応をとっていた。シティと34歳のアウベスはすでに契約に合意しており、そしてユベントスも彼の放出を決め、彼がシティの今夏3人目の獲得選手となる準備は完全に整っていた。

 あえて言うなれば、アウベスとの交渉は他の選手たちに比べ少々手間取っていた。彼はブラジルでオフを過ごしており、ユベントスが彼の退団をまとめるのに少し時間を要していたのだ。しかしシティのほとんどの人間は誰も契約書にサインしてもらうことを急いでいなかった。中には6月末には練習場に姿を現してくれることを期待していた者もいたようだが、FWリオネル・メッシの結婚式などもあってそれは現実的ではなかった。

 では、先日7日にグアルディオラ監督はわざわざバルセロナでアウベスと面会し、何を話していたのか。2人はアーセナルのFWアレクシス・サンチェスとの交渉の進捗など、この夏のシティの補強戦略について議論を交わしていたようだ。アウベスがパリSGとサインしようとしていることについてそれとなく話をしたかどうかは定かではないが、少なくともその数日後に報道が出るまではシティに関係する誰もが、まさかそんな話題が出てくるとは夢にも思っていなかったことだろう。

 ただおそらくではあるが、この日アウベスは翌8日の土曜日に、イビサ島で結婚式を挙げる事については話をしており、そのため自身がマンチェスターへと向かうことができるのはその翌週になることは話しているはずだ。そんなことを伝えられ、誰が彼自身の結婚式を禁止することができるだろうか? シティ陣営が早く契約を取り交わさなかったということを責めるのは難しい。

 だが、結果的に両者の契約は無かったことになった。アウベスは結婚式の数日後にパリSGへの移籍を最終決定しているが、その結論を自身の結婚式の日に下したのであれば、シティには同情の声さえあげたくなる。

 おそらくパリSGは、アウベスに対しシティが提示していた額よりも多い500万ユーロ(約6億5000万円)以上の年俸を提示したのであろう。そして彼自身も妻とのパリでの生活を好み、多くの試合に出られる可能性も魅力的であったはずだ。

 しかし2週間以上も前にシティとの契約に合意し、ユベントスとの契約も解消し、オフを南米と南欧で楽しく過ごしていたアウベスのこの決断は間違いなく彼の評判を下げるものである。グアルディオラが激怒することも無理はない。だが、シティにいつまでもそんなことを考え続ける時間はない。それよりも次の補強戦略を練ることが先決である。

 かくして、シティはDFとして史上最高額でトッテナムのDFカイル・ウォーカーを迎え入れることとなった。市場で人気もあり、優秀な選手であるが、5000万ポンド(約73億円)もの価値があるかはわからない。そしてセンターバック獲得にも影響が出ることは確かだ。シティは既存選手を売却することで1億ポンドを得て選手獲得に充てられることを期待していたが、それも難しくなってきた。となるともうスポンサーに丁重に追加資金の工面を頼むことくらいしか方法はない。

 アウベスがシティに来なかったことは大打撃であり、それはアウベス自身も自分のしでかしたことの大きさを認識しているだろう。ただ、責められるべきはアウベスだけでいいのだろうか。グアルディオラもアウベスの事を十分理解していなかったこともまた事実だ。

 選手の移籍はサインを書き終える最後の最後まで気を抜いてはならないのだ。今回の件でシティはそれを肝に銘じることとなっただろう。ただ素晴らしいアウベスの身のこなしを見せられたシティには少々同情する。

文=サム・リー/Sam Lee


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