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ルカクの巨額の移籍金に見る、プレミアリーグの派手な移籍劇の背後にあるものとは?

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昨夏加入したポール・ポグバ(右)と今夏加入のロメル・ルカク

 先日、ロメル・ルカクエバートンからマンチェスター・ユナイテッドへ移籍すると発表された。移籍金は超破格の7500万ポンド(約110億円)と言われている。

 ルカクはチェルシーから2800万ポンド(約41億円)で移籍してきて以降、エバートンで165試合で86ゴールを決める活躍を見せた。ルカクは最高のストライカーであることは確かだ。しかし、まず大前提として言えるのはエバートンの目的が、ルカクをチームに留めて高みを目指すことではないということ。このベルギー代表のストライカーを使って大きな収益を得ることが優先順位の上にあった。今回の移籍劇は特にエバートンがユナイテッドを手玉にとったものとなっている。エバートンはルカクの放出によって得られる資金を元に、すでにここまででサンドロ・ラミレス、マイケル・キーン、そしてポテンシャル溢れるジョーダン・ピックフォードを獲得しているのだ。

 あまり言いたくはないが、エバートンは弱い者いじめをするかのように他チームの欠点をつき、巧みに交渉をまとめあげるのが上手なチームである。自分たちが押し込まれているときに効果的にボールをキープできる能力を持ったルカクを放出することは、エバートンにとっては何の痛手でもなくむしろ“計算通り”と言ったところであろう。チェルシーがルカクとの再契約を強く望んでいるというのが明らかになった後に、ユナイテッドは選手とエバートン双方に対しての提示額を増やしたといううわさも囁かれている。

 今回の移籍劇は2017年の移籍市場の縮図と言えよう。所属クラブに売りたい意思がないことを見せれば見せるほど移籍金はどんどん吊り上がっていくのだ。ルカクには及ばないが、ネイサン・アケもまた良い例だ。ボーンマスは今夏、プレミアリーグ出場経験のなかったアケをチェルシーから2000万ポンド(約29億円)で獲得している。彼は2016-17シーズンの前半をレンタルでボーンマスで過ごしていたが、その後チェルシーに呼び戻された。しかしこの前半のプレーが評価され、再びボーンマスに戻ってきた形だ。

 ボーンマスの補強プランにおいて、アケの獲得は最重要事項であった。昨シーズン彼がボーンマスで出場したリーグ戦は10試合であったが、そのうちの3試合でゴールを決めている。それゆえにクラブ史上最高の移籍金を費やしてまでアケを獲得したかったのである。そしてこの移籍はチェルシーにとっても好都合であった。なぜならアケはチェルシーの戦術プランには入っておらず、必要のない選手を都合よく放出することができたからだ。

 この事例は他のリーグではなかなか起きることではない。例えばリーガでは、レアル・マドリーバルセロナのように他のクラブは到底出すことのできない記録的な金額で選手獲得を行えるチームはあるにせよ、通常リーグの中位クラブは一人の選手の獲得に2000万ポンド(約29億円)も費やすことは不可能なのである。

 それについて専門家はこう分析している。ミルズ&リーブのスポーツチームに所属する弁護士、フィル・ハッチンソン氏はプレミアリーグに巨額の移籍金が生まれる理由についてこう語った。

「プレミアリーグのクラブが選手獲得に際して底なしの財源を手に入れることができるのは、数十億を越えるテレビ放映権料があるからだ。財源が増えれば選手の値段も高くなるのは当たり前のことで、1億ポンド(約140億円)の移籍が誕生するのもそう遠くはないだろう」

 となると、次なるターゲットはキリアン・ムバッペだ。彼は1990年代のロナウド以来の最高の10代タレントであり、もちろんモナコはどこにも売り渡すつもりはない。18歳のムバッペはトップリーグでまだ1シーズン戦っただけにすぎないが、アタッカーの獲得を熱望しているレアル・マドリーはムバッペの獲得に1億1400万ポンド(約168億円)を提示したと言われていているのだ。しかしモナコはこのオファーも拒否している。

 イングランドのクラブは総じて選手獲得への出費については寛容とも言える。例えばアーセナルは、この夏の選手補強に総額1億2400万ポンド(約180億円)もの予算を用意し、さらにアレクシス・サンチェスマンチェスター・シティへ移籍させる予定で、より多くの資金が手に入ることを見込んでいる。

 移籍金は大抵の場合、売り手側のクラブによって設定される。もし選手がトップクラブから欲しがられるほどの選手であれば一つのクラブと金額的に合意に達しなかったとしても、次から次へと彼を欲しがるクラブが現れることだろう。

 しかしそこにはどうしても避けられない問題もある。クラブはワールドクラスの選手に対して巨額の費用を支払うことができるかもしれないが、ファンにとっては地元でスターへと成り上がったような選手が移籍してしまうことは寂しいものだ。そういった思い入れはお金では解決できない。

 しかしながら、ハッチンソン氏が説明しているように、今日繰り返される移籍に関しての寛容さもここまでかもしれない。

「2011年にファイナンシャル・フェアプレー制度が導入され、クラブの身の丈に合わない投資をして持続不可能な経営をするクラブが出ないように配慮されるようになった。違反をすれば重大な制裁があるのだ。UEFAに目を付けられないためにも、チームが多額の資金を投入できることには限りがある」

 今夏のマーケットも終盤に差し掛かろうとしているが、選手獲得と資金投資のバランスについては今後も課題となっていくに違いない。ファイナンシャル・フェアプレー制度がチームの赤字経営のストッパーとなっていることはプラスなものの、それによって選手の移籍が阻まれてサッカーの活性化が停滞する可能性もある。チーム、選手、ファン…誰もが納得のいく移籍というものは難しい。現状では、必ずどこかで妥協が必要となってくるのだ。

文=ハリー・シャーロック/Harry Sherlock

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