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[MOM610]駒澤大MF米田大介(3年)_「いい加減だったのは2018年まで、19年からやり直そう」

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MF米田大介

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.6 関東大学L1部第5節 駒澤大3-1専修大 川口]

 出番は突然やってきた。

 試合序盤に左サイドハーフのDF深見侑生(4年=駒澤大高)が負傷。担架で外に運び出されると、すぐにMF米田大介(3年=浦和東高)がピッチへと送り出された。

「準備なんか全然していない。ダッシュを2、3回しただけ」という状態での投入。まったく予想外もしていなかった状況に「勝負したかったけど、試合にうまく入るだけで精一杯」。見どころを作るどころか「前半は、いったいどこで何をしていたのか」と秋田浩一監督も振り返るていたらくだった。

 劇的に変わったのは後半に入ってからだ。前半終了間際、専修大に先制点を許した駒澤大だったが、後半は風上に立つ優位な状況。「前半の失点したことで、逆にやることがはっきりした」と秋田監督。サイドからの攻撃の徹底を指示した。

 その言葉を受け、左サイドで躍動したのが米田大だった。「迷ったら仕掛けろ」「倒れてもいいからいけ」そんな言葉に送り出され「相手の右サイドバックのところがチャンスだと言われていたので、迷わず仕掛けた」。ドリブルで前線に上がってはゴール前にクロスを上げ、また下がってはスペースを見つける。「それがサイドの選手の役目だから」と本人は胸を張り、しかし「今日は涼しかったから動けました」と茶目っ気たっぷりに答えた。

 根気よく上げ続けたクロスはゴールに結びつかなかったが、アディショナルタイムに突入した2分、自らドリブルでゴール前に切れ込むと、「最初は縦にいこうと思っていたが、中にディフェンスが入ってきたので」と、得意ではないという右足で切り替えしてシュート。これがゴールに突き刺さり、ダメ押しの3点目となった。

「1、2年のころはいるかいないかわからなような状態だった」との秋田監督の言葉どおり、米田大の昨年度のリーグ出場はゼロ。トップチームどころか「下のほうのカテゴリーで、試合に出てもいなかった」とは本人談。しかし、まったくトップへの見込みがなかったかといえば、そうではない。

 1年時には第2節早々にリーグ戦デビューをはたしている。そのまま順調にトップに定着するかと思われたが「試合にでたら“もういい”という気持ちになった。レベルが高すぎて、自分なんかが出続けるのは無理だと思った」と、練習もなげやりに。2年時の状況は当然といえば当然の結果。しかし今年の初頭に「いい加減だったのは2018年まで。2019年から気持ちも一新してやり直そう」と決めた。

「ウチには珍しいドリブラータイプ」と秋田監督がいえば、本人も「自分にはドリブルしかない」と応える。駒大の新しい攻撃のアクセントになり得るが、「まずは試合にきっちり出られるようにならないと」。

 そのためにも「数字にはこだわらないが、もうちょっと得点とアシストがほしい」と米田大。まずは降って湧いたようなチャンスを確実なものとし、レギュラーに定着したい。そして昨年はスタンドで悔しい思いで見ていた、インカレ決勝の場に立ち、今度こそ優勝を――。令和に生まれ変わった男が、平成の雪辱を目指す。

(取材・文 飯嶋玲子)

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