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強風雨の中、延長戦決着となった茨城名門対決。明秀日立が立て続けの3年生投入から逆転勝ち!

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勝利の瞬間、明秀日立高イレブンが喜びを爆発させた

[6.15 インターハイ茨城県予選準決勝 明秀日立高 2-1(延長)鹿島学園高 ひたちなか市総合運動公園陸上競技場]

 激闘となった茨城名門対決は、明秀日立が制す――。15日、令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)茨城県予選準決勝が行われ、前回大会優勝の明秀日立高と同準優勝の鹿島学園高が激突。延長戦の末、明秀日立が2-1で逆転勝ちし、決勝(対水戸商高、19日)へ進出した。

 設置されていたベンチがひっくり返り、除去されるほどの強風雨の中で行われた茨城名門対決。この日の第2試合となった一戦は、ピッチのところどころで水溜りができ、ドリブルすればボールが意図しない形で止まるなどコントロールすることが難しい状況だった。

 前半、風上に立ったのは明秀日立。だが、風下の鹿島学園がセットプレーで先制する。9分、CB遠藤聖矢(2年)が左サイド後方から蹴り込んだFKをFW中村大胡(3年)が頭で合わせて1-0。リードを得た鹿島学園は割り切ったサッカーで時間を進めていく。

 相手からボールを奪うと、DFラインの背後へ蹴り出す攻撃を徹底。そこへ繰り返しスプリントするFW磯部直也(3年)が追いつき、抜群の馬力とスピードを活かしたキープからCK、FKを獲得して見せる。そして、セットプレーから追加点を狙った。

 明秀日立は前半、MF楠原秀翔(2年)が左サイドからドリブルで仕掛けるなどシーンもあったが、相手の攻撃に押し下げられてしまい、なかなかエースFW大山晟那主将(3年)ら前線までボールを運ぶことができない。前半は、雨中でも運動量を発揮して2対1の局面を作り続けるなど、鹿島学園が隙の無いサッカーを見せて1-0で終了。一方、難しい展開となった明秀日立はこの日、1、2年生6人が先発していたが、萬場努監督は前半27分から後半16分にかけていずれも下級生に代えて3年生4人を次々と投入していく。

「2年生も頑張っていましたけれど、こう(いう環境、状況)なったら最後は上級生が力を発揮するだろうと思ったので、ここは3年生をどんどん交代で切って、『彼らでダメだったらしょうがない』、というくらいに割り切れたので」と萬場監督。4バックから3バックへとシステムを変えて前へ重心を移し、後半25分には本来CBの石井涼雅(3年)を中盤に投入する。

 それまで中盤の攻防は、競り合いに強い長身MF仲佐友希(3年)ら鹿島学園が優勢の展開。だが、明秀日立は「中盤で球を拾えればもっと攻勢に出れると踏んで。(石井は)気持ちの強い子なので、ここがハマれば何とかなるんじゃないかと思いました」(萬場監督)と中盤に厚みと強さを加えたこと、また3年生の勝利への執念によって徐々に前に出る回数、クロスの本数を増やしていく。
 
 そして32分、明秀日立は左スローインから交代出場FW藤原裕也(3年)がクロス。これを同じく交代出場のFW菊池伶桜(3年)が胸トラップからの左足ボレーでゴール右隅を破った。大山は「ハーフタイムに交代カード切った時に(下級生に代わって)3年生が出てきて、やっぱり俺ら(3年生)がやらないといけないなと。とにかく相手よりもやろうというのがありました」と振り返っていたが、3年生たちが思いを結実させてもぎ取った1点。選手たちは応援席まで駆け寄り、大応援を繰り広げていた控え部員たちと喜びを分かち合っていた。

 鹿島学園はここから攻撃カードを切り、もう一度パワーを持って勝ち越しを目指す。だが、明秀日立は中盤から3バックの左へ下りた石橋衛(2年)や石井が好守を見せたほか、DF鎌上翔平(3年)、DF高橋琉偉(3年)中心に踏ん張って得点を許さない。

 1-1のまま突入した延長戦の後半4分、明秀日立は左クロスのこぼれ球を拾った藤原が縦に割って入ったところでPKを獲得。これをキッカーの菊池が左足で中央へ蹴り込んで試合を引っくり返した。そのまま2-1で試合終了。激闘を制した明秀日立の選手たちはピッチを駆け回って勝利を喜んだ。

 法政大へ進学したCB高嶋修也ら昨年のメンバーに比べると、飛び抜けた選手はいない。それでも、萬場監督が「この学年の子たちは本当に一体感があって、サッカーを離れた時に良い子なので一体感は大きな武器だと思います」という明秀日立は一体となって今年2敗の鹿島学園に逆転勝ち。連覇に王手を懸けた。

 明秀日立は17年度の選手権でベスト8。昨年度は茨城3冠を達成し、インターハイでベスト16まで進出している。茨城の新たな名門、そして全国の強豪に近づきつつある中で迎えた今年、県新人戦は準優勝、関東大会予選も準決勝で敗退していた。大山は「(新たな名門という)その責任感というのは3年生も思って戦っていると思います。(チームとして)上がってきている時に全国出れなくて、落とすというわけにはいかない」。その意地、劣勢でも諦めずに戦い抜いた姿勢が白星を引き寄せた。

 2連覇まであと1勝。大山は「全員で優勝して、自分たちが夏に沖縄に行けるように、笑って終われるようにやりたい」と宣言した。関東大会予選準決勝で敗れている伝統校・水戸商にもリベンジして“今年も”、明秀日立が全国へ進出する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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