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日本代表メンバー発表 ハリルホジッチ監督会見要旨

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日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督

 日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督は29日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、12月のEAFF E-1選手権(味スタ)に臨む日本代表メンバー23人を発表した。

以下、ハリルホジッチ監督会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「本日は23人のリストを紹介する。この選手たちはE-1選手権に参加する選手たちだ。Jリーグの選手にとっては自分を見せて、A代表に立候補する素晴らしい機会だと思う。そういった意味で選手は意欲的にやる気を出してくれると思う。我々にとって残念なことに、(ACLで優勝し、クラブW杯出場を決めた)浦和の選手を呼ぶことができなかった。来られないことは残念だが、コーチングスタッフ、メディカルスタッフすべての人たちを代表して『おめでとう』と伝えたい。素晴らしい成功、素晴らしい偉業を成し遂げたと思う。10年ぶりに日本のチームがアジアで優勝した。それは称えるべきだと思う。もちろん浦和の選手にも来てもらいたかった。たくさんの選手がその候補に入っていたし、直前に山口蛍のケガもあった。作成していたリストが直前に変わることになった。

 今回はホームでこの大会を戦う。まず目標は優勝であるべきだ。他のチームでは中国も北朝鮮もフル代表で来ると思うが、選手には決断力を持って、意欲的にすべての試合を戦ってほしいと思っている。来年の地球規模でやるW杯の準備の一環であることも忘れてはいけない。最終ストレートに入る前の最後のテストになる。今回は経験が豊富な選手と、あまり経験がない選手をミックスして編成した。初めて代表に招集される選手も少なくない。前回(の東アジア杯が行われた)中国ではあまりよくなかったので、今回は全員がピッチに立てば意欲的にプレーしてもらえるようにしたいと思う。(W杯に向けた)準備期間の中で成功をおさめることができれば素晴らしいことだ。浦和の選手、(山口)蛍などがここにいられないが、我々はしっかり優勝を目指して、成功をおさめるべく努力しないといけない。

 それではリストを発表する。GKは3人。東口、中村、権田だ。東口と中村はよく選ばれている。権田は最初のころに招集した選手で、久しぶりの復帰だ。現在、最もコンディションが良いかなと思っている。GKに関しては代表のGKコーチがチームとコンタクトを取りながらGK全員のレベルを上げようとする努力を行っている。ACLのゲームを含め、最近またパフォーマンスを取り戻していた西川を招集できないのは残念だ。

 サイドバックは4人。右に西が入ったが、彼は長い間見ている選手で、攻撃で面白い選手だ。ただ、日本人の多くに見られることだが、デュエルのところのパフォーマンスは上げてもらいたい。西を含め、優勝の可能性がある鹿島の選手たちは非常に高いパフォーマンスを見せている。代表に入った時の西を見たいと思い、招集した。

 質の高い、若い選手も呼んだ。初瀬はすでに五輪代表でもプレーしていて、まだまだ伸びしろのある選手だと思う。右足も左足も使えて、いいキックも持っている。彼の場合も守備より攻撃のほうで面白い選手。代表の中での彼のレベルがどうなのか、どういったプレーをしてくれるのかを見たい。初瀬はサイドバックだけではなく、中盤でもプレーできる選手だ。

 車屋と山本は左サイドで呼んだ。車屋はここ最近ずっと代表に入っている。試合をこなすごとに成長が感じられる選手だ。彼は左利きであり、この代表にはあまり左利きが多くいない。そして川崎Fも今季、非常にいいパフォーマンスを見せていて、本日の試合に勝てば最終節で逆転優勝の可能性も残している。山本も長い間チェックしてきた選手。彼の場合は守備も攻撃もいいパフォーマンスを見せているが、どちらかと言えば特徴は守備にあるかもしれない。ヘディングも強い。特に北朝鮮と中国は空中戦に強いので、こういった特徴を持っている選手も必要だと思った。

 センターバックは4人。昌子、三浦、植田は最近代表で招集されていた。新たに今シーズン、素晴らしいシーズンを過ごしている谷口が招集された。彼はセットプレーでも危険な存在になる。ゲームの読み、予測、そういった部分でも経験のある選手だ。ピッチに立ったときにそういったところでチームに貢献してもらえればと思っている。昌子、三浦、植田は若い選手で、これからもまだまだ伸びる選手だと思っている。この大会は彼らにとっても自分たちを見せる機会だと思う。

