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197日ぶり復帰の川崎F齋藤学、横浜FMサポのブーイングは「勝手に愛情の裏返しと…」

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試合後、DF中澤佑二と握手するMF齋藤学

[4.8 J1第6節 横浜FM1-1川崎F 日産ス]

 ピッチの上で全力でボールを追えることが何よりもうれしかった。後半32分、川崎フロンターレは最後の交代カードでMF齋藤学を送り込む。右膝前十字靱帯損傷の重傷を負った昨年9月23日の甲府戦以来、197日ぶりの復帰戦。その表情には思わず笑みが浮かんだ。

「松原健に『ニヤけすぎだよ』と言われて。そんな笑ってたかなって」。左サイドハーフに入った齋藤の対面に位置したDF松原健からの指摘を苦笑いで明かした。「サッカーがどんなに楽しくて、自分にとってサッカーがどんなに大きなものかを感じるリハビリ期間だった」。アディショナルタイム5分を含めた18分間、サッカーができる喜びと幸せを噛み締めた。

 再三のチャンスにも絡んだ。左サイドに開いてボールを受ければ、果敢に仕掛け、ゴールを目指した。後半44分、中に切れ込んでのスルーパスはわずかにDF登里享平に合わず、後半アディショナルタイム3分にはシュート性のクロスがゴールマウスを捉えるもGK飯倉大樹にかき出された。

 最大のチャンスは後半アディショナルタイム5分。左サイドから中に持ち込み、右足でゴール前にクロスを送ると、FW大久保嘉人がワントラップから左足でシュートを打ったが、飯倉のビッグセーブに阻まれた。あと一歩のところで遠かった勝ち越しゴール。「プロ選手として結果を残さないといけない。結果にならなかったら自分が出た意味がない」と、長期離脱明けとは思えないパフォーマンスにも決して満足はしなかった。

 川崎Fの一員としてのデビュー戦。その相手は昨季まで所属していた横浜FMだった。小学生時代から横浜FMの下部組織で育ち、昨季はMF中村俊輔(磐田)の背番号10を継承し、キャプテンにも就任。しかし、それからわずか1年で同じ神奈川県内のライバルクラブに移籍したことで批判も浴び、“禁断の移籍”として今オフをにぎわせた。

「ここ(横浜FM戦)に合わせてリハビリをしてきたわけではなく、少しでも早く復帰するためにいろんなことをやってきた。ここでマリノスというのには感じるものもあった」。くしくも実現した日産スタジアムでの復帰。選手紹介のときも交代でピッチに入るときも、さらにはボールを持つたびに横浜FMのサポーターからは大きなブーイングが飛んだ。

 それでも「勝手に愛情の裏返しだと思っていたので。『そうじゃない』という声もあがると思うけど、このピッチで戻ってこれたことには思うところもあったので」。試合後は横浜FMのゴール裏に向かって頭も下げた。「本当はサポーターのほうに行きたかったけど、止められちゃって。でも僕にとっては好きなクラブなので。しっかり挨拶はしなきゃと思った」。偽らざる胸の内を語る齋藤はそのうえで前を向く。

「もう先に進んでいるので。マリノスはマリノスでいいサッカーをしていたし、僕はフロンターレの中でどう輝いていくかを考えてやっていきたい。本当に(チーム内の)競争がすごいので。みんなうまいし、強い。ここでの自分を作り上げていきたい」。川崎Fの齋藤学として踏み出した第一歩。古巣相手の復帰戦という感慨に浸る時間はない。

(取材・文 西山紘平)

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