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[MOM2296]日本文理DF田中拳斗(3年)_頭蓋骨陥没骨折から復帰したDFが値千金の先制ヘッド

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DF田中拳斗(3年)が骨折した頭部を恐れず、ヘディングシュートを決めた

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 選手権新潟県予選準決勝 日本文理高 2-0 新潟明訓高 新潟市陸]

「ロングスローに合わせようとして跳んで、相手の後頭部が当たったんです。あのときは、それほどではないと思っていたんですけど、触ってみたら頭が凹んでいました。救急車で病院に行きました」。2か月前の話をインタビューで語ったのは、聞いただけでも背筋がゾクッとするようなケガから復帰した男だった。

 第96回全国高校サッカー選手権新潟県予選は5日に新潟市陸上競技場で準決勝を行い、第1試合は日本文理高が2-0で新潟明訓高を下して初の決勝進出を決めた。前半のシュート数をゼロに抑えられた日本文理だったが、後半に入ると先制に成功した。後半19分にゴール前に送られたFKを後ろ向きで反らすようにしてヘディングシュートを決めたのは、9月にプリンスリーグ北信越の北越高戦で頭蓋骨陥没骨折を負ったDF田中拳斗(3年)だった。

 黒いヘッドギアを着けた男は、仲間が待つベンチへ走り、喜びを分かち合った。田中は「GKとDFの間に入って反らせようと思っていました。相手のGKが飛び出してくるのは、CKを見ていて分かっていましたし、自分にそんなにマークも付いていませんでした。ヘディングは得意です」とゴールを振り返った。大ケガから復帰した男の一撃は、値千金。駒沢隆一監督は「苦しい時間、相手にリズムが行きかけていたときに貴重な1点を取ってくれた」と褒め称えた。

 大ケガを負った後は、複数の病院で診断を受けたという。「この大会にかけて来ていたので、絶対に間に合わせようと思いました」(田中)。当初、選手権予選までに復帰することは難しいとされていたが、医師の許可を得て10月中旬に戦列復帰を果たした。そして、苦しんだ準決勝で「最初は怖さがありましたけど、今は大丈夫です」と恐れることなく得意のヘディングでチームに貢献した。

 チームは初の決勝に駒を進めた。今季は夏のインターハイで県大会を制して初めて全国大会に出場しており、夏冬連続の全国出場の可能性は十分にある。田中は、全国大会終了後(決勝は1月8日)の来年1月15日に頭部の負傷個所にプレートを入れる手術を予定しているという。最後まで戦い切る覚悟だ。

「夏から団結力が高まったと思います。選手権に合わせて、チーム全員でやって来ることができました」。もう一度、大舞台へ。諦めない男は、まだまだ戦い続けるつもりだ。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校選手権2017

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