 中盤だ。2、3か月前からチェックしている三竿健斗を新たに招集した。彼はボールを奪える選手だ。ボールを奪ったあとのファーストパスも面白いものを持っている。力強さは他の選手と比べてより強いかもしれない。彼も代表でどんなプレーができるのかを見たい。

 今野も復帰している。G大阪では左のセンターバックでプレーしているが、パワーがあり、経験もある。代表ではボランチとして見せてもらいたい。素晴らしいコンディションで戦ったアウェーでのUAE戦での大活躍を私は忘れていない。井手口はずっと招集し続けている選手だ。非常に質の高い選手だと思う。ただ、右にも左にも前にも後ろにも行って頑張ろうとするので、そういうところは少し落ち着かせるべき部分もあるかもしれないが、そこは忍耐強く、我々も彼の成長を見ながら続けていかなければならない。

 より攻撃的な中盤だ。高萩は以前も代表に入っていた非常にパワーのある選手。ケガにより長い間代表から外れていた大島と清武が復帰した。まだ彼らはトップコンディションではないかもしれないが、今回は彼らと直接話をしたいというのもあり、呼んだ。ケガが少し多い選手たちだが、最終的にA代表に残るためにはフィジカルコンディションもトップでないといけない。今現在見せているレベルより高いものを見せないといけない。

 最後にFW。ここにも新たな選手が入っている。柏の伊東だ。スピードがあり、仕掛けるタイプの面白い選手だと思う。違いを生むことができるタイプ。90分間繰り返しアップダウンができる選手であり、規律を守るタイプでもある。彼もまたこの代表でどうなのか見たい。小林悠も非常にいいシーズンを過ごしていて、得点王争いでも3位につけている。より高いところ、より低いところでプレーできる選手。彼は中央でもサイドでもプレーできる選手。自分でも点を取れるし、点を取らせることもできる選手だ。彼にとってもA代表に自らを立候補する場であると思う。

 倉田も最近ずっと代表に入っている。ブラジル戦、ベルギー戦のときはちょっとしたケガがあったので彼を起用しなかった。リズムチェンジ、スピードアップができる選手。モダンサッカーで必要とされるそれらを彼は持っている。ボールを持っているときと持っていないとき、両方で動ける選手だ。普段はあまりそういうプレーを見せていないかもしれないが、ボールを止めてしまったら有効なプレーにならないと彼にも伝えているが、それができる選手で、動いて前に向かっていける選手だ。

 川崎Fから新たに阿部を招集した。彼はサイドでもプレーできるし、トップ下もできる。最初に50人のラージリストをつくっていた。その中でもチームとして良いパフォーマンスを見せていた小林悠や阿部を招集した。好調なチームからより多くの代表選手が出てくるということになる。阿部の場合もリズムチェンジ、スピードアップができる選手。彼も代表の中で見てみたいと思った。

 センターフォワードは杉本と金崎。杉本については以前からも話をしているが、ずっと代表に入っているし、これからもまだまだ成長する選手だと思っている。この代表で過ごす1週間、10日間でさらに成長してもらいたい。そこで話をしっかり聞いてもらって、来年も成長を続けてもらいたいと思っている選手だ。

 そして金崎が復帰している。鹿島の他の選手たちも含め、いいシーズン、いい戦いを見せ、優勝に迫っている。前線でたくさん動く選手だ。他の選手たちと比較すると、めずらしくパワーがあり、アグレッシブにプレーする。代表ではゼンターフォワード、中央でプレーすることを求めている。彼の場合は最後のフィニッシュのクオリティーをさらに上げてもらいたいと思っている。たくさん動くので、最後のシュートのところで少し疲れているのかなとも思う。

 以上の23人を今大会に招集した。どの選手を招集するのかいろいろ悩んだが、この代表で何が必要なのか、何が足りないのかというところも考えながらリストを作成した。招集できない状況の選手たち以外ではベストメンバーだと思える構成にした。意欲と決断力を持って良い大会にしたいと思っている」

