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松葉杖姿で応援、FC東京U-18DF坂口祥尉の心意気「自分にできることはそれしかなかった」

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松葉杖姿で仲間とともに歓喜するDF坂口

[8.2 第41回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会・決勝 浦和ユース 0-2 FC東京U-18 味フィ西]

 気丈に振る舞い続けてきたムードメーカーの想いは報われた。スタンドから声援を送ったFC東京U-18のDF坂口祥尉は「本当に嬉しいです。チームメイトがグラウンドで戦っている姿はとても頼もしくて、負ける気もしていなかった」と仲間を誇る。

 FC東京U-18の佐藤一樹監督が「去年のプレミアリーグから一番試合に出ていて、怪我も本当に少ない選手。身体のケアやトレーニングに関するあらゆることでしっかりしている」と評価する坂口は、左SBとしてチームを支え、準決勝の川崎F U-18戦で先発。しかし前半15分の接触プレーで右膝を負傷。すぐさまプレー続行不可となり、担架でピッチ外へ運ばれるとそのまま退いた。

「経験をしたことのない痛みと“ボキっ”という音がしたので、ちょっとやばいかなと思いました。実際に結構やばめな状態だと思います」。これにより、決勝戦の浦和戦は欠場が決まった。

 準決勝から中1日で迎える決勝。坂口は自身の怪我に落ち込むよりも、仲間たちの気持ちを思いやった。「自分にできることはそれしかなかった。明日の決勝でみんなが少しでも緊張せずにできたらいいなと思って」。決戦前夜には約15人ほどのメンバーへ、それぞれ文面を変え、激励のメッセージを送った。

 そんな想いは仲間へ届く。チームは2-0で浦和を下し、2年連続の日本一。坂口を欠いた最終ラインも奮闘をみせ、2試合連続の完封勝利を遂げた。決勝で先制点を決めたFW久保建英は「坂口選手はチームのムードメーカー。対人はチーム1だと自分は思っていますし、チームのことを第一に考えられる選手。もし自分だったらあんなに明るく振舞えない。自分に『頑張れよ』などの内容の『LINE』をくれましたし、自分を励ましてくれていることが多いので、今回はいい形で恩返しができてよかった」と言う。

 松葉杖姿で応援していたが、試合後の表彰式ではピッチへ下り、仲間たちと歓喜した。坂口の涙に影響されてか、涙をみせていた指揮官は「あいつが号泣していたから、完全にもらい泣き。やられましたね」と恥ずかしそうに言いつつ、「彼のことなので、さらに大きくなって戻ってきてくれると思う」と復帰に期待を寄せた。

 今後はあす3日にも右膝の精密検査を受ける予定。おそらく軽症ではないことが予想されるが、本人は力強く「あまりこの怪我に対して、マイナスには感じていないので。ポジティブに捉えられるようにして、今よりも強くたくましくなって、ピッチへ戻れたらいいなと思います」と言い切った。皆が熱く頼もしい坂口の帰りを待っている。

(取材・文 片岡涼)
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