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“大会MVP”は、あの10番。“ユース教授”安藤隆人氏が選ぶ「インターハイで輝き放った」11傑

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安藤氏が“大会MVP”と認める活躍、山梨学院高の優勝の立て役者となったFW宮崎純真。(写真協力=高校サッカー年鑑)

 平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」サッカー競技(インターハイ、三重)は8月13日に決勝戦を行い、山梨学院高(山梨)が初優勝を飾りました。参加55校が熱戦を繰り広げたインターハイ。“ユース教授”ことサッカージャーナリストの安藤隆人氏に同大会で印象的なプレーを見せた11人を紹介してもらいます。

安藤隆人氏:「山梨学院の優勝で幕を閉じた三重インターハイ。“異常気象”と言える過酷な三重の地で輝きを放った11人を選んでいきたい。この選考はあくまで筆者が見た試合でのセレクトのため、1、2、3回戦で敗れたチームすべてを網羅出来ていませんが、見た中で輝いた選手をセレクトしました。ポイントは『伸び』を感じた選手。他にも素晴らしい選手は沢山いましたが、この11人は非常に印象深い存在でした」

GK中川真(徳島市立高、2年)
「11人の中で唯一、初戦敗退の選手を選んでみた。今大会は小柄なGKが多い中で188cmの長身を誇り、ハイボールには抜群の安定感を誇る。俊敏性もあり、幅広い守備範囲を築き上げて、ゴールに鍵をかける。今後経験を積めば、もっと面白いプレーを見せてくれるはず。期待値を含めての選出でもある」

DF福島隼斗(大津高、3年)
「対人の強さとカバーリングの上手さなど守備面は相変わらず安定感は抜群。今大会で一番光ったのは、キックの精度だ。CBの位置から長短のパスを前線、サイド、ボランチにズバズバと通す。同サイドへのボール、逆サイドへのボールを絶妙なタイミングで通して行くパスの精度は、今大会でも群を抜いていた。さすがJクラブが獲得に乗り出す選手であることを証明してみせた」

DF内田拓寿(桐光学園高、3年)
「クレバーでゲームの流れがしっかりと読めるCBだ。FC多摩ジュニアユース時代からチームメイトの望月駿介と共にCBコンビを組み、阿吽の呼吸を見せた。桐光学園の武器の一つであるセットプレーでも、ヘッドの強さを発揮。相手の脅威となり続けた」

DF大石悠介(山梨学院高、3年)
「183cmの高さとパワーを兼ね揃えたCB。制空権を握るだけでなく、前への推進力と素早い身のこなしを見せるなど、攻守において迫力を持った選手だ。決勝の桐光学園戦ではパワープレーに出て、後半アディショナルタイム5分にロングボールに競り勝って、右サイドを突破。宮崎純真の劇的同点弾をアシストしてみせた」

DF中村拓海(東福岡高、3年)
「チームは3回戦で敗退と、結果を残せなかった。彼のプレーもハイパフォーマンスとは言えなかったが、初戦の矢板中央で見せた2つのプレーは大会を通じて『モノ』が違った。6分に見せた右からのカットインから右アウトサイドのクロスと、23分に見せた矢板中央のカウンターを阻んだシーンだ。後者のシーンは右サイドバックが逆サイドの左サイド奥まで走ってインターセプトをしたもの。東福岡のCKのときに攻撃だけでなく、守備意識を高く持ち、「こぼれた瞬間、逆からカウンターを受けると思った」とすぐに判断して、持ち前のスピードで猛プレスを掛けて行った。この圧巻のプレーは、Jクラブが争奪戦を繰り広げるほどの存在であることを証明してみせた」

MF小森飛絢(富山一高、3年)
「神出鬼没のアタッカーは、常にバイタルエリアの『点を獲れるポジション』を探しながら動き、見つけた瞬間に静かに入り込む。決してオーバーなアクションを起こさず、まるでハイブリッドカーのように相手の間隙に入るオフ・ザ・ボールの動きは秀逸だ。味方も常に彼がどこにいるか、どこに行こうとしているのかをチーム戦術として理解しているため、良質なボールが届く。フィニッシュの精度も高く、自慢の左足から放たれるシュートはまさに正確無比。初戦の高松商戦でハットトリックを達成すると、2回戦の阪南大高で1ゴール。3回戦の長崎日大戦でもハットトリックを達成。チームは準々決勝で桐光学園に0-5で敗れてしまったが、大会得点王に輝いた」

