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岩政特別コーチに教わったヘッド、アプローチを尚志の仲間の前で表現したCB馬目、「伝える」ことにもこだわる

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尚志高CB馬目裕也

 日本サッカー協会(JFA)は、継続的な日本サッカーの発展のため、さらなる普及や次世代選手の育成を促進することを目的として『JFA Youth & Development Programme(JYD)』事業を実施中。8月からは元日本代表DF岩政大樹(東京ユナイテッドFC)を特別コーチに、センターバックを対象にした全4回のプレミアムクリニック『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』を行っている。

 11日には3回目のクリニック、DAY3として岩政特別コーチをはじめとしたコーチングスタッフが『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』を受講している2人のうちの一人、CB馬目裕也(2年)の所属する尚志高(福島)を訪問。馬目を含め、尚志のAチームの選手を指導した。

 時折雨も降る中で実施されたトレーニング。主力CB松本雄真(3年)が「自分が知らないことがいっぱいあった。自分は(競った後の動きなど)足先でやっていたんですけど、身体ごと動くみたいなところは凄いなと思いました。毎日、高いレベルで持続して結果に繋げていきたい」と話すなど、各選手が刺激を受けながらトレーニングする中、馬目は岩政特別コーチから「ずいぶん良くなったんじゃないですか。(DAY1から)数週間ですけどちゃんとコツを掴んでやろうとしているのが見えましたよ」と評されるほどのプレーを見せていた。

 これまではともに『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』を受講しているCB関川郁万(流通経済大柏高2年)、サポートメンバーの大学生とのトレーニングだったが、この日はチームメートたちとの2時間弱のトレーニング。他の選手と一人ウェアの違う馬目は「緊張する面があった」と振り返ったが、「習ってきていることを少しでも見せられればいい」とヘディング、アプローチのタイミングの部分などでDAY2まで教わってきたことをしっかりと発揮していた。

 特にヘディングでは岩政特別コーチの言う、「ヘディングは(ジャンプの)落ち際にすること。最初は合わなくてもいいから、早く跳んで上で待つ」ことにチームメートたちが苦戦する中、馬目はタイミング良く跳躍して空中で姿勢をつくり、ボールを跳ね返していた。またゴール前での2対3のトレーニングでは、ファーストディフェンダーになった際、セカンドディフェンダーになった際もやるべきことを意識しながらチャレンジ&カバーを繰り返し、相手の止まったタイミングを逃さずにチャレンジ&チャレンジへ切り替えてボールを奪い取っていた。

 反省点もある。それは「伝える」という部分だ。馬目は相手FWに背負われた状況で「股下でつついて奪うところをもっと伝えていけば、もっと早い段階でボールを奪えたりするんじゃないかと思ったりしている」と振り返った。

 自分自身はDAY2までのトレーニングで岩政特別コーチから「つつく」コツを学んでいたが、それをチームメートに共有していなかった。もっとチームが良くなるために、勝つために「伝える」こと。DAY2のトレーニングの後に「自分がリーダーになろう、自分がリーダーシップとって学んだことを発信してやろうと思っています」と語っていた馬目は、「発信していかないと尚志のリーダーになれない。もっと自分から発信できるようにしたい」と改善することを誓っていた。

 コミュニケーションを取る上でも、自分が思ったことを周りに発信して状況を変えるためにも、声はサッカーにおいて欠かせない。もちろん状況にもよるだろうが、岩政特別コーチは「走れ」や「戦え」という声が必ずしもサッカーにおいて必要だとは考えていない。だが、思ったことを伝えなければ個人、チームがより良いプレーをすることはできない。岩政特別コーチも2年生の馬目が遠慮してか、チームの中でまだ十分「伝える」ことを発揮できていないと感じていた。

「声がけの仕方はそれぞれですけれども、遠慮したりするのは問題ですから。(馬目は)まだまだやれるかなと。彼が気づいたこと、もしくは僕に教わったことをチーム全体に伝えられるようになればもっと彼の存在感は増すはずですし、チームは強くなりますし、全ていいことしか無いですからね」

 尚志の仲村浩二監督は馬目について「最近相手を自由に走らせないようにすることができるようになった」と頷き、先輩CB松本は「アプローチとか相手に背負われた時にしっかりつついたりしてボール奪取能力上がってきた」と成長を認めている。身体能力の高さはチーム屈指のDFだが、まだまだ強豪校の中で絶対的な存在にはなることができていない。この日、岩政特別コーチから「自分が思っていた以上にレベルが高かったですね。単純に選手たちのレベルも高いですけれども言われたことを実践できる。やろうとする力、素直さもそうですけれども選手たちに大事な力ですし、それを感じました」と評された尚志のチームメートとともにより進化を果たすことができるか。

 DAY4はかつて馬目が育成組織に在籍していた鹿島に練習参加する模様。これまで、岩政特別コーチの指導をきっかけにトレーニングや試合でできなかったことを振り返り、どうすれば、改善できるかを考えるようになったという馬目はプロの選手に振り回されないように考えて、準備して最後のトレーニングに臨む。「まず自分が準備からしっかりしないとプロなんで甘く入ったらやられてしまう」。これまでは周囲も認める身体能力に頼っていたというCBが、『NIKE ACADEMY TIEMPO MASTERCLASS』で学んできたこと、そしてこの日欠けていた「伝える」ことをより意識して、国内最高峰の選手たち相手に力を試す。

(取材・文 吉田太郎)

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