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勝敗左右したPK。前橋育英・山田監督「『これは譲れない』っていう3年生がいて欲しかった」

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試合終了の笛が鳴ると、前橋育英高の選手たちはピッチに手をついて悔しがる選手も。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.3 総体準決勝 流通経済大柏高 1-0 前橋育英高 ひとめぼれスタジアム宮城]

 前橋育英高の山田耕介監督は0-1で敗退後、真っ先に後半21分のPKのシーンについて疑問視した。相手DFの背後へ抜け出してPKを獲得した2年生FW高橋尚紀が自らPKスポットに立ち、右足シュート。だが、これを流通経済大柏高のGK薄井覇斗(3年)に止められてしまう。

 選手たちの中にはPKを獲得した選手が蹴るというセオリーがあったようだ。だが、場面はファイナル進出を懸けた準決勝、1点ビハインドで試合終了まであと15分を切っている状況だった。それだけに指揮官は「そこが決まる、決まらないで勝負が決まってしまう。『これは譲れない』、っていう3年生がいて欲しかったと思います」。今大会好調だった高橋に任せる判断が100パーセント間違っているという訳ではない。だが、そこで責任を持ってPKを蹴る3年生がいなかったことを残念がった。

 負傷のエース、日本高校選抜FW飯島陸(3年)投入前だったとは言え、主将のMF田部井涼(3年)、MF田部井悠(3年)の兄弟はいずれもプレースキッカーで、新潟内定の左SB渡邊泰基(3年)、U-18日本代表CB松田陸(3年)ら3年生には経験豊富な実力者たちがいる。

 それだけに、チームリーダーの田部井涼は「自分が蹴っても良かった。自分じゃなくても3年生が蹴った方が良かったというのは冷静に考えてみると、そう思います。そこまで考えられていなかったのはチームを引っ張る自分の責任なので、本当に悔しいですけれども選手権までに僅差の部分を詰めていきたいですね」と冷静に状況を考え、判断できなかったことを反省していた。

 チーム力は間違いなく、今大会トップクラスだった。エース飯島が大会前の負傷で出場時間を制限され、3回戦の青森山田高戦で再受傷。その中でゴールを連発した長身FW榎本樹(2年)や高橋が台頭し、勝利に貢献してきた。2回戦から準々決勝まではいずれも先制されながら、追いついて白星を勝ち取る底力も発揮。前橋育英特有のパスワークだけでなく、榎本やFW宮崎鴻(3年)の高さを活かした攻撃がゴールをもたらすなど収穫もあったが、日本一を狙うチームには課題も残る大会となった。

 田部井涼は「攻撃の形はこの大会は通用しなかった部分が多いと思います。選手の特長を見ながらもうちょっと、パスワークのコンビネーションを増やさないと崩すことができない。セットプレーで点が取れるということは大きなことですけれども、それ以外のパスワークとコンビネーションがちょっと乏しかったかなと思いますね。選手権ではもうちょっとパスワークと切り替え、球際を意識して、今回は先制点取られる試合が多かったので、(夏休みのうちに)先手を取るサッカーをもう一度やりたい」と課題の改善を誓っていた。

 山田監督も「良い課題いっぱい出来た」と語り、特に対戦相手に応じたサッカーができるようになることを求めていた。昨年度の選手権準優勝メンバーを多数残し、今回のインターハイでは選手権決勝で敗れた青森山田高を破って4強。だが、目標はここではない。日本一を勝ち取るために、この夏から秋に掛けて課題にしっかりと目を向けながら強化を図る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2017

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