beacon

さすがキャプテン!ユニバー代表FW旗手怜央が韓国撃破の一撃「気持ちで押し込みました」

このエントリーをはてなブックマークに追加

韓国戦で決勝点を決めた旗手怜央

[7.9 ユニバーシアード大会準々決勝 日本2-0韓国]

「負けるわけにはいかない、勝つしかない」。ユニバーシアード代表の主将FW旗手怜央(順天堂大4年/川崎F内定)は、準々決勝の韓国戦に臨むにあたっての思いをそう述べていた。

 ユニバーシアード代表候補を兼ねる全日本大学選抜は、この春に『DENSO CUP SOCCER大学日韓(韓日)定期戦』で韓国と対戦し、敗れている。だからこそ「2度、同じ相手に負けるわけにはいかなかった」。リベンジの舞台は、ユニバーシアードという国際大会の準々決勝戦。世界一を獲るためには、この“宿敵”に今度こそ勝たなければならない。

 旗手自身も“日韓戦”になにかと縁がある。1年次にはアウェーの日韓定期戦でスタメン出場するも後半5分にまさかの退場。旗手の日韓戦デビューは悔しさだけが残る結果となった。しかし、翌年に日本で開催された日韓定期戦ではダメ押しの4点目を挙げる活躍で、“日韓戦”に対する悪いイメージを払拭した。

 そしてアウェー初勝利を目指して敵地に乗り込んだ今年の日韓定期戦で、全日本大学選抜は旗手のゴールで先制。だがその後セットプレーとPKで逆転負けを喫してしまった。だからこそ、誰よりも強い気持ちで“4度目の日韓戦”に臨み、前半から積極的にシュートを放った。

 旗手は初戦から3試合連続のスタメン出場。前の試合では45分の出場にとどまったといえ、中1日の連戦で、後半に入るとさすがに疲れの色が見えていた。それでも誰よりも気迫をもって韓国ゴールを狙う旗手を下げるタイミングは「非常に難しかった」と松本直也監督。ようやくFW小柏剛(明治大3年)を投入する準備を始めたとき、試合が動いた。

 後半34分、ボランチのMF山本悠樹(関西大4年/G大阪内定)からMF三笘薫(筑波大4年/川崎F内定)へと中盤でパスがつながり、ゴール前に回り込んできた旗手にボールが渡る。「ほとんどコースはなかったけれど、ニア上なら(GKが)取れないと思って。ゴールは見えていなかったけれど、自分の感覚を信じて、気持ちで押し込みました」。ついに旗手が、韓国のゴールをこじあけた。

「誰と交代するかまではわからなかったけれど、(小柏)剛が準備しているのは見えていた。交代するなら自分かな、とも思っていたので、なんとか最後に点を決めてやろうと」。旗手は後半38分に小柏と交代でベンチに下がった。

 最後の最後のチャンスに決めた貴重な先制点。松本監督も「さすがキャプテンだと思った」と顔をほころばせる。

 ユニバーシアード代表を主将として引っ張る旗手だが、これまで主将を努めた経験はほとんどない。本人は「主将のキャラではない」と笑うが、全日本大学選抜で主将をまかされるうちに「主将という立場から逃げることなく、しっかりと向きあっていこうと思った」。所属する順大でゲームキャプテンをまかされることもあり「去年あたりから、チームを引っ張っていくのは自分だと考えるようになった」という。

 その結果、目に見えて視野が広がり、メンタルの強さが目立つようになった。もとから得点への嗅覚は高かったが、大事な場面での得点力がより一層磨かれた。トゥーロン国際大会でも見せたように、鋭いパスから得点をアシストすることもある。順大で下級生たちが次々と得点を重ねているのは、旗手への信頼感によるところも大きい。ありていに言えば“頼れる男”に成長したのだ。

 この試合では、日本を二連覇に導く大きなゴールを叩き出した。まさに主将の仕事を全うしたが、本人は「まだまだ」だと首を横に振る。

「チームも自分も、優勝して初めて評価される。支えてくれるチームメイトのためにも、まだまだがんばりたい」

 日本の頼れるキャプテンは、次戦のホスト国イタリア戦に向けて表情を引き締めた。

(取材・文 飯嶋玲子)

TOP