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天皇杯PK戦やり直しは競技規則適用ミス…一般からの問い合わせで発覚、審議

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会見した須原清貴天皇杯実施委員長(右)と小川佳実審判委員長

 あってはならないミスだった。6日に行われた天皇杯2回戦の名古屋グランパス奈良クラブにおいて、PK戦のやり直しが決定した。奈良クラブの4人目で蹴ったMF金久保彩に対する競技規則の適用ミスがあったためだった。

 日本サッカー協会(JFA)の説明によると、PK戦で奈良クラブの4人目のキッカーだった金久保の蹴る前に動きを入れた行為について、清水修平主審はフェイントと判断した。

 しかしここで競技規則の適用ミスがあった。規則に従えば、当該選手を警告とし、キックは失敗となるところだが、清水主審は警告を与えず、蹴り直しを指示した。

 規則通りであれば、その時点で名古屋の勝利が決まっていたが、金久保の蹴り直しのPKが成功したため、そのままPK戦が進行されてしまった。結果、名古屋の5人目と6人目が失敗したため、奈良クラブの勝利で終わっていた。

 フェイントの規則については、17-18シーズンから追記された項目だった。それまではPKが成功した場合は当該選手に警告を与えてPKの蹴り直し、PKが決まらなかった場合は警告を与えて失敗とみなすとされていた。

 また金久保のフェイントについては「議論の余地がある」としたが、今回の決定は“誤審”についての決定ではなく、あくまでも競技規則の適用ミスだったため、PK戦やり直しの決定が覆ることはないという。

 “ミス”が発覚したのは翌日7日午後、三級審判員の資格を持つ一般人からの問い合わせからだった。「ルールの確認をしたい」というものだったというが、そこから協議が重ねられ、やり直しの決定に至った。この件について、試合直後に両クラブからの問い合わせはなかったという。

 また両クラブには8日に通達がされた。ただしJFA側の理解の相違から、最初は名古屋の勝ちになるという説明がされたという。しかしその後、国際サッカー評議会(IFAB)と確認作業を行う中で、PK戦のやり直しという選択肢があることが発覚。11日に開かれた臨時の天皇杯実施委員会において、決定した。現在は両クラブとも決定に納得しているという。

 実施委員会でも意見は分かれ、1、名古屋の勝利 2、PK戦をやり直す 3、公式結果(奈良クラブの勝ち) という3つの選択肢を出して議論を重ねたというが、最終的には委員13名で多数決を行い、7票を得た2の選択肢が採用された。

 会見した須原清貴天皇杯実施委員長は「PK戦は試合の一部ではない。勝敗の結果に重要な結果を及ぼす適用ミスが、試合の一部ではないPK戦で行われた。そのことを実施委員会としてはPK戦そのものが成立していないこととみなすと判断した」と説明。そのため、PK戦全体のやり直しに至ったと結論づけた。

「下位のクラブが上位のクラブを倒すジャイアントキリングを前面に押し出してプロモーションをしてきました。こういう素晴らしい試合の中で、このようなミスが起きてしまったことは、両クラブの選手、サポーターの皆さま、サッカー協会、スポンサー各社、関係者の皆さまにお詫びを申し上げたい」

 清水主審もミスがあったことを認め、「大変申し訳ない」と話しているという。処分等は明日12日に行われる審判委員会で決定する。

(取材・文 児玉幸洋)
●第98回天皇杯特設ページ

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