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「攻守一体」ここに結実。名古屋U-18、クラブユース選手権初制覇! 鳥栖準Vも史上初

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名古屋グランパスU-18が日本クラブユース選手権初制覇

[7.31 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 鳥栖U-18 1-3 名古屋U-18 味フィ西]

 日本クラブユース選手権(U-18)大会は31日、味の素フィールド西が丘で決勝戦を行い、名古屋グランパスU-18(東海3)が悲願の初優勝を果たした。同じく初の決勝進出となったサガン鳥栖U-18(九州2)に3-1で勝利。2011年のJユースカップ制覇以来、8年ぶり2度目のビッグタイトルを手にした。

 名古屋U-18のチームコンセプトを問うと、監督と選手が口を揃えるのは「攻守一体のサッカー」。すなわち「90分間ずっと相手を押し込んで、もし失ってもボールをすぐに奪い返すために前からプレッシャーをかけ続ける」(古賀聡監督)というスタイルだ。

 グループリーグでは初戦、2戦目では1点しか奪えなかったが、それ以降は複数得点。大会が進むごとに「一試合一試合課題を克服して、修正して、成長してここまで来た」(古賀監督)という選手たちが、夏の集大成となる一戦でコンセプトどおりのパフォーマンスを見せた。

 前半2分、早速スコアを動かした。右サイドで前を向いたMF豊田晃大(1年)が縦にボールを送ると、ドリブルで切れ込んだMF石谷光基(2年)が相手と競り合いながら反対サイドに展開。これを受けたMF倍井謙(3年)がカットインからニアポスト際に叩き込んだ。

 対する鳥栖は前半9分、変化をつけたコーナーキックがDF大畑歩夢(3年)に通るも、フリーで放った左足シュートが不発。その後は名古屋のハイプレッシャーに圧倒されるばかりで、なかなか思うようにボールを前に進めることができない。すると14分、自陣でのミスから追加点を許してしまう。

 DF永田倖大(2年)からGK板橋洋青(3年)へのバックパスが短くなり、これを拾ったのは名古屋MF榊原杏太(3年)。飛び出した板橋の裏を突くループシュートがネットに吸い込まれ、名古屋が2点リードを奪った。さらに前半15分、名古屋は単独突破を見せたFW武内翠寿(3年)の惜しいシュートもあった。

 劣勢を打破できない鳥栖はここで交代の準備。ところが名古屋は前半32分、自陣で前を向いた榊原がドリブルで中央を駆け上がると、ボールは左サイドのDF新玉瑛琉(3年)に渡り、U-17日本代表DF中野伸哉(3年)との1対1を制して中央に優しいパス。フリーで待ち構えていた倍井が落ち着いて流し込んだ。

 準決勝の京都U-18戦でも2ゴールを決めていた倍井はこれで2試合連続の2得点。試合前の時点では、大会得点ランキングトップに立つ福岡U-18のFW石井稜真(2年)を1点差で追う形となっていたが、「得点王を狙って入った」という決勝の舞台で一気に単独トップに立った。

 鳥栖はここでようやく交代カードを切ることができ、MF西田結平(3年)に代わってMF西村洸大(2年)を投入。その後は185cmの長身FW田中禅(2年)にボールを集め、サイド攻撃からMF盧泰曄(3年)のボレー、永田のヘッドでゴールを襲ったが、GK東ジョン(2年)の好セーブに阻まれるなど無得点で前半を終えた。

 鳥栖にとっては失点を重ね、攻撃も繋がらない悪夢のような40分間。田中智宗監督は「何もできない前半」を受け、「ピッチの中でもっとやろうよ、自分たちの力を出し切ろうよ」と精神的な部分で鼓舞したという。さらにハーフタイム明け、相良を下げて準決勝で決勝弾を決めたFW秀島悠太(3年)を投入した。

 すると鳥栖は後半7分、DF松井直人(3年)の浮き球パスをMF本田風智(3年)が中盤で収めると、華麗なターンから右サイドのFW兒玉澪王斗(2年)に展開し、クロスに合わせたのは田中。これは枠を外れたものの、10分に秀島のクロスに対してニアに飛び込んだ田中が頭で合わせ、ようやく追撃の1点を奪った。

 その後は一方的に鳥栖ペースが続いた。後半13分、本田の右足シュートは右のゴールポストに当たったが、直後の14分にもセットプレーを起点に右サイドを攻め上がった盧のクロスに兒玉が頭で合わせる決定機。ところが、ここは東がビッグセーブを見せ、守護神に救われた名古屋が再び主導権を握っていった。

 名古屋は後半19分、カウンター気味に抜け出した倍井の右足シュートが板橋を強襲。25分にも武内の突破から決定機を迎えたが、永田がゴールライン上でスーパークリアを見せた。しかし、この時間帯は板橋が大活躍。28分、34分に武内が決定的なシュートを放ったが、神がかり的な反応で立ちはだかった。

 守護神の奮闘になんとか応えたい鳥栖だが、アグレッシブに対応するDF牛澤健(3年)、DF鷲見星河(2年)の両センターバックに攻撃を絡め取られ、なかなか攻めに出られない。対する名古屋は前に出る意識を失わず、DF石田凌太郎(3年)が何度も右サイドを駆け上がってさすがの迫力を披露した。

 名古屋は終了間際、DF岡崎流也(3年)とDF雨宮陸(3年)を立て続けに投入し、ベンチからチームを支えた最上級生がピッチへ。スタンドからは負傷離脱中のGK三井大輝(3年)、DF舌古圭佑(3年)、FW村上千歩(3年)、DF武井隆之介(3年)、MF松山竜也(3年)も見守る中、タイムアップの笛を迎えた。

 大会を通じてゲームキャプテンを担い、感極まった表情でガッツポーズを見せたMF田邉光平(3年)は「10年間グランパスにいて、一度も頂点を両親に捧げることができていなかった。今日ここで頂点を捧げることがうれしい」と喜びの表情。高い個人技術と献身性を併せ持つタレント集団が全国クラブユースの王座に辿り着いた。

(取材・文 竹内達也)
●第43回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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