beacon

「東京五輪への推薦状」第53回:「ゴールしかない」自分の居場所で結果を残す“大吉男” G大阪FW原田烈志

このエントリーをはてなブックマークに追加

ガンバ大阪ユースFW原田烈志はNEXT GENERATION MATCHで1ゴール

 2020年東京五輪まであと2年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 富士ゼロックス・スーパーカップに際して行われる恒例行事『NEXT GENERATION MATCH』。U-18 Jリーグ選抜と日本高校サッカー選抜が相撃つこの試合では、参加全選手のアンケートが実施されて、公開されている。『サッカー以外の特技』なんて項目もあるのだが、そこに「運がいい」と回答している選手がいる。ガンバ大阪ユースのFW原田烈志である。

「いや、本当に自分は運がいいんですよ。おみくじを引くとほぼ毎回大吉で、ビンゴゲームではすぐに上がれる。引きは強いですね」(原田)

 そういう「運」かよ!……と突っ込みたくなる気持ちもあるが、思えば4試合6ゴールで得点王に輝く大活躍を見せた昨年12月のJリーグ・インターナショナルユースカップでも、「自分は運がいい」と言っていた。その時はゴール前で“おいしい”ボールをもらえたことについてのコメントだったはずだが、ゴール前での“たまたま”を信じて走り込み続けるプレーをやめない“原田らしさ”の源泉は、自分が“持ってる”ことへの確信なのかもしれない。

 原田はここまでのキャリアで大きな脚光を浴びてきた選手ではない。代表歴のある選手がズラリと居並ぶG大阪ユースの中で考えればなおさらだろう。活躍を期して臨んだ昨季のリーグ戦も途中まではなかなか出番を得られなかった。だが、ついにポジションを勝ち取った後半戦では8試合7得点と大爆発。結果で周囲を納得させて、ポジションをもぎ取ってみせた。

「自分は結果しかない。ゴールしかできない」(原田)

 特別体が大きいわけでもないし、華麗なドリブルを見せられるわけでもなく、スルーパスで魅せるタイプでもない。そういう自覚があるからこそ、自分の居場所であるゴール前へのこだわりを強烈に持っている。「絶対に1点は決める」というシンプルな目標を立てて各試合に臨み、そして結果を残し続けている。

 NEXT GENERATION MATCHでのゴールも、何とも“原田らしい”ものだった。FW棚橋尭士(横浜F・マリノスユース)のクロスに鋭く反応してのワンタッチシュート。こういうのは“おいしい”ゴールに見えがちだが、「この辺に来るやろな」と思って動き出す感覚は、原田がG大阪ユースの激しい競争を生き抜くために磨いてきた個性そのものだ。「(投入時は0-2で負けていたので)3点取るつもりだった」という本人からすると、納得のいく結果ではなかったようだが、静かなインパクトは残した。

 まだ2種登録もされていないし、年代別日本代表へ選ばれたこともない。だからこそやはり、本人は周囲の評価を覆していくために「結果を残すしかない」と言う。「自分はゴールしかない」と言い切れるメンタリティは、もはや個性だ。

「楽しかったし、もっとやりたかった」と語るJリーグ選抜で過ごした時間は、「年代別日本代表に入りたい」という気持ちを加速させた。そのためには、やはりゴールを積み重ねていくしかないだろう。

「早くJ3にもデビューしたいし、プレミアリーグでは得点王になりたい」

 青と黒の名門で成長を続ける点取り屋は、“運”だけでは決して達成できない数字を積み上げ、夢への階段を駆け上がる。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
●富士ゼロックススーパー杯2018特集


TOP