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「FIFA eW杯」最終予選に挑む“日本代表”つぁくと、成長の要因は“負けず嫌い”

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「FIFA19 グローバルシリーズ プレーオフ」に挑むつぁくと

 国際サッカー連盟(FIFA)が主催する公式eスポーツ大会「FIFA eワールドカップ 2019」。その世界予選である「FIFA19 グローバルシリーズ プレーオフ」は12日から14日にかけてドイツ・ベルリンで開催され、日本からはつぁくと(Blue United eFC所属)とナスリ(横浜F・マリノス所属)が代表選手として出場する。この最後の予選を勝ち抜けば、8月2日から始まる「FIFA eワールドカップ 2019」への出場権を手にすることができる。

 サッカー好きなら多くの人がプレーしたこともある『FIFA』や『ウイニングイレブン』(以下、ウイイレ)といったサッカーゲーム。コントローラーを握って選手を操り、一瞬の隙を突いてゴールを狙う。実際の大会を目の当たりすれば、その迫力が本物のサッカーと遜色ないことがわかるだろう。“ゲーム”ではなく“eスポーツ”という競技に挑む青年たち。その一人であるプロeスポーツプレーヤー・つぁくと(26)にインタビューを敢行した。これまでの歩みと「FIFA19 グローバルシリーズ プレーオフ」に臨む直前の心境に迫る。

今季は国際大会を3度経験

成長の要因は“とにかく負けず嫌いな性格”

――ゲームに最初に触れたときのことを覚えていますか?
「保育園のときです。9つ上の兄がゲーム好きで、スーパーファミコンの『ドラゴンクエストV』を最初に始めました。対戦ゲームは小学生に入ってから兄と一緒に。サッカーゲームを本格的にやり始めたのは高校生で、当時は『ウイニングイレブン 2009』。高校の友達にやろうよって言われて始めました」

――当時からすごく強かったんでしょうか?
「全然ですね。そもそもサッカーは小学校でちょっとやっていたくらい。あまり知識もなく、ただ観ているだけでした。ということもあって最初は全然勝てず。当時はマンチェスター・ユナイテッドが強くてよく使っていました。クリスティアーノ・ロナウドウェイン・ルーニーカルロス・テベスなどがいましたね」

――負けると嫌になってしまいそうですが…そこからのめり込んでいった。
「とにかく負けず嫌いな性格なんです。兄に勝とうと思って、負けたら悔しくて何時間もやり込んだこともあります。気づいたら勝っていましたね。本格的に始めたのはウイイレのオンラインが始まったときで、そのときは大学生。暇な時間にオンライン対戦を始めました。ちょっとやってみようかなという感じでしたけど、まだまだ強い人いるじゃんって思いました。こうやれば強いんだ、ああやればいいのかってわかるとだんだん面白くなってきて、一人で黙々と徹夜してましたね」

大会に臨むつぁくと

画面に集中するつぁくと

プロeスポーツプレーヤー・つぁくと誕生へ

 その後、つぁくとはアルバイト生活をしながらプロへの意識を高めていく。そして、2018年11月にeスポーツチームを設立したBlue Unitedとプロ契約を締結し、2人体制チームとして活動がスタート。まだ多くないサッカーゲームのプロeスポーツプレーヤーとなった。

――プロ契約を打診されたときの心境はいかがでしたか?
「正直まだ始まったばかりの分野なので不安はありました。でも誰かが先に進まないといけないので。基礎的な部分を僕が作っていければと有難くお受けしました」

――いよいよゲームに集中できる環境に。普段はどう過ごされているのですか?
「僕はしっかり寝ないとダメな人間なんです。ぐっすり寝て朝9時に起きる。今は大会前なのでナスリくんと2、3時間くらい練習して、一人で反省する時間も1時間くらい。それで一日の練習は終わりです。がっつりやるときもまず時間を決めて、そこだけ集中してやるようにしています」

