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ブラサカ日本代表が世界最強・ブラジル撃破のためにトライした配置転換。見えた収穫と課題

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田中章仁は配置転換されても効果的な仕事をした

[7.14 トレーニングマッチ 日本代表 0-1 ブラジル代表](岩手県遠野市)

 2020年の東京パラリンピックでメダル獲得を目指すブラインドサッカーの日本代表が14日、岩手県遠野市で事前合宿中のブラジル代表と練習試合を行い、0-1で敗れた。前半終了間際の残り43秒、日本代表が前線に2人攻めにいっていたところをブラジルは逃さず、スペースが空いたことによって一気に攻め、バホス・クレジソンが先制ゴール。この1点が結果的に決勝ゴールとなった。ブラジルの試合巧者ぶりを改めて実感し、主将の川村怜は天を仰いだ。

「残り43秒で、あそこで(選手を)2枚前線に上げる必要はなかったですね。ビルドアップで僕からのパスがつながらなくて……。(前線に)1枚上げて当てれば(パスを預けて時間を稼げば)よかった。0-0で折り返すのと、1点ビハインドで後半を迎えるのでは違う。チームとしてもったいない失点だった」

 昨年夏は日本代表がブラジルに出向き、2日連続で試合をお願いした。1日目は自由に攻撃して0-4、2日目は守備の意識を徹底して0-0。過去の対戦で唯一の引き分けとなる歴史的な一戦だったが、実際は守ることに必死で、攻めることができないことによるドローだった。しかしこの日はボールを奪ってから意図をもって攻撃に転じ、川村や黒田智成が中に切れ込んでシュート。内容は明らかに成長し、昨年の日本戦にも出ていたクレジソンに「日本は攻守ともに進歩している」と言わしめた。

 成長を示したかげに、高田敏志監督による配置転換があった。1対1の強さを見せて最終ラインを張ってきた佐々木ロベルト泉を1列あげ、2列目で攻守の要を担っていた田中章仁を最終ラインに下げた。高田監督が振り返る。

「ブラジルの特徴を考えると、ゴール前にボールを入れてくるのはわかっていたので、認知能力が高くて、人とボールを両方観られる田中の特徴を生かそうと考えました。ロベルトと黒田、川村が頑張って、田中が(こぼれ球を)拾う形はできていた。(ブラジルの攻撃陣に)抜かれても、最後にいた田中が利いていた」。

試合中に高田監督から指示を受ける黒田智成。約2年ぶりとなる対ブラジル戦ゴールを奪いたい

 試合前に狙っていた形が随所に見られただけに、前半の失点シーンの時だけ、時間帯やスコアによるチームの攻撃方法を徹底できなかったことが悔やまれた。

 今回のブラジル代表は、絶対的エースのリカルジーニョが鼻骨骨折により来日をとりやめ、6月に開催された東京パラリンピックのアメリカ大陸予選で得点王になったノナートも来日はしているが、筋肉系の負傷により明日の日本戦の出場も回避する見通し。さらに2人ほど主力が不在で、ピッチに立つ世界最強軍団はガチンコのトップではない。最近の日本代表は、6月に準優勝に終わったトルコ・アンカラカップの時もそうだが、試合前のプランをピッチで表現できる時間が圧倒的に増えても、勝負所でほころびが生まれて勝ちきれていない。その背景に、本当の意味での自信がないことによる恐怖心があるはず。自分たちの心に巣食う「見えない敵」に勝つには明日、ブラジルから金星を奪うことが何よりの特効薬だ。

≪過去対戦成績≫
①2002.11.12●0-7(韓国)
②2006.11.25●0-7(アルゼンチン)
③2007.8.1●0-4(ブラジル)
④2013.3.20●1-2(埼玉)川村怜
⑤2014.11.9●0-4(宮城)
⑥2016.6.3 ●0-5(ブラジル)
⑦2017.3.20●1-4(埼玉)黒田智成
⑧2018.8.20●0-4(ブラジル)
⑨2018.8.21△0-0(ブラジル)
⑩2019.7.14●0-1(岩手県遠野市)
【注】名前は得点者。()は会場

【日本代表メンバー】
GK佐藤大介(たまハッサーズ)
GK高橋太郎(ラッキーストライカーズ福岡)
FP川村怜(Avanzareつくば)
FP田中章仁(たまハッサーズ)
FP黒田智成(たまハッサーズ)
FP加藤健人(埼玉T.Wings)
FP寺西一(松戸・乃木坂ユナイテッド)
FP佐々木ロベルト泉 (Avanzareつくば)
FP佐々木康裕(松戸・乃木坂ユナイテッド)
ガイド 中川英治
監督 高田敏志

(取材・文 林健太郎)

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