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平成から令和へ デフフットサル日本代表が世界一にむけて「自主合宿」を実施

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金尾コーチ(左)の指示を手話を通して伝える東海林直広主将(右)

 11月にスイスで行われるワールドカップ(W杯)で世界一を目指すデフフットサル日本代表が平成最後の30日、東京都江戸川区で自主合宿を始動した。令和を迎えた後の5月2日まで3日間行われる。日本代表主将の東海林直広が選手全員の気持ちをこう代弁した。

「(合宿中に)時代は終わって新しい時代がはじまりますが、平成のうちにアジア2位にはなれました。時代が変わるので、デフフットサルの時代もこれを機に変えたい。(前回W杯を制した)『イラン1強』を変えて、日本が世界一になって新しい時代を作りたい」

 W杯本番まであと3回、日本ろう者サッカー協会主導の代表合宿は組まれている。しかし選手たちは「W杯で勝つには、それだけでは数が足りない。月に1度は集まりたい」と希望。協会の予算は限られており、これ以上回数を増やすことは簡単ではない。そこで選手たちが自ら立ち上がった。

 協会公認ではなくても、合宿を開くことはできる。自分たちで何とか実現するため、選手自ら資金集めに奔走した。2017年ごろから選手主導のプロジェクト「Our Vision」を立ち上げ、協賛企業を募り、オリジナルTシャツを販売して集めたお金を、合宿運営費に回している。Tシャツだけで100枚以上売り、それだけで30万円以上。協賛企業からも30万円以上集め、何とか赤字になることなく、運営できている。東海林が続ける。

オリジナルTシャツの背中には、支援してもらっている会社名等がズラリ

「今年のGWは大型連休ですが、協会主催で合宿を開くことができなかったので『だったら自分たちで集まろうよ』ということになりました。自主合宿はもう10回以上開催していて、今回が初めてではありません。当初、世界一になるためのフィジカルのベースやトレーニング方法を共有することが目的でした。(トレーナーの)橋本(賢太)さんに任せるのではなく、選手で共有することで、選手の自主性も高める狙いがありました」

 この日も4月上旬に兵庫県内で行われた日本代表合宿に参加した選手がほぼ全員、参加した。日本代表・川元剛監督は仕事の都合で今回は欠席したが、金尾直紀コーチの指導の下、約2時間半、熱のこもった練習を行った。前回W杯優勝国で、2月のアジア予選で2戦2敗した打倒・イランへの思いは並々ならぬものがある。東海林が続ける。

「もう、負けたくないですから。2月にアジア予選で準優勝して、力を入れてきたフィジカルは世界でも戦えるレベルにあるとわかりました。今後はフットサルの経験値や戦術的な部分に力を入れたい。今日もフットサルの経験を積んできた人と、浅い人で理解力に差がある。その差を埋めながら、チームとしてのベースを上げていきたい」

 仮に十分に環境が整わなくても、組織にせいにするのではなく、自分たちで知恵を絞って改善する。新時代の若武者はそうやって世界の頂点を狙う。

【自主合宿に参加した日本代表選手】
GK折橋正紀(埼玉・AVANSOL/SORDO)
GK千葉駿介(東京・スペリオ城北)
FP設楽武秀(埼玉・スプリズ)
FP宗澤麟太郎(埼玉・AVANSOL/SORDO)
FP東海林直広 (埼玉・AVANSOL/さいたま)
FP吉野勇樹(埼玉・AVANSOL/SORDO)
FP松本弘(埼玉・AVANSOL/SORDO)※
FP土屋祐輝(千葉・バルドラール浦安デフィオ)
FP吉岡成哲(埼玉・AVANSOL/SORDO)※
FP野寺風吹(関東1部・筑波大学蹴球部、VELDADEIRO/W.F.)
FP仲井健人(レプロ東京)
FP風間隆由(埼玉・烏天狗フットボールクラブ®)
FP鎌塚剛史(無所属)
【注】()は所属先

(取材・文 林健太郎)

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