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「結婚式を挙げたばかり」で契約満了…山口GK藤嶋栄介、「本当にどうすればいいのか」から蘇った守護神

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レノファ山口FCのGK藤嶋栄介

[4.22 J2第10節 町田1-2山口 町田]

 今季、Jの舞台に立っていない可能性があったのかもしれない。今年1月14日に鳥栖から契約満了が発表されたGK藤嶋栄介は、当時を振り返る。「戦力外になったのは初めて。結婚式を挙げたばかりで、これから先、一番頑張らないといけないときにチームがなくなって、本当にどうすればいいのかと思った」と――。

 大津高から福岡大に進学した藤嶋は13年に特別指定選手として鳥栖のトップチームに帯同し、Jリーグデビューを飾った。しかし、14年に正式に鳥栖に加入したものの、思ったように出場機会を得られず。出場機会を求めて16年には千葉、17年には松本へと期限付き移籍したが、リーグ戦でピッチに立つことはなく、契約満了が発表されることになった。当時25歳。シーズンオフには結婚式を挙げたばかりだった。

「チームが決まらない期間はモチベーションを保つのも難しかった」ようだが、ここでサポートしてくれたのが地元・熊本のロアッソ熊本だったという。「ロアッソ熊本さんの方から『チームが決まるまでウチでトレーニングして大丈夫だよ』と声を掛けて頂いた。知っているコーチの方や選手もたくさんいたし、そのご厚意のおかげでモチベーションを落とさないでトレーニングできた。それが一番大きかったのかもしれない」。そして、腐らずにトレーニングを続けた結果、2月2日にレノファ山口FCへの加入が発表された。

「奥さんはチームが決まらないときは『大丈夫だよ』と声を掛けて常に横で支えてくれていたし、チームが決まったときは自分のこと以上に喜んでくれた。それが、本当にうれしかった」

 千葉、松本へ期限付き移籍したときも覚悟はあった。しかし、「今回に関してはチームがなかったし、家族ができて環境も変わった」こともあり、「より一層強い覚悟を持ってのシーズンになった。『本当にやってやろう』『山口で試合に使ってもらいプレーで返していくしかない』という気持ちが強かった」と断固たる決意を持ってチームに合流した。藤嶋を受け入れた山口の霜田正浩監督やチームスタッフからは「皆、同じスタートライン。本当に頑張ってほしい」との言葉を掛けられ、自身も「今年、(先発の座を)勝ち取らないと何のために山口に来たんだ」とモチベーション高く練習に取り組んだ。そして、2月25日に迎えたJ2リーグ開幕戦。チームが決まらない期間にサポートしてくれた熊本との一戦で、先発の座を勝ち取り、4-1の開幕戦白星に貢献することになった。

 その後もスターティングメンバーに名を連ね続け、第10節町田戦では開始直後に至近距離から放たれたシュートを3本連続でストップするなど2-1の勝利に導く。しかし、「失点してしまったので、そこは反省しないといけない」と表情を緩めることはない。1月に契約満了が発表されてから、約3か月。10試合連続フル出場を果たす藤嶋は、6勝2分2敗の勝ち点20で3位につけるチームにとって不可欠な存在となった。

 しかし、慢心することなく、今後も一日一日、一試合一試合を大事に過ごしていく。「契約満了になってからチームが決まるまでの期間で、今まで当たり前だと思っていた環境は普通ではないと感じさせられた。今こうやってプレーできることは当たり前ではないし、一試合一試合全力を尽くしてプレーすることが本当に大事なんだと改めて実感している」。一度、離れたから分かることがある。“当たり前ではない環境”に身を置き続けるため、そして「ピッチに立って勝利に貢献することが山口への恩返しになる」と“当たり前ではない環境”を与えてくれたチームに白星をもたらすため、より一層強い覚悟を持って臨んだシーズンを戦い抜いていく。

(取材・文 折戸岳彦)
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