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「MERCURIAL MASTERCLASS」最終回でFW和田、SB高木が広島練習参加、学んだ“基準”を忘れずに続ける

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FW和田育(右)とSB高木大輝はJ1首位・サンフレッチェ広島の練習に参加して学んだ

 “史上最速選手”を育成するためのプレミアムクリニック「NIKE ACADEMY MERCURIAL MASTERCLASS」(全4回)を今年2月から受講したFW和田育(阪南大高)とSB高木大輝(京都橘高)の2人が5月28日と29日の2日間、クリニック最終回としてJ1で首位を走るサンフレッチェ広島トップチームのトレーニングに参加した。

 プレミアリーグ勢・阪南大高(大阪)の主将を務める和田は爆発的なスピードを武器とするストライカー。一方の高木は全国常連の京都橘高(京都)で2年生ながら10番を背負うウィングプレーヤーで、高精度の左足も備えた注目レフティーだ。2人は「NIKE ACADEMY TOKYO」の小島直人ヘッドコーチと鈴木友規フィジカルコーチ、そしていずれも日本代表歴を持つMF倉田秋(G大阪)やFW玉田圭司(名古屋)の指導によって、そのスピードをより発揮するための身体の使い方、スピードを活かすためのボールタッチ、効果的なドリブルの仕方などを学んできた。

 その成果を発揮する場でもあった広島への練習参加。W杯に伴うJ1中断期間ということもあって、“鍛錬期”の広島はフルメニューでのトレーニングだった。DF千葉和彦らに温かく迎えられ、微笑みながらトレーニングをスタートした和田と高木だったが、すぐにJ1トップクラブと普段自分たちが身を置く高校サッカーとの大きな差に気付かされることになる。

「人の倍走れる走力、敏捷性、長い距離を走れる力を上げていく必要がある」と語る池田誠剛フィジカルコーチによる臀部強化のメニューに2人の顔色が変わり、4対2のボール回しでは満足にボールを動かすことができない。幾度もミスを誘発され、一度“鬼”になると、なかなかボールを奪い返すことができなかった。

 アピールチャンスだったゴール前の攻防のトレーニングでは自分の良さをほとんど出すことができず。クロスからのシュート練習では高木が幾度か「ナイスボール」と声を掛けられ、和田はDF馬渡和彰のクロスからシュートを連発した居残り練習でシュートの巧さも見せていたが、せっかくのチャンスにもかかわらず、積極性を欠いた練習初日。プレーでも、キャラクター性の部分でも十分なインパクトを残すことができなかった。

 雨中で1時間の集中したトレーニングとなった2日目、日本代表歴を持つDF水本裕貴が「2人とも最初は緊張していたと思いますけれども、時間が経つにつれて、自分のプレーを出そうと一生懸命やっていることが伝わってきましたし、今日も、昨日よりも伸び伸びとプレーできていたんじゃないかと思っています」と印象を口にしたように、初日に比べると積極的な動きが増えた。

 この日はゲーム形式の10対10も実施された。左SHに入った高木は一度、得意の縦突破をするチャンスがあったが、DFの前に潜り込ませてもらえず、切り返しを強いられることに。それでもクロスを上げきって見せたが、納得はしていなかった。

 また、FWとしてプレーした和田はDF佐々木翔から「近くの選手が落ちてきたタイミングで裏に抜けたり、いいタイミングだったのでそのまま続けて行こう」と声がけされていたが、自慢のスピードで決定的なシーンを作ったり、ゴールを決めることはできず、高木同様に練習後は悔しがっていた。

 短い時間ではあったものの、Jリーガーと同じ寮生活、練習直後の食事。そしてトッププレーヤーの技術、フィジカル、そしてスピードも目の当たりにする2日間だった。「失うものは何もない」と挑戦した和田は、「トラップはこだわっていたんでちょっとはできたと思うんですけれども、スピードとか(DFの前に)潜ることはあまり出すシーンがなかった。潜るところは自分の得意なプレーでもあるので、そういうところはもっと出して行きたかったんですけれども、できなかったことはちょっと心残りです」と悔しがる。

 一方、来年のプロ候補の声もある高木は、「来る前からプロとのレベルは違うと思っていた。その中で自分ができることを見つけていきたいと思ってきたけれど、実際にレベル、パススピードとか違いました。日頃から意識を変えてやっていきたいと思いますし、日頃の生活が大事と言われていたので、日頃の学校生活からやっていって良い選手になっていきたいと思いました」と刺激を受けた様子だった。積み上げたことが通用しない、と感じたことも次への糧となる。大事なことは、この経験、悔しさを忘れないことだ。

 U-17日本代表監督として高校世代の選手たちを指導した経歴も持つ城福浩監督は彼らを含めた高校生たちへ向けてエールを送る。「Jの下部組織だけでなく、いわゆる高体連にも色々な選手がいるのは日本の強みだし、その競争の中で誰が最後一伸びしてくるかというと、いかに普段から高い意識を持っているか。やり続けた子が最後出てくると思う。そういう意識を高く持ってもらえれば、今、スカウトやトレセンの方が色々なところで見ている。高い基準を持ってやり続けることをみんなが意識してくれれば、レベルはもっと上がっていくと思うし、今の若い子は上手い。技術は間違いなく上がっていますから、その活かし方とか、自分は(レベルが)高いと思っていても、まだ高くしようと思えるかだと思う」と期待した。

 そして、ともに高体連出身のJリーガーたちは高校時代の自分を思い返しながらアドバイス。佐々木は「2人とも能力は高いと思いますし、それぞれストロングポイントがある。そこを磨き続けることでプロでも通用する武器になると思うので、こだわりを持ってトレーニングして欲しいと思います。あとは自分が輝いている部分だけじゃなくて泥臭さだったり、いくら上手い選手でも戦えない選手はプロでは通用しないと思いますので、頑張る部分も磨いていけたら未来にも繋がっていくのではないかと思います」と語り、水本は「2人ともそれぞれの目標があると思う。その目標から逆算して、普段の生活だったり、練習に取り組んでいってもらえれば、より高みを目指せると思うので、その部分は今からでも遅くないのでやってもらえればと思います」と語った。

 城福監督、水本、佐々木に質問するチャンスを得た2人はより怖い選手になるために必要なこと、また課題改善のために必要なことも教わった。この日で全4回のクリニックは終了。和田は「日頃の練習が変わらないと、自分は変わらないと思うので変わっていきたいです。水本選手のオフサイドは敵を見るんじゃなくて、ライマン(ラインズマン)を見る方がDFからしたら怖いと教わったので、教えてもらったことを活かして頑張っていきたい」と意気込んだ。

 そして、高校卒業まであと1年以上ある高木は「意識を変えたらできないことはないけれど、(現状の差は)ちょっと衝撃的というか、もっとやらないかんという気持ちです。4回の体験を通して、今までに習わなかった知識とか初めて知ったことがあった。それは自分にとってプラスになるので、続けていきたいです」と語り、練習だけでなく、学校生活、睡眠の部分からこれまでと違う日々を送ることを誓っていた。

 将来、プロの世界でスピードスターになることを目指す2人。城福監督が「(日常から)妥協せずに(この2日間と)同じイメージを持ってやることができるか」と語っていたように、広島で得た“基準”を忘れずに日常を送り、将来、この2日間で差を見せつけられた選手たちを驚かせるような選手になる。

(取材・文 吉田太郎)

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