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左膝半月板損傷、2度の手術…『諦めるなよ』慶大MF松木を支えたJリーガーのメッセージ

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左膝半月板の負傷から復活を遂げたMF松木駿之介(3年=青森山田高)

[11.11 関東大学1部L第21節 駒澤大1-2慶應義塾大 たつのこ]

 慶應義塾大のスタメンにMF松木駿之介(3年=青森山田高)の名前が帰ってきた。10月22日の東洋大戦に途中出場して今季初出場すると、11月4日の明治大戦では初スタメンをフル出場で飾る。そして続く同11日の駒澤大戦でもフル出場を果たし、1部残留の望みをつないだ。

「昨年12月上旬の練習中に左膝外側半月板を損傷しました。すぐに手術をして、最初は5、6か月と言われていた。でも開幕から出たいと思って焦ってしまった。リハビリを少し早めていたが、全然よくならなくて、8月にもう一回手術をした。結局復帰までに10か月かかってしまいました」

 松木は青森山田高時代はFW。大学に進学してからは左SHにポジションを移すも、抜群のサッカーセンスで対応。ルーキーイヤーに関東リーグ1部の新人賞を獲得した。全日本大学選抜のメンバーにも選ばれ、今夏のユニバーシアード大会での活躍も期待されていたが、昨冬の怪我が松木の未来を狂わせた。

「ユニバ代表に入りたいという思いが強くて、怪我をした時もまずはそこを視野に入れていた。それと上級生になって3年生でチームを引っ張りたいという思いが強かった。だからあまり筋力を戻さない状況で動き始めたので、その間に半月板が傷ついてしまった。再手術になったときはユニバも諦めて、筋肉をつけてから復帰しようと思いました」

 長く苦しい10か月。サッカーを始めて、これだけサッカーボールを蹴れない日々を過ごすのは初めてだった。しかしそんな松木に思わぬ“プレゼント”が届いた。元JリーガーでもあるMF近藤貫太(4年=今治西高)を通じて、北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希からメッセージが届けられたのだ。『諦めるなよ』。学年は2つ上、直接の面識はなかったが、調べると度重なる怪我と戦っていた。

「プロの選手から全く関係のない選手にメッセージをもらえたのはすごく嬉しくて。僕が中3、高1の時にプレミアリーグで活躍していたのはすごく覚えている。僕自身は関わりはなかったけど、僕が2回手術したというのを知ってくれたみたいでメッセージをくれました。本当にモチベーションを保つきっかけになった。感謝しています」

 離脱期間は何もマイナス面だけではなかった。チームの三浦哲哉トレーナーと二人三脚で自身の体を見つめ直し、研究を重ねた。

「体に変化は相当ありました。ただがむしゃらに筋肉をつけるというよりは、体の動かし方から、どこに筋肉をつけるとかをこだわってやってきた。ビデオもたくさん見た。だから楽しかったですね。最初は辛かったですけど、体が変わっていくことで、復帰したあとにどんなプレーができるんだろうと可能性を感じ始めたので」

 待ちに待った復帰戦は10月22日の東洋大戦。後半31分に出番はやってきた。「最初は復帰したことを想像していて、感動的なものを想像していた」というが、それよりも嬉しさが勝った。「ピッチに戻った時にニヤニヤが止まらなかった。やっぱりサッカーが好きなんだなと思いました」。

 スタンドには『残留』という文字の周りに選手全員が一言記した横断幕が掲げられている。松木はそこに「俺が残す。」と書いた。慶大は残り1節となった現在、降格圏の11位に低迷。18日の最終節の流通経済大戦は、2009年以来守り続けてきた1部の座を死守するための大一番になる。「ずっとチームの力になれなかったので責任がある」。どん底を支えてくれた多くの人への感謝を胸に、松木は運命の決戦のピッチに立つ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第91回関東大学1部L特集

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