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常勝軍団鹿島のブレないスカウト力、スカウト部長が明かす“一貫性”

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鹿島は大学サッカー界のエースFWである上田綺世の獲得に成功した

 常勝軍団・鹿島アントラーズがまたもアマチュアサッカー界のホープの獲得に成功した。法政大のFW上田綺世。複数のJクラブによる獲得競争が繰り広げられていたが、大学2年生の段階で、2021年の入団内定を勝ち取った。

 この早期決定には昨年度より変更となったJFA・Jリーグ特別指定選手制度の変更が大きい。それまではクラブの申請があれば特別指定選手として受け入れることが出来たが、昨年度からは入団内定がなければ受け入れることが出来なくなったからだ。

 この変更には同制度が近年、囲い込みに繋がっていた状況を改善するための狙いがあった。しかし一方で2年、3年後の入団内定を決めることへのリスク。怪我をしても獲るのか、監督の交代があっても獲るのかといった懸念も多く聞こえてくる。

 だが鹿島で1994年からスカウト業に従事。FW柳沢敦やMF小笠原満男ら錚々たる選手を獲得してきた椎本邦一スカウト担当部長は、この流れを歓迎する。「確かにリスクもある」とは認めるものの、レベルの高い環境に早く適応することこそが選手個人のレベルの向上につながり、クラブの発展につながると信じているからだ。

 また上田の入団会見に同席した椎本氏は、上田の将来について、「日本代表、そしてヨーロッパで活躍する選手になってほしい」とも話した。入団内定会見で将来の放出の可能性を語る。常にプレイヤーズファースト。“異例”とも言える発言に「言っちゃったのはまずかったかな」と同氏も頭をかいたが、「クラブとしては厳しいけど、活躍して代表とかに入ってもらえればいい」と、それだけの可能性のある選手を獲得しているというしっかりとした自負もある。

 選手の獲得はスカウトの役割。これまで多くの名選手を獲得してきた中で、崩すことのなかった信条だ。強化部でその年の方針を確認すると、目をつけた選手にアタックをかける。フロントもスカウトの眼力を信じ、獲得にゴーサインを出す。これまで監督が代わってサッカースタイルに微妙な変化はあっても、決してブレさせることはなかった、常勝軍団の根幹をなす考えだ。

 だからこそ、獲得候補選手を練習参加させたとしても現場の監督に獲得の是非を求めたりはしないという。「そこで決められるんであれば、スカウトなんていらないじゃない」。昨年、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制し、20冠の節目を迎えた鹿島。その礎を築いてきた名スカウトが明かす一貫性に、強さの一端を見た。

(取材・文 児玉幸洋)

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