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沖縄インターハイで輝きを放ったのは?”ユース教授”安藤隆人氏が選ぶ「ベスト11傑」

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安藤氏が選ぶインターハイ「ベスト11」に名を連ねたFW西川潤(桐光学園高、中央)とMF高木俊希(富山一高、左)

 令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」男子サッカー競技(沖縄)は8月1日に決勝戦を行い、桐光学園高(神奈川)が初優勝を飾りました。参加52校が熱戦を繰り広げたインターハイ。“ユース教授”ことサッカージャーナリストの安藤隆人氏に同大会で印象的なプレーを見せた11人を紹介してもらいます。

安藤隆人氏:「まさに刺すような日差しというべきか、強烈な炎天下の中で行われた沖縄インターハイ。過酷な1週間を勝ち残った桐光学園と富山一とで争われた決勝戦は、後半ラストプレーで決着がつくという劇的な展開となった。王者となった桐光学園の栄誉を称えつつ、ここではこの大会、筆者が見たベスト11を選出してみた。この選出基準はあくまで筆者が今大会で実際に見たチームの中からのみにさせていただきました」

◉フォーメーションは4-2-3-1
      大谷
西川    永松    高木
    古宿  渡邉
佐々木 金沢  奈良坂 藤吉
      平山

GK平山颯太(北越高、2年)
「大会直前のプリンスリーグ北信越の新潟明訓戦でずば抜けた活躍を見せ、そこから自信を持って今大会に臨むことが出来た。シュートストップはもちろん、DFラインの裏のスペースを埋める能力にも磨きがかかり、タイミングよくペナルティーエリアを飛び出してはクリアや攻撃のスイッチを入れるパスを繰り出すなど、ベスト8進出への立役者となった」

DF佐々木ムライヨセフ(桐光学園高、3年)
「左サイドバック、左ウィングバックという新天地でさらなる輝きを放った。前に仕掛けるスピードとタイミングをより頭を使って図るようになり、プレーにメリハリが出来た。守備面はまだまだ課題はあるが、もともとフィジカルにも優れた選手で、対人を得意とする部分は今大会で披露できただけに、さらなる進化が期待される」

DF金沢一矢(京都橘高、2年)
「ステップワークがうまく、ドリブルで仕掛けてくる相手、パスで崩してくる相手に対しても的確なポジショニングと重心移動で対応することができるCB。両足から繰り出される正確なフィードも魅力で、ボールを奪った状況から適した足と適したキックで前線につなげることができる。うまさが光る2年生CBだ」

DF奈良坂巧(桐光学園高、2年)
「昨年はボランチだったが、『CBや後ろの方が楽しい』と語るように、今年は4バックのCBや3バックの左を任され、最終ラインのキーマンとして今大会は安定したプレーを見せた。ヘディングの強さと対人の強さは相当な武器で、気迫満点で襲いかかる守備はまさに脅威。苦しい時間帯にこそ力を発揮できるファイターだ」

DF藤吉玲依(北越高、3年)
「戦況を見極める目を持ち、高いアップダウン能力を駆使して、右サイドで攻守にわたって活躍できるサイドバック。昨年からずっと注目をしていたが、ようやくその力が全国レベルであることをこの大会で示してくれた。特にサイドから中央に走り込んでくるインナーラップと、ゴールに向かった状態から繰り出される正確なクロスは猛威を振るった」

MF古宿理久(青森山田高、3年)
「チームは3回戦で北越の前に敗れてしまったが、前橋育英と大津を連破してきたチームの攻守の要としてバランスを司ってきた彼の能力に疑いの余地はなかった。彼にボールが入ると、一瞬時が止まるかのように、試合のリズムが変化をする。冷静な頭脳に磨きがかかり、セカンドボールへの反応の速さ、両足のキックで攻撃の起点作りなど、彼の存在感は多岐に渡った」

MF渡邉光陽(尚志高、2年)
「シーズン当初はCBだったが、直前のプレミアリーグEASTと今大会ではボランチとして安定したプレーを見せた。対人、カバーリング、インターセプトの質の高さは相変わらずで、ここにプレスバックのうまさ、奪ってからの展開力が加わり、改めて能力の高い選手であることを実証した」

MF永松恭聖(大分高、3年)
「今大会はコンディションが万全ではなかったが、随所に『見えているな』と思わせるプレーで違いを見せた。常に逆サイドや裏のスペースを視野に捉え、正確な長短のパスをテンポよく繰り出して攻撃のリズムを作る。特にカウンターの際に顔を出してボールを受けて、前線につなげる技術は素晴らしく、自らもアタッカーとしてゴールに迫ることができる。攻撃への関わり方が興味をそそる選手」

FW高木俊希(富山一高、3年)
「2年生レギュラーの負傷により、今大会はアンカーで抜群のバランス感覚とボールキープ力を発揮し、チームの決勝進出に大きく貢献した。アンカーのポジションでもタイミングを見計らってトップ下やサイドの位置に顔を出しては、正確なプレーで相手守備陣の歪みを生み出していただけに、このフォーメーションでは右のアタッカーで起用したいと思った」

FW西川潤(桐光学園高、3年)
「左サイドからの仕掛けは誰も止められない。今大会は1トップとしてプレーすることが多かったが、1トップに入れた大谷が非常にボールが収まるため、彼が後方から飛び出してくることがより相手にとって脅威になる。今大会、彼が生み出したゴールはドリブル突破からのゴールという派手なものではなく、クロスにシンプルに合わせたり、こぼれ球に反応したもので、彼のゴールセンスを存分に発揮したものだった。それをこの布陣でも発揮してほしい。

FW大谷澪紅(初芝橋本高、3年)
「とにかく収まる。決して大柄ではないが、どんなボールでも彼が前線で身体を張りながら、正確に収めては周りに配ってくれるからこそ、初芝橋本の攻撃は前への推進力があり、ベスト8進出の要因の1つとなった。『もともと裏抜けの選手だったけど、周りの選手のフィジカルが向上してきたら、それが難しくなった。高校では前線でボールを収めることで生きていこうと思った』と、新たな自分の武器を見出し、磨き続けたがゆえに、今では唯一無二の武器となった」

執筆者紹介:安藤隆人
 日本列島、世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。育成年代を精力的に取材する“ユース教授”。主な著書は『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』『壁を越えろ 走り続ける才能たち』(いずれも実業之日本社)、『高校サッカー聖地物語』(講談社)など
●【特設】高校総体2019

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