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神奈川の名門・桐光学園が初の日本一、“最弱の世代”が“最強のチーム”に

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“最弱世代”が日本一。桐光学園高の選手たちが鈴木勝大監督を胴上げ。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.1 総体決勝 富山一高 0-1 桐光学園高 金武町フットボールセンター]

 “最弱の世代”が“最強のチーム”になった。桐光学園高(神奈川)の現3年生は1年時に関東・静岡の強豪校によって争われる「Rookie League」Aグループで神奈川県内のライバル・日大藤沢高に0-4で敗れるなどわずか1勝に終わり、10チーム中10位。Bグループ降格の屈辱を味わっている。

 入学前からAチームで10番を背負うFW西川潤主将(3年)を欠いていたことは確か。それでも、一見力のあるように見える選手たちは決定力を欠き、勝負どころで失点を重ねた。不覚にもつけられた“弱い世代”のレッテル。だが、彼らは悔しさをバネにした。

 2年時のインターハイではMF中村洸太(3年)や佐々木ムライヨセフ(3年)が主軸に食い込み、西川の大活躍もあって全国準V。その後、Aチームは県リーグへの降格、選手権1回戦での大敗も味わったが、今年、元気良く、勢いのある下級生の力も加えた彼らは見事に全国制覇を成し遂げた。

 大会後半に掛けて実力を見せつけた西川の活躍だけでなく、中盤で欠かせない存在となっていた中村や圧倒的なスピードでインパクトを残した佐々木、DFラインの中心・安久レオナルド高貴(3年)、決勝で鮮やかな優勝ゴールを決めたFW神田洸樹(3年)、前線で献身的に上下動を繰り返したFWラナイメアー祈安(3年)ら3年生たちも優勝メンバーに相応しいプレー。“弱い代”が意地も見せて、MF中村俊輔(現横浜FC)やMF藤本淳吾(現京都)、FW小川航基(現水戸)ら偉大な先輩たちも立つことができなかった全国の頂点に上り詰めた。

 主将の西川がC大阪やU-20日本代表に帯同し、不在となることが多い中、チームを支えた2人の副主将は感慨深そうな表情。中村は「入学してからRookie League降格して、勝てなくて結構辛い時期があったんですけれども、インターハイで優勝できた。自分たちで『最弱から最強になろうよ』という話をずっとしていて、それを体現できたのかなと思います」と語り、サブに回ったCB粟野光(3年)も「自分たちが1年生の時にRookie Leagueから降格して、色々な人に良い印象を持たれたり、言葉を掛けられたことが無かったので、自分たちの代で自分は出ていないですけれども、全国優勝することができて、一つ嬉しい思いはあります」と素直に喜んでいた。

 鈴木勝大監督はこの世代の選手たちについて、大事な試合へ向かう際の気持ちの持って行き方の未熟さを指摘してきた。日大藤沢に雪辱し、インターハイ予選を突破した際には「監督というよりはメンタルトレーナーとしてやりました」と笑っていたが、コーチ陣に前向きな言葉をかけられながら、集中して試合に入り、本来の力を発揮した3年生たち。日本一に輝いた彼らは歴史に名を残すチームになることを目指す。

 今大会を通して1-0、1点差で勝ち切る強さを示した彼らの次の目標はプリンスリーグ関東復帰、そして選手権日本一。「インターハイ経由選手権というストーリーを作っていくために、この2か月、3か月、予選も含めて非常に大事な時間に突入していく」と語る鈴木監督、コーチ陣の下で慢心せず、「大事な時間」に力を高めて全国2冠を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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