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ヘディングは苦手と話した少年が関川と対等に渡り合うまでに…三國ケネディエブスの「6年間の集大成」

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喜びを爆発させるDF三國ケネディエブス(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.14 選手権決勝 青森山田高 3-1 流通経済大柏高 埼玉]

 DF三國ケネディエブス(3年)は常々、「6年間の集大成を見せたい」と話していた。東京都東村山市出身だが、小学校を卒業すると、2歳年上の兄を追いかけて青森へ。「きついことだらけだったけど、人生の宝物になった」という6年間を青森山田で過ごした少年は、Jリーグへの入団を内定させる世代屈指のCBとして日本の頂に立った。

 中学時代から身長190cmを超えるケネディは、当時から世間の注目を集めていた。第46回全国中学校サッカー大会では檀崎竜孔とWエースで得点王を獲得。全国ネットの番組で取り上げられることもしばしばだった。

「取り上げてもらえることは嬉しいことだった。その反面、情けないプレーが出来ないという気持ちが強くなった。もっともっとやろうという強い気持ちが持てるようになりました」

 ケネディは世代別日本代表にも選ばれるなど、順調に階段を上っていた。だが中学から高校に上がると、壁を感じるようにもなった。このままではいけない。自身が高校2年生になった春に一大決心。黒田剛監督に相談することになる。

「CBをやってみたい」

 最初は景色が180度変わったことで戸惑うことも多かったが、半年ほど経つとようやく形が見えてきたという。「監督やコーチにガツガツ教えてもらった。あとは先輩の小山内(慎一郎=慶大)さんとか蓑田(広大=法大)さんに教えてもらったから今の自分がある。感謝の気持ちでいっぱいです」。

 CBへの転向は急成長を生んだ。18年に入ってU-18日本代表に入って世代別代表に復帰すると、同年7月にはアビスパ福岡への入団内定を勝ち取った。「最初はFWでもCBでもどっちでも変わらないんじゃないか」といった声もあったというが、自らの努力で夢を引き寄せた。

 追いかけ続けた背中がある。兄の三國スティビアエブス(順大)は2年前、左SBのレギュラーとして初優勝を経験した。中学時代から夢と話していた高校選手権で兄と同じピッチに立つことは叶わなかったが、同じ高校3年生になったときに肩を並べる結果を残した。

 決勝の舞台、埼玉スタジアムにはそんな兄も姿を見せていた。この日は成人式の予定があったが、「成人式よりこっちでしょ」と弟の雄姿を見守りにやってきた。6人兄弟で高校生の長女はバスケットボール部の練習のために来ることが出来なかったが、3人の弟妹、そして母とともに会場にやってきていた。

 今大会は連絡を入れないようにしていたが、準決勝でPKを外したあとは、さすがに心配になってLINEを入れたという。弟も「冷や冷やさせんなよ!決勝頑張れよ!」と励ましがあったことを明かす。「兄弟そろって優勝することは滅多にないことだと思う。応援してくれてありがとう、俺もやったぞと伝えたいです」。

 いよいよ今春からは思い出の詰まった青森の地を離れ、福岡に拠点を移してプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせる。3年前は「実はヘディングが苦手」と明かしていた少年も、この日は鹿島アントラーズへの入団を内定させるDF関川郁万(3年)を相手にしても「対等にやれたかな」と胸を張れるほど自信もつけた。「人生の宝物になる6年間」を終えた大器が、次のステージに進む。

(取材・文 児玉幸洋)

●【特設】高校選手権2018

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