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タフに、狡猾に戦った日大藤沢が市船突破して初の決勝進出!

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日大藤沢高が初の決勝進出を果たした

[8.3 総体準決勝 日大藤沢高 1-1(PK5-3)市立船橋高 みやぎ生協めぐみ野サッカー場Aグラウンド]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」サッカー競技(宮城)準決勝が3日に行われ、前回大会優勝の市立船橋高(千葉2)と日大藤沢高(神奈川2)との一戦は、日大藤沢がPK戦までもつれ込む激闘を制して初の決勝進出を決めた。日大藤沢は4日の決勝で流通経済大柏高(千葉1)と戦う。

 試合を終え、市立船橋・朝岡隆蔵監督は「メリハリのないぬるいゲームをしてしまった」と肩を落とした。序盤から日大藤沢が「思っていたより(ボールを奪いに)来なかった」(同監督)ことによって圧倒的にボールは支配した。だが、「一人ひとりがボールを持てるからテンポが悪くて、スタンドプレーになってしまった。プレッシャーがない分だけボール回しで終わってしまった」(同監督)。相手を押し込んでサイドからのボールは入っているものの、何かがおかしくなっていた。

 一方、日大藤沢にしてみると「前半はほぼ狙いどおり」(DF安松元気、3年)の試合運びだった。佐藤輝勝監督は相手との戦力差を「1歩も2歩も上。横綱相撲でがっぷり四つといきたいけれど、理想と現実の、理想だけを観てはいけない。自分は現実を観てやってきた」と、真っ向勝負ではない形を選んだ。「朝岡監督とのゲームに勝つには読み合いだと思っていて、きっと朝岡監督はウチが(ボールに)行くことをプランに入れているだろうな、と。だから『行くけど、行かない』。『やるけど、やらない』という形にした」(佐藤監督)。

 外は捨てて中を固めつつ、ある程度割り切って相手にボールは持たせる。その上で「左SBの杉山弾斗くんと左CBの橋本柊哉くんは本当に素晴らしい選手なので、右に右にボールを回させて、右から攻め込ませるようにした」(佐藤監督)。市船の強烈な左翼を消して、右から攻めさせる。「(市立船橋の)右からのボールにだいぶ慣れることができた。あれが右からも左からも真ん中からもだったら苦しかった」。前半最大の決定機は、27分の杉山の左クロスにFW松尾勇佑(2年)が合わせたシーンだったが、逆に左からの攻撃が形になるシーンはこのくらい。日大藤沢が仕掛けた「のらりくらりとしたゲーム」となった。

 それでも市立船橋は凡庸なチームではない。今大会4得点のFW福元友哉(3年)を出場停止で欠くためにクロスからの攻撃での迫力は欠いていたが、それでも後半23分、CKのこぼれ球を拾った流れから、最後は交代出場のU-17日本代表MF郡司篤也(2年)が決めてゲームを動かしてみせた。これで守備から入っていた日大藤沢のプランは崩れたかにも見えた。

 だが、「ウチは追い付いて追い越してきているチーム。1失点は(大丈夫)と言い続けてきた」という佐藤監督の言葉の魔法も効いていたのだろう。「(失点で)ガクンとくるところを粘り強くよく戦ってくれた」と指揮官が目を細めたように、ここからタフに試合終了まで戦い続けた。「一人ひとりが『仲間のために』という思いで戦えている」(安松)という姿勢はアディショナルタイムに結実する。

 GKからのFKが跳ね返されたこぼれ球を、交代で入ったばかりだったMF菊地大智(3年)が迷わず狙う。ミドルレンジから絶妙なコースに飛んでいったボールがゴールネットを揺らすと同時に試合終了のホイッスルが鳴り響く。土壇場に追い付いた日大藤沢にPK戦での勢いもあったか。4番手のキッカーが枠を外した市立船橋に対し、日大藤沢は全員が成功。PK方式でのスコアを5-3と勝ち越した日大藤沢が、初めての決勝進出を決めた。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2017

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