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今大会が公式戦デビュー、守備で光った栃木育ちの法大MF森俊貴「攻撃は二の次」

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チームのためにできることを、献身的に戦った法政大MF森

[9.10 第41回総理大臣杯全日本大学トーナメント決勝 明治大0-1法政大 長居]

 左SHとして先発したMFだったが、その仕事は攻撃よりも守備。法政大のMF森俊貴(2年=栃木ユース)が献身的なプレーで影ながらチームを支えた。準決勝・筑波大戦では、DF会津雄生(3年=柏U-18)に懸命にくらいつき、決勝・明治大戦ではユニバ代表DF岩武克弥(3年=大分U-18)の突破を阻んだ。

 今大会を迎えるまで、公式戦での出場がなかった2年生の森だが、総理大臣杯2回戦・九州産業大戦でベンチ入りを果たし、後半26分から途中出場で大学サッカー“デビュー”。「初めて公式戦のユニフォームを着て試合に出られましたが、みんながやさしく伸び伸びとできました」。一歩目を踏み出したMFは、続く準々決勝・阪南大戦(3-3・PK4-3)こそ出番はなかったものの、準決勝で初先発。このチャンスをつかみ、決勝でも先発の座を勝ち取った。

 法政大の長山一也監督は決勝の大舞台で森を起用した理由について、「準決勝・筑波大戦では会津くんのところがキーになっているところがあったが、守備のところから入ってくれていた。今日も岩武くんのところでしっかりと守備をしてほしいと起用しました」と説明。2年生MFはこれに応えた。

 無理に攻め込まず、冷静に前の相手に対処。機を見ては上がってくる岩武の対応に苦しみつつも、ほとんど決定的な仕事はさせず。「交代選手にいい選手がいっぱいいるので自分は最初から思い切り走って、相手のSBに仕事をさせないように頑張りました」。先制直後の後半23分に交代するまで、全力でプレーし、すべてをピッチへ置いてきた。

 法政大の右サイドは攻撃の核となっており、抜群の突破力があるSB武藤友樹(4年=八千代高)とドリブルが武器のMF紺野和也(2年=武南高)が個の力で相手を押し込むシーンが目立った。一方で森とSB川崎雅哉(4年=静岡学園高)の左サイドは、攻撃での見せ場こそ少なかったが、それぞれが献身的に走っては身体を張り、“組織”で戦う場面が目立った。

「右サイドは武藤くんと和也が良くて、バンバン攻撃で崩していた。こっちも(左サイド)も頑張りたいなという思いはありました。大きい仕事はできませんでしたが、無理はせずに安定感を一番に考えて、落ち着いてできたと思います」

 会津に続き、ユニバ代表の岩武と大学サッカーのトップレベルの相手との連戦を戦い抜いた森。「二人とも本当にレベルが高くて、ボールを獲ったなというシーンでも獲れずにかわされたり、やっぱり巧かったです。それでも自分は持ち味がスピードなので、相手がパスを出した後についていったり、守備を頑張って献身的に走ったり、少しはチームに貢献できたかなと思います」とささやかに胸を張る。

 攻撃的なポジションに位置しながらも、求められるのはまず守備。そこにもどかしさはなく、「自分の攻撃は二の次ですね」とさらりと言う。「まずチームのためにやることをやって、そこから自分の持ち味をどれだけ出せるかが、勝負どころだと思うので」。

 この日の試合後は、出場停止だったユース時代からの先輩・DF黒崎隼人(3年=栃木ユース)のユニフォームを着用し、「準決勝では(黒崎と)同サイドも組めて良かったです。試合が終わったあとは一応、隼人のユニフォームも着てあげました」と茶目っ気たっぷりの笑顔。大学2年目でようやくチャンスをつかんだ2年生は「まだ実感が沸かないんです」と笑みをたたえながら繰り返していた。

(取材・文 片岡涼)
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