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昨年の日韓戦は挑発に耐え切れず退場…旗手怜央、ゴールでリベンジを

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押しも押されぬ大学サッカー界のエースに成長したFW旗手怜央

 昨年は韓国で行われた『DENSO CUP SOCCER 大学日韓(韓日)定期戦』。日本は27分にMF重廣卓也(京都)のゴールで先制するも、34分に同点に追いつかれ、延長戦で全韓國大學選抜の逆転弾に沈んだ。

 昨年の敗戦を、おそらくは出場選手の誰よりも「残念な結果」と捉えているのがFW旗手怜央(順天堂大2年)だ。あの試合はサッカー人生で初の“日韓戦”だった。スタートメンバーとしてピッチに送り込まれた旗手は、前半からの度重なる相手の挑発に耐えきれず、「気づいたら、やり返していました」。

 旗手は退場を言い渡される。1-1で迎えた後半、開始早々の5分のことだった。その結果、全日本大学選抜は残り40分と延長戦を、ひとり少ない10人で戦うことになった。

「一番やっちゃいけない行動。あの時は自分がまったくコントロールできていなかった。最後までピッチにいられたかどうかはわからない。だけど退場していなければ、自分にもチャンスはあったかもしれないのに」

 全くいいところなく終わった日韓定期戦。しかし帰国後は落ち込む間もなくリーグ戦が始まり、7月にはU-20代表に招集され『AFC U-23選手権中国2018 予選』に参加。8月には台北で行われたユニバーシアード競技大会で活躍し、世界一に大きく貢献した。また12月には、東京五輪を目指す“森保ジャパン”のメンバーとしてタイで行われた『M-150杯』に参加。大学生ながらさまざまな代表チームで、その実力を試されることになった。

 昨年の関東大学リーグでは2年生ながら14得点をあげた。その決定力、得点力は大学生としてはずば抜けている。しかし旗手は、「そもそも“大学生としては”と言われるようではダメ」だとキッパリ。そう痛感しているのは、世代別代表で力を出し切れない苛つきがあったからかもしれない。

「FWとして出ている以上、結果は出さないといけない。ポジション争いも激しいし」

 実際、大学生も多く呼ばれた『M-150杯』から1か月後、中国で行われた『AFC U-23選手権』に参加するU-21代表が発表されたが、そこに旗手の名前はなかった。本人も「正直、タイでのプレーはあまりよくなかった」認めるだけに想定内の結果だった。しかしその後に思いもよらない展開が待っていた。U-21代表に怪我人が続出し、旗手が追加メンバーに選ばれたのだ。

 当の旗手は全日本大学選抜の合宿に参加し、まさにU-21代表とのトレーニングマッチを終えて自宅に戻ってきたところ。「U-21代表との試合でのプレーは悪くなかったと思うけれど、怪我人がそんなに出ているとは知らなかった」という旗手にとっては青天の霹靂。すでに日本を発ったチームを追って、ひとり中国へと向かった。

「びっくりしたけど、逆にこれはもうやるしかないな、と思った。それに、森保一監督のもとでまたサッカーをできるのが、すごく楽しみだった」

 スタメンを告げられたのは、グループリーグ最後の北朝鮮戦。旗手はここで思い切った縦への突破で2点目の起点となり、また相手のファウルを誘いPKを獲得。そのままキッカーとして決め、待望の“森保ジャパン”での初ゴールを決めた。

「あの試合は不思議と“絶対にゴールが決まる”という予感があった。緊張がないわけではないけれど、それをうまく楽しむことができた。そういう意味では、メンタル的な部分での成長があったのかもしれない」

 旗手はそう振り返る。

「世界にはうまい選手や速い選手、強い選手がたくさんいる。そういう人に真っ向勝負を仕掛けるときは、自分のスタイルを貫くことが大切だと思う。たとえば北朝鮮戦では、自分のスタイルを思い切り出せたからこそ結果につながった。ただ、あの代表では、自分が一番の新参者で経験が少ない。だからあのチームのサッカーに自分のスタイルをはめるというか、自分のよさをもっと出せるよう、頭を使ってプレーしていかないといけない」

 そうした経験を経て、旗手は3月18日、2度目の日韓戦を迎える。

 昨年は「下級生だったから、先輩たちがお前はノビノビとやれっていう感じだった。わがままなプレーも多かったと思う」。だが今大会では立場が違う。今回の全日本大学選抜は3年生の先輩も多いが、「1、2年のメンバーにとって、3年生は初めてやる選手。自分は前回のユニバ代表でもあるので、両方の間で潤滑剤のような存在になって、どちらのプレーにも合わせられるようにしたい」という。

 この大会が終われば、全日本大学選抜は純粋に2年生以下の、次期ユニバーシアード代表候補としての強化を進めることになる。「その中で、前ユニバ代表として世界一を経験しているのは、自分と薫(三笘・筑波大/今大会は怪我のため辞退)だけ。これからはプレーはもちろん、メンタルの面でも、自分と薫が引っ張っていかなければならないと思う。その部分を期待されているのは感じています」と旗手。

 そのためにも、まずは昨年のリベンジをはたしたい。「どのチームにいっても求められている」というゴールという結果はもちろんのこと、昨年のような自ら不甲斐ない状況を招くわけにはいかないのだ。

「退場はしない。何があっても、絶対に。イエローももらわない。どうせもらうならPKですね」

 この1年間、様々な経験を経て大きく成長した全日本大学選抜のエースは、そう笑った。

 旗手が全日本大学選抜の一員として参加する第15回大学日韓定期戦は、今週末、3月18日に柏の葉陸上競技場で行われる。キックオフは12時30分。未来のJリーガー、日本代表選手を見逃すな!入場料は一般は当日1500円。前売りは1200円。高校生以下は入場無料となっている。

(取材・文 飯嶋玲子)

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