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リバプールを栄冠に導いたGKアドリアン、9日前まで無所属だった

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カップに口づけをするリバプールGKアドリアン

 欧州王者リバプールにUEFAスーパーカップをもたらしたのは、たった9日前まで所属チームのなかったGKアドリアンだった。試合後、ユルゲン・クロップ監督から「エイドリアアアアアン!」と名画『ロッキー』風に讃えられていた32歳。クラブ公式サイトは「2週間のおとぎ話」というテーマで、守護神の物語を伝えている。

 アドリアンは昨季、2013年から所属していたウエスト・ハムを退団。その後は自身の地元セビージャで個人トレーニングを積んでいたが、8月に入っても次のチームが決まらず、無所属のまま新シーズンを迎えようとしていた。そこで声をかけたのがGKシモン・ミニョレが退団していたリバプールだった。

「2週間前はスペインリーグなのか、他のリーグなのか、どこと契約することになるのか本当に分からなかった。しかし、リバプールが僕のところに来て、オファーをくれたんだ。今までの人生で最高の決断だった」。加入が発表されたのは8月5日。当初は控えGKからスタートする予定だったが、たった5日後に運命が変わる出来事が起きた。

 ノリッジとのプレミアリーグ開幕節、正守護神を務めてきたGKアリソン・ベッカーが前半のうちに負傷し、途中出場でさっそく新天地デビューを果たしたのだ。アリソンの離脱期間は数週間。控え選手は他におらず、代役を探そうにもすでに移籍期間は終了しているため、当面の間は32歳に大役が委ねられることになった。

 そうして迎えたチェルシーとのUEFAスーパーカップ。試合は1-1で規定の90分間を終えたが、延長前半5分にFWサディオ・マネが2点目をマークし、勝利に大きく近づいたかと思われた。ところが同9分、アドリアンはエリア内でFWタミー・エイブラハムを倒してPKを献上。微妙な判定ではあったが、そのキックをMFジョルジーニョに決められ、勝負の行方はPK戦に回った。

 それでも最後はアドリアンがドラマティックな形で主役の座を射止めた。両チームともに成功が続いて迎えた10人目、後攻チェルシーのキッカーはエイブラハム。アドリアンが自らPKを与えてしまった相手だった。「左に行こうとしたが、最後まで足を残すことができた」。因縁の相手から放たれたボールは見事な駆け引きで右足に当てた。

「右足でセーブできたが、信じられないセーブだった。全てのセーブは素晴らしいものだけど、最後のはとくに素晴らしい」。勝敗が決定した直後、リバプールの選手たちは真っ先に守護神の元へ向かい、手荒い祝福。中心になった32歳は「ビデオで見る必要があるけど、一生忘れない素晴らしい瞬間だった」と振り返った。

 なお、この試合の前には負傷中のアリソンから「アミーゴ、幸運を」というテキストメッセージを受け取っていたというアドリアン。「彼とレギュラー争いをするために来た」とプレイヤーとしての矜持も示した32歳は「彼と一緒に仕事をするのはとても良い。とにかく早く怪我から復帰することを願う」と温かいメッセージを送っている。


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