MF中村洸太(桐光学園高、2年)
「豊富な運動量を誇り、中盤をところ狭しと動き回る力はもちろん、試合の流れを壊さないプレーが光る。ボールを受けるポイントを理解しており、味方がボールを持ったら、常に視野に入るポイントに動いて、味方の選択肢を増やしていた。さらにワンタッチプレーが正確で、無駄なボール保持をせずにシンプルに周りにはたいて、中盤の潤滑油ともなる。あるベテランカメラマンを持ってすら「あの8番(中村)は一番写真が撮り辛い選手」と言わしめるほど、カメラフレームに収まってくれない。常に細かいポジション修正を加えながら、動き続けられる選手だ」

MF原田虹輝(昌平高、3年)
「今大会で『覚醒』した選手の1人。『ドリブル出来るボランチ』として、昌平の中盤を活性化させた。ボールを持ったら時間を作りながら、ただ周りに展開するのではなく、ドリブルで一気にアタッキングサードまで運んで行く。時には縦パスを打ち込んで、猛然とダッシュし、リターンパスをもらってゴールに迫るプレーもする。準々決勝の大津戦の決勝ゴールはまさにその形で、クリアミスを拾ってからボールキープで時間を作った後に、縦パスを打ち込んで一気にギアアップ。ペナルティーエリア内左に潜り込んで冷静にゴールに沈めた。準決勝の桐光学園戦でも、相手にとって一番の脅威となり続けた。Jスカウトも当然のように色めき立った存在となった」

FW宮崎純真(山梨学院高、3年)
「文句無しの“大会MVP”だ。彼の武器は点を獲る力にある。DFラインをブレイクするプレーを得意とし、常に相手DFラインと駆け引きをしながら、間でボールを受けたり、裏へ抜け出したりと、持ち前のスピードを多岐に渡って活かしてボールを引き出す。勝負強さも魅力で、決勝の桐光学園戦でも相手の厳しいマークに合いながらも、常にゴールに迫る動きを繰り返した結果、劇的な同点弾を生み出した。決勝点のオウンゴールも彼の左突破からのシュート性のクロスから生まれたもの。真夏の三重で躍動感抜群のプレーを披露した」

FW西川潤(桐光学園高、2年)
「もし桐光学園が優勝をしていたら、“大会MVP”は彼だっただろう。それほど強烈なインパクトを残した。ドリブルして良し、フリーランニングして良し、パスも出来て、シュートも上手い。攻撃センスの塊である彼は、今大会でその能力を存分に見せつけた。特に準々決勝の富山一戦で見せた2点目のゴールは、ハーフライン付近からGKを含め5人をぶち抜いて決めたもの。準決勝の昌平戦でもDFラインに出たボールを驚異的な加速力でDFを置き去りにして決めた。『久しぶりにワクワクする存在が現れた』とJクラブのスカウトが色めくのも当たり前の活躍だった」

FW久乘聖亜(東山高、3年)
「京都のエレガントなアタッカーは、昨年追った大怪我から復活のときを迎えた。初戦の尚志戦は動きがまだ重かったが、準々決勝の三浦学苑戦では彼本来のプレーを見せてくれた。華麗なステップワークから、滑らかにボールを運んで行くドリブルと、左右両足から繰り出されるシュートや正確なパスを随所に見せてくれた。0-1で迎えた66分には右足でゴールを決めると、後半アディショナルタイム3分には右サイドからドリブルで中央へ切れ込んで、DFを引きつけてからフリーになったDF飯田敏基へスルーパス。『決めて下さい』と言わんばかりのお膳立てで、飯田の決勝ゴールをアシストした。チーム初のベスト4はエースの復活が大きく作用したのは間違いなかった」

執筆者紹介:安藤隆人
 日本列島、世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。育成年代を精力的に取材する“ユース教授”。主な著書は『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』『壁を越えろ 走り続ける才能たち』(いずれも実業之日本社)、『高校サッカー聖地物語』(講談社)など
●【特設】高校総体2018

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