―金崎は以前、クラブで監督と衝突し、ハリルホジッチ監督も厳しい言葉を口にしていたが。
「金崎の場合はクラブでの不適切な行動は過去にあった。もちろん代表監督としても、そこはあまり評価できない部分だ。しかし、それも過去のことであり、私も忘れている。今現在、文句のつけようのないパフォーマンスを見せているから招集した。前も招集しなかったのはクラブの監督との衝突があったからという理由ではない。杉本、興梠、小林などと彼はポジション争いをしているが、他の選手たちのほうがより多くの点を取っているということ。もちろんそういった行動は良くないということは彼自身とも話している。しかし、そういったところも許しながら、前進し続けないといけない。優勝する可能性のあるチームでいいパフォーマンスを見せているということで招集した。相手とのデュエルでアグレッシブに行けるめずらしいタイプの選手だ。私は杉本も小林も興梠も、(金崎)夢生のようなアグレッシブさを身につけてもらいたいと思っている」

―代表として何が必要で、何が足りないのかという部分について説明してほしい。
「代表に何が足りないのかということでは、前線でも中盤でもディフェンスでも足りないものはある。ディフェンスに足りないもの、中盤に足りないもの、前線に足りないもの。ブラジル戦、ベルギー戦の2つのテストでそこははっきり見られた。分析すれば、たくさんのものが見られる。すべての面で、すべてのポジションで改善は必要だ。来年のW杯に向けての6か月間は非常に重要な期間。精神面、メンタル面、そういったところでもこの2試合でたくさんのフィードバックを得ることができた。W杯を戦うとき、弱点があれば、それが試合で出てしまう。だから我々も改善しないといけない。例えばアグレッシブさが足りない場面もある。それは前線でも最終ラインでも同じ。コミュニケーションも改善しないといけない。メンタル面ではより自信を持ってプレーしてもらいたいと思っている。

 ブラジル戦も立ち上がりの20分間と後半ではまったく選手たちの姿が違った。立ち上がりは圧倒されていた。もちろんブラジルに勝つのは非常に難しいことだが、後半の戦いであと2得点取っていてもおかしくなかった。取り消された2点目はゴールだったのではないかと思う。このようなチームと対戦するときも“今日は負けるぞ”ということは言っていけないし、勝ちに行くことを考えないといけない。ベルギー戦はまったく違った姿があった。非常に冷静にプレーできていたと思う。ただ、決定力のところに問題があるかなと思った。たくさんの決定機があったが、そこでの決意、自信が欠けていたからなのか、最終的に相手にとって危険な場面にはならなかった。W杯ではあの試合のように5回、6回の決定機が訪れるわけではない。2回、3回のチャンスで点を取らないといけない。たからこそ、攻撃のときに点を取れる決定力のある選手が必要だ。ストライカーというのはどのチームにとっても不可欠だ。特に格上と言われるようなチームと対戦するときにはそういう選手が必要だ。シンガポール戦やカンボジア戦のように20回の決定機をつくれるわけではない。それよりずっと少ないチャンスで決めないといけない。先ほど23人のリストを作るときにいろいろ考えたと言ったが、そういったところも見てみたいと思う。長谷部はケガをしていて、その影響でW杯に出られないという最悪の事態も想定して準備しないといけない。長谷部はサッカーの面だけでなく、人間としてもこのチームにとって非常に重要な存在だから、だれが長谷部の代わりになるかということも考えないといけない。リストを作成するときに我々はたくさんのことを考えている。今海外でゲームに出続けている選手が少ない状況だ。つまり最終的なリストを作成するにはまだまだ不確定要素が多すぎる」

