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決勝までの6試合を見据えた分析と準備、戦い方。日大藤沢が我慢比べ制して19年ぶり8強

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日大藤沢高が19年ぶりとなる8強入り

[7.31 総体3回戦 日大藤沢高 2-0 帝京三高 みやぎ生協めぐみ野サッカー場Bグラウンド]

 平成29年度全国高校総体 「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)は29日、3回戦が行われ、8強が決まった。日大藤沢高(神奈川2)と帝京三高(山梨)との一戦は、終盤の2得点によって2-0で日大藤沢が勝利。19年ぶりとなる8強入りを果たした日大藤沢は2日の準々決勝で旭川実高(北海道2)と戦う。

 決勝までの計6試合を見据えた宮城での戦い。「(決勝まで行く)可能性がある。(激戦区の)神奈川から出るというのはそういうこと」と佐藤輝勝監督は説明していたが、神奈川代表として日本一を目指す日大藤沢がまた一つ、山を乗り越えた。

 前日には今大会の優勝候補の一角と目されていた昌平高(埼玉1)に逆転勝ち。この日は「昌平戦はフルスロットルで相手のボール、人を止めに行ったので、12ラウンド殴り合ったようなもの」(佐藤監督)という熱戦の後の3連戦の3試合目、加えて気温30度の暑さの中で身体が思うように動かなくなることは想定していた。

 その中で日大藤沢は普段のようなボールを繋ぎ、ダイナミックな攻撃を仕掛けるのではなく、シンプルに相手のビハインドへボールを入れることを徹底していた。同時に、FW柏木純(3年)を筆頭とした前線の選手たちが献身的なディフェンス。4度目の挑戦で初のベスト8進出を狙う帝京三は左DF阿川奎都主将(3年)が幾度かサイドチェンジを試みるなど横や、縦へのボールで揺さぶりをかけてきていたが、日大藤沢はCB安松元気(3年)を中心にそれを跳ね返し、セカンドボールも拾って相手に流れを渡さない。

 両チームともに前半のシュート数は30分を過ぎてからの1本のみ。連戦の影響もあってか、互いに厚みのある攻撃よりもリスクをかけない部分に重きを置いたような35分間となり、0-0で前半を折り返した。

 先に動いたのは日大藤沢だった。後半8分にFWギブソン・マーロン(3年)、さらに11分には前日のヒーロー、FW三田野慧(3年)を相次いで投入。「後半の頭から流れが悪くて」(佐藤監督)という流れを変え、1点を奪いに行くために勝負に出る。我慢比べとなった戦いの中で先発組がしっかりと0-0で繋ぎ、そのバトンを受けた2人のスーパーサブが迫力ある攻守でチームを活性化した。

 帝京三も相手の攻撃を凌ぎつつ、前線のFW亀屋光二(2年)やMF堀川直人(3年)がゴールを目指したが、なかなかシュート数を増やすことができない。そして20分頃に3分間のクーリングブレイク。ここで日大藤沢は選手たちを座らせず、立ったまま3分間を過ごした。専門家の分析を参考に、座ってしまうとパフォーマンスが落ちるという判断からだったが、結果的にこれが終盤2ゴールを奪う一因となった。

 27分、日大藤沢は左スローインからクロスをPAの三田野へボールを入れる。ゴールを背にコントロールした三田野が強引にシュートへ持ち込もうとしてこぼれたところを、サポートしたMF小屋原尚希(3年)が右足ボレーで叩く。これがDF間を抜けてゴール右隅へ突き刺さった。

「お互い3日連続でやっていて、後半の最後のところ、絶対そういうところで上回ろうと話していました」(安松)という日大藤沢は、相手のロングボールを安松やCB竹繁颯音(3年)が我慢強く跳ね返していく。そして6分が表示されたアディショナルタイム突入後の38分、カウンターから三田野が持ち上がると、PA外で身体を張ってギブソンを止めた帝京三GK丸山虹樹(1年)が一発退場。10人になった帝京三も諦めずに同点を目指していたが、日大藤沢は42分に左SB中村翔輝(3年)のアーリークロスからギブソンが勝負を決める2点目を押し込んだ。

 日大藤沢は15年度大会の3回戦で東福岡高に1-2で競り負けている。その反省を踏まえ、今大会は決勝まで行くための分析、準備を入念に行ってきた。今大会初となったクーリングブレイクの使い方、また「5日以上同じ宿舎に連泊するとマンネリ化して、パフォーマンスが落ちる」(佐藤監督)という分析の下、1回戦を翌日に控えた開会式当日(28日)に宮城入り。「(先輩たちが)ちゃんと掘ってくれた勝ち方の水を彼らが飲めたのはチームに活きている」と佐藤監督が説明した連戦での戦い方を含めて好循環の中でチームは8強入りを果たしている。

 試合後には熱い応援を繰り広げた控え部員40人らとともに普段は優勝時に行うという勝利の儀式「SHALALA」で歌い、踊り、喜びを分かち合った。「応援(として宮城へ行く選手)も競争しよう」と紅白戦などでプレーをアピールし、選ばれた40名だけが神奈川から応援に来ていたという日大藤沢の控え部員たち。彼らはこの試合後に宮城を離れるため、「インター優勝するまでは『SHALALA』はやらない予定だったんですけど、きょうが最後でしたし、応援があったからこそ、ここまで来れたというのがある」(小屋原)と今後への決意も込めて歌声を上げた。

 目標とする優勝へ向けてはまだまだ折り返し地点だ。ギブソンは「監督も必死だし、コーチも必死だし、あとは俺らがどれだけやれるかとよく言われるんで。だから、自分たちが結果出さなきゃと思いますね」。ここから先が本当の勝負。もちろん、気の緩みはない。勢いのある日大藤沢が1日の休養日を挟んで迎える準々決勝では、自分たちのサッカーを貫いて夏では初となる4強入りを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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