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[新人戦]涙の敗退を必ず今年の糧に。東福岡MF荒木主将「自分が絶対にこのチームを日本一にしてみせます」

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今年、東福岡高の10番を背負うMF荒木遼太郎主将

[2.18 九州高校新人大会準々決勝 東福岡高 1-1(PK3-4) 大津高 大津町運動公園競技場]

 PK戦5人目、東福岡高の10番を背負うMF荒木遼太郎主将(2年)は右足シュートを止められると、顔を覆ってPKスポット付近に倒れ込み、しばらく動くことができなかった。エースはチームメートに抱き上げられてハーフウェーラインへ。大津高5人目のシュートがゴールネットを揺らして敗戦が決まると、荒木ら東福岡の多くの選手たちはピッチに突っ伏して涙を流していた。

 東福岡は昨年の決勝で大津に敗れて準優勝。選手たちは宿敵・大津にだけは絶対に負けられないという思いを持っていたという。特に熊本出身の荒木にとっては特別な相手。準々決勝で対戦することが決まり、気持ちは自然と高まっていた。登録身長170cmと決して大柄ではない荒木だが、1ボランチとして守備面で奮闘し、相手ボールを一人で奪い取るシーンも。得意の攻撃面ではキック精度の高さを示すシーンこそ少なかったが、相手が2人がかりで奪いに来てもいなしてボールを前進させるなど、1ランク上のプレーを見せ続けていた。

「この試合に関しては足が攣ってとか関係なく、前半から飛ばして全部自分がセカンドボール取ったり、守備したり、そういう部分でチームを良い方向に持っていければいいと思っていた。本当に九州大会で一番というほど特別な試合で、懸けていたので負けて本当に悔しい気持ちです」。打倒・大津が叶わず、東福岡は涙で熊本を去ることになった。

 東福岡の森重潤也監督は今年のチームについて「素直さがある」と説明する。そのチームを引っ張る存在が荒木だ。昨年はU-16日本代表としてAFC U-16選手権優勝を経験し、名門で先発出場を続けるなど周囲も認める存在に。ただし、この試合は懸ける思いが強すぎたのかもしれない。PK戦4人目でGK野見山大(2年)が止めて3-3に。だが、直後のPKでは普段から蹴ってはいけないと言われている高さにシュートを打ってしまった。抜群のキック精度を誇る荒木がまさかの失敗。「冷静になれていなくて、相手の止めやすいところに正直に蹴ってしまった」と唇を噛んだ。

 九州新人大会は優勝を勝ち取ることを目指すことと同時に今、自分たちに何が足りないのかを確認する場でもある。1-0の後半アディショナルタイムに追いつかれ、PK戦でも主導権を握り返すチャンスを逸した。それだけに森重監督は「自分たちはまだまだと思ってくれれば良い」とコメント。この試合はU-17日本代表歴を持つCB丸山海大(2年)や快足SBモヨ・マルコム強志(2年)が怪我で不在だった。結果はベスト8敗退。その中で荒木、そして東福岡イレブンは足りなかったと感じた部分を磨き、春の本格シーズン開幕を迎える。

 今冬の選手権では同学年のFW西川潤(桐光学園高)やFW染野唯月(尚志高)、MF武田英寿(青森山田高)が注目を集め、日本高校選抜入りしている。彼らにも負けない力を持つ荒木は選手権で巧さを発揮していたものの、インパクトを残す活躍や上位進出をすることができず。本人も彼らを追う立場であることを理解している。今年、彼らと直接対決することになればボランチの自分が止めて、攻撃をコントロールして得点に結びつける意気込みだ。

「自分が悪ければチームも悪くなったり、そういう部分があるので、本当に責任のある行動だったり、プレーで示して行けたら絶対にチームは付いて来ると思う。自分が絶対にこのチームを日本一にしてみせます」。注目エースはこの日の悔しさを忘れず、ライバルたち以上の成長を遂げて“赤い彗星”東福岡を再び全国の頂点へ導く。

(取材・文 吉田太郎)

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