――意外と少ないんですね。トレーニングモードなどもやるんでしょうか?
「基本的には試合オンリー。そういう基礎練習は大会直前に指を温める程度ですね。これまでもほぼ実戦をこなしていくことで慣れていきました」

――ご自身のプレースタイルを教えてください。
「前線からハイプレスを仕掛けて相手のプレー時間を短くして、自分の主導権を取っていくというのがスタイルです。基本は守備から始まって、奪ってカウンター。どちらかというと守備が売りですし、そこが生命線ですね」

――得意なプレーはありますか?
「ゴール前で縦パスが入って、相手DFが詰めてくるところをキックフェイント入れて逆に行く。このプレー自体に名前はないですが、シンプルでも一番得意なプレーです」

コントローラーを握ってもらう

「eワールドカップ」への道のり

「FIFA eワールドカップ 2019」への道のりは長い。今季は「EA SPORTS FIFA 19 グローバルシリーズ」と銘打ち、2018年10月から19年5月までの期間に行われる各大会で得たポイントを合算。「PlayStation4」と「Xbox one」それぞれのランキングでの上位64名ずつが「FIFA19 グローバルシリーズ プレーオフ」に出場できる。そしてプレーオフでもポイントを奪い合い、2機種それぞれのランキングの上位16名ずつ計32名がeワールドカップの出場権を獲得する。

――今季は「FUT チャンピオンズカップ November Bucharest」、「FUT チャンピオンズカップ December London」、「FUT チャンピオンズカップ March Singapore」と3度の国際大会を経験しました。雰囲気はどうでしたか?
「会場は非常に熱気に包まれています。日本での大会は少し堅さがあるので雰囲気は違いますね。(国際大会では)本物のプロサッカーと同じように、得点が入るときの歓声が大きいんです。海外の人たちはプロ意識が高く、自分が勝つための自己表現をしっかりするので、そこは本当にリスペクトしています」

――海外は日本よりもeスポーツが盛んですか?
「ゲーム好きなプロサッカー選手も多く、メスト・エジルは「M10 eSports」という自分のチームを持っています。今回の大会にも「M10 eSports」所属の選手がいますよ。クリスティアン・フクスも自身のチームを持っていますね。そういう意味ではeスポーツは浸透しているとは思います」

――eワールドカップの前回王者はサウジアラビアの選手なんですね。強豪国というとどの国なんですか?
「サウジアラビアではFIFAが本当に盛んなんです。あとはアルゼンチンやブラジルも強い。今回一番選手を出しているのはドイツですね。最近だと、eネーションズカップではフランスが優勝しました。注目選手はアルゼンチンのニコラス選手。一度やったことがあるんですけど、本当に何もできず。FIFA界のメッシですね。Xboxでは17歳のイギリス人のテックズ選手。出る大会で軒並み優勝しているワンダーボーイです」

――今回ランキング53位でプレーオフ進出を決めました。心境は?
「プレーオフに残れたことは嬉しいです。自分の実力がどれくらい通用するのか。チャレンジャーとして挑んでいきたいです。トップレベルの選手に比べたらまだ実力差はあります。でも3月の『FUT チャンピオンズカップ March Singapore』でドイツの強豪選手に勝ちましたし、ワンチャンスはあると思っています」

――大会に臨む上で気をつけることは?
「体調管理が一番です。崩すと相当プレーの質が下がります。大会自体が予選からぶっ続けで6時間くらいやるんです。それに加えて長距離移動や時差ボケもある。意外と体力面でも厳しい戦いなので、気をつけていきたいです。あと僕は結構スロースターターで…(笑)。自分では平常運転なんですけど周りはヒヤヒヤしているので、今回は初戦を取れるように意識を高めていきます」

――最後に、改めて意気込みをお願いします。
「一緒に参加するナスリくん(昨季eワールドカップ出場)を見ていただいたらわかるように、日本も優勝、準優勝を狙える力はあります。まずはeワールドカップ出場のためにプレーオフのグループリーグ突破を目標に頑張りたいです」

(取材・文 石川祐介)

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