―3試合はある程度メンバーは固定して戦うのか、試合ごとに入れ替えるのか。
「8日間で3試合戦う大会だ。選手たちが集合したときには疲労のテストなども行う。彼らの健康状態、疲労の状況を把握したいからだ。初めて代表に招集されている選手もいる。試合ごとにある程度メンバーが代わるということは予想される。しかし、何人入れ替えるのかということは現時点で言うことは難しい。いくつかのゲームプランやシステムも考えている。それがすべてこの大会中に見られるかというと難しいかもしれない。選手たちにはベストなプレーを要求し、どの試合も勝ちに行くことを求める。自らA代表候補に名乗り出ることを期待する。常にチームのための精神を持ち続けながら、チームとして日本が力をつけていかないといけない。選手個人で状況を打開する。一人でそういったことができる選手がいないので、チームとして組織として発展していかないといけない。そのためにこのチームのアイデンティティーという資料を選手たちには与える。守備のとき、攻撃のとき、どういったことをしないといけないのかということがそこに書いてある。セットプレーではどういうことをするのか。そういったメッセージを選手たちに伝えて説明し、我々の見たいサッカーを彼らに身につけてもらいたい。フィジカルコンディションが現時点で分からない選手もいる。いろいろテストしながら私としても改善していくところはあると思う。この3試合からはたくさんの情報を得ることができると思う」

―セットプレーで良いキッカーがたくさん選ばれているが。
「直接FKで最後に日本代表が得点を決めたのがいつだったかお分かりでしょうか。もう数年経っている。PA付近でどれくらい我々がFKを得ることができているのか。我々が来てから30試合プレーして3本だ。どのチームも1試合で少なくとも3回、PA付近でFKをゲットしている。ブラジル戦ではそういったところでFKを得ることができ、(吉田)麻也がバーに当てた。そういう惜しいキックもあったから、いいキッカーはすでにいるかもしれないが、FKを得ることができていない。PKもブラジルはあの試合で2回ゲットしたが、我々はこの30試合で3回か4回ぐらい。ブラジルは同じ期間で15回、20回のPKを得ることができている。そういったデータを変えるためにも、しっかりトレーニングして彼らにも進化してもらいたいと思っている。南アフリカW杯で日本がグループリーグを突破できたのもFKによる得点が2点あったからだと思っている。PK、FKはもっとたくさん獲得しないといけない。30試合でPA付近のFKが3つか4つしかないのは少なすぎる。

 そういったトレーニングをする時間ももっと欲しいと思っているが、選手たちと過ごす8日間、9日間でたくさんのメッセージをピッチ外でも伝えていく。私はFWだったので、どうすればFKやPKを得ることができるか分かっている。私はそのスペシャリストだったといっても過言ではないと思っている。そういう経験を選手たちにも伝えていきたい。W杯直前の準備期間ではより長い時間、そういったトレーニングもできるが、FKがなければFKを蹴ることはできない。試合前のミーティングでも毎回、FKをゲットしようという話をしている。まだ私が希望しているところまでできていない。そういった細かいところもしっかり分析し、改善するトライをしていきたい。初瀬は右足でも左足でも蹴れる。清武もキッカーになれる選手だが、クラブでは蹴っていない。井手口も蹴れる。そういったスペシャリストもいるが、個人でトレーニングしてもらわないといけない部分でもある。例えば井手口の場合は1本のキックは低すぎるボールになる。2本目、3本目でいいキックになる。そういった細かいところも見ながら考えている。もちろんキッカーになれる選手は練習後の居残りで練習してもらってもいい」

―新しい選手も多い中でリーダーシップで期待する選手はいるか。
「リーダーシップを取る選手は基本的に経験のある選手になる。このチームに一つ弱点があるとすれば、もしかしたらコミュニケーションの部分かもしれない。特に中央の選手たちにそれを期待している。長谷部がいれば、彼がチームの中心となって声を出している。長谷部がいないとき、そういった問題が出てくる。私は毎日そういったことも繰り返し要求しているし、選手たちが声をかけ合いながらトレーニングするものも取り入れている。しかし、ゲームではあまり選手たちの声が聞こえてこない。叫ぶ選手、呼ぶ選手。そういったことがあまりない。このリストの中でも経験のある選手にはそういったことを期待している。年齢はあまり重要ではない。20歳であっても30歳であっても、ポジションがコミュニケーションを要求することもある。声を出さないといけないところではしっかり声を出して改善していかないといけない。まだキャプテンももちろん決まっていない。キャプテンに値する選手を見極めたいが、キャプテンになるための素質はいろいろある。たくさん試合に出ていても声が出ていない選手もいれば、より声が出ている若い選手もいる。チームでは声を出す選手が必要だ。練習の中でもだれがキャプテンになるべきか、だれがコミュニケーションを取るべきかというのも見ながらやっていきたい」

(取材・文 西山紘平)

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