beacon

「自己紹介スケッチブック」で売り込み! デフサッカー日本代表FW林滉大のドイツ移籍が決定的に!

このエントリーをはてなブックマークに追加

ドイツ移籍が決定的になった林滉大

 難聴の人がプレーするデフサッカー日本代表FW林滉大がドイツ7部のクラブへ移籍する可能性が高くなったことが明らかになった。契約期間は7月1日から1年間の契約になる見通し。林はクラブ名こそ明かさなかったが、ビザ取得などの手続きのため、一時帰国していた。

「今はスタートラインに立った気持ち。選手としてどれくらい成長できるのか楽しみです」

 ドイツ7部リーグは、日本に置き換えると上から6カテゴリー目の地域2部や都県1部に相当(J1、J2、J3、JFL、地域1部、地域2部、都県リーグ)。林が移籍する可能性があるクラブには現時点で林のほかに障がいがある選手はいない。現地の活動費は、所属するメルカリが支援する。

 3月にドイツに渡り、契約した代理人に自分のプレーを見てもらい、代理人を通して現地クラブとコンタクトをとり、7部の3,4クラブの練習に参加した。林には7部より上のクラブに入る選択肢もあったが、障害に理解があるクラブで試合に出ることを通して成長する道を選んだ。

 林が見せたのはプレーする姿だけではなかった。難聴に加え、ドイツ語をまだ自在には操れない林は、自分の現状をクラブに理解してもらい、それでもチームに加わりたい熱意を伝えるため、自作のスケッチブックを使用し、ドイツ語で自己紹介や自分の状況、聞き取りづらいことで何ができないのか、そのハンデをどうやって乗り越えているかを、伝えた。

「相手が持つであろう不安を消したかったんです。実力はすぐに認めてもらえたので、監督や選手から障害の理解を得て、お互いの不安を解消できたことが加入の決め手です」

〈プレー中〉●後ろからの指示●笛の音 私はこれらが聞こえません (提供:林滉大)

 正式契約の手続きが完了すれば、7月1日の始動日にあわせてドイツに渡る。8月に28試合あるリーグ戦が開幕し、さらにカップ戦もあるため、年間40試合近くほど見込まれる。林が決意を明かす。

「監督からは前線でスピードを活かしたプレーを期待していると言われました。日本ではDFの背後に走りこんで抜き去るプレーが得意でしたが、ドイツに行ってからはドリブルを意識しています。タテに強い選手、突破する選手が好まれているので、生き残りには必要かな、と。日本ではそこまで本気で当たってこないような場面でも、ドイツでは思い切り当たってきます。そういう中で、ドイツ人相手でも競り負けないフィジカルを手に入れたい。10ゴール10アシスト以上の結果を残したいです」

 ドイツで「サッカーでメシを食える」のは4部と5部上位あたりからが多いという。林の究極の目標はドイツでプロ契約を結ぶこと。夢の扉を1枚開けた林は、まだ何枚も存在する「扉」を1枚ずつ開けて、日本の障がい者サッカーの常識も変えていく。

(取材・文 林健太郎)

●デフ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら

TOP