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[UAチャレンジカップ]“個性派軍団”延岡学園が決勝へ、「魔法が解けていなかった」と指揮官

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PK戦終了直後、2本を止めたGK阿萬薫秋(2年)ではなく、真っ先にカメラマンに向かってパフォーマンスを繰り広げる選手たち

[8.18 アンダーアーマーチャレンジカップ 延岡学園1-1(PK4-2)明秀日立]

 高校12チームが参加する「アンダーアーマーチャレンジカップ2017 SUMMER」が18日、大会2日目を迎え、準決勝を行った。グループリーグで「リーグ2」首位の延岡学園高(宮崎)と「リーグ3」首位の明秀日立高(茨城)が対戦。前後半60分を1-1で終えたが、延岡学園がPK戦を4-2で制し、グループリーグで勝利(2-0)した浦和東高の待つ決勝戦に駒を進めた。

「まだ魔法が解けていなかった」。PK戦の勝利が決まった直後、真っ先にカメラマンに向かって歓喜のパフォーマンスを繰り広げる選手たちを横目に眺めつつ、就任4年目の大羽洋嘉監督は今大会での快進撃をそう表現した。

「僕たちは宮崎県大会でも1回戦、2回戦ボーイなんです。それなのに全国を舞台に戦えるチームと対戦させてもらって、まさか勝てるとは……」。強豪の浦和東高を破ってグループリーグを首位で突破し、準決勝では2015年度に2度の全国出場を果たした明秀日立を下すという“ジャイアントキリング”に、驚きばかりが口をついた。

 実際に、試合は明秀日立の高い身体能力を生かしたサッカーに圧倒される展開だった。相手のロングボール攻勢に晒されるなか、前半20分、左サイドでボールを収めたMF鈴木理玖(3年)のクロスを許すと、ゴール前で足を伸ばしたDF高橋槻(2年)のクリアがオウンゴールに。守備の中心を担う2年生センターバックの不運な失点で、前半をビハインドで終えた。

 それでもハーフタイム、泰然として構えた大羽監督は「まずは落ち着いて取り返そう」と選手を送り出す。後半は明秀日立のツートップFW橋本光希(3年)、FW高村哉太(3年)を中心とした攻撃を耐え抜いて、しぶとく得点の機会をうかがった。

 そんな後半24分、高橋が「(オウンゴールに)焦りはあったけど、誰かが必ず取り返してくれるはず」と信じたとおりの瞬間が訪れる。中盤でカウンター気味にボールを受けたFW矢野勇斗(3年)がPA右側にドリブルで侵入すると、相手ディフェンスのギャップを突いてゴール前に横パス。ファーサイドに走り込んだMF富山巧望(2年)が落ち着いてゴールネットを揺らした。

 富山はこれまでチームが挙げた5点のうち4点(2ゴール2アシスト)に絡む大活躍。イニエスタに憧れているというテクニシャンは「この試合でも『自分が決めないといけない』と思っていたのでうれしい」とはにかんだ。その後も明秀日立の激しい攻撃を耐え抜き、規定の60分間は1-1のままで終了。決勝進出チームはPK戦で決められることとなった。

 そこでの主役は、延岡学園の守護神GK阿萬薫秋(2年)だった。コイントスで先攻となった明秀日立のPKを1本目、2本目と連続して横っ飛びセーブ。味方のキッカーを精神的優位に立たせると、延岡学園のキックは次々に成功した。最後のキッカーは野洲高から今春に転校してきたFW若子内祐吾(2年)。フェイントがかった右足シュートでGKの逆を突く右隅に決め、延岡学園メンバーは喜びの渦に包まれた。

 株式会社ドームとパートナーシップ協定を結んでいる延岡学園高は3年前、サッカー部を強化部活動に指定。その後、大羽監督自身がスカウトしてきた“強化1期生”の3年生、強力な県外出身者ら主力の多くを占める2年生が、めきめきと力をつけてきた。チームスタイルは「テクニックにこだわる」という志向で、今大会でも細かいスペースにオフェンス陣を集める“密集攻撃”が猛威を振るっている。

 一方で、守備には大きな課題も。今夏の総体県予選では日章学園高に0-9の大敗しており、大羽監督は「いつもは10失点することも珍しくなく、失点慣れしているチーム」と自虐気味に話す。しかし、「学校にも勝てと言われたので、結果にこだわることも大事にしてきた」という今大会では、失点も最小限に抑えた見事な快進撃を見せている。

 “結果”の要因には、宮崎県からの道中で実施した静岡、茨城合宿の存在も挙がった。大学生との対戦では20点以上の点差が付くこともあったそうだが、「6日間も一緒にいたことで一体感ができた」という効用が見られた。また、「各家庭から7万円の遠征費を出してもらったこともあり、選手たちはそういったことも考えながら、一つ一つの試合に責任感が出てきている」と精神面での成長にもつながったようだ。

 不運なオウンゴールに動揺せず、その後も最終ラインで奮闘し続けた高橋は「合宿で流経大、静岡産業大と対戦していたおかげで、相手の強いフィジカルに対応できた」とプレー面でも手応え。主将のDF芝崎圭祐(3年)は「この結果には正直びっくり」と照れ笑いを浮かべつつも、「これまではみんなバラバラにサッカーをしていたところがあったけど、ようやく一つになってきた」と遠征で培った関係性を喜んだ。

 19日の決戦を前に、大羽監督は「魔法が解けたらきっとボコボコにされます。でも『何でこのチームが決勝に来たんだ』と言われない試合にしたい」、主将の芝崎は「相手もグループリーグのリベンジをする気持ちで来ると思うので、自分たちのサッカーをして優勝したい」と口にした。初優勝を狙う“個性派軍団”は、決勝にも「自然体」(大羽監督)で挑む構えだ。

(取材・文 竹内達也)

●アンダーアーマーチャレンジカップ2017 SUMMER

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