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頂点まであと一歩。CPサッカー日本代表・大沢が悔しさを露わにした理由

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頂点を逃したP.C.F.A.サルタル大沢翔太郎は早くも来年の雪辱を誓った

[10.6 第19回CPサッカー全日本選手権決勝 エスペランサ3-1 P.C.F.A.サルタル](長良川球技メドウ)

試合終了のホイッスルが鳴るまでエスペランサを追い込み続けたが、P.C.F.A.サルタルの優勝への思いは届かなかった。閉会セレモニーの始まりまで、ある者は虚空を見上げ、ある者は涙に暮れた。高ぶった感情のやり場を探しているような選手たちのその姿はこの大会へ懸けた思いを如実に映し出した。キャプテンである大沢翔太郎もその1人。大沢は様々な感情を一度押しつぶし、今大会をこう振り返った。

「自分たちは東京都のチームではありますけど、所属選手たちは東京都だけではなく、神奈川県や千葉県、栃木県に住んでいて、それぞれ家庭などもあり、全員揃って練習をすることが難しい部分があるのですが、『今年はメダルを必ず獲る。金メダルを獲る』と大会に臨んだので、今日の結果は本当に悔しいです。自分もそうですし、自分の他にも現役の代表選手がいますし、元代表選手もいる。そういう特長を持ったチームなんです。だから、チームでの練習量を補う為に個人を尊重しながら、大会の中でチームを成立させるために、それぞれの要求を交わし合って、擦り合わせを続けていこうと考えていました。悔しいですけど、来年こそは絶対に勝ちます」

 エスペランサの浦辰大と同じく大沢も現役のCPサッカー日本代表選手。大沢は脳内出血のため5歳から左半身に麻痺が残るが、右足から繰り出すパスのクオリティやバリエーションが豊か。現在は、大手証券会社に勤務しており、社会で磨かれたリーダーシップで、立場の違いから生じるそれぞれの要求をチームの力に変えるために、心を砕いてきた。

 今年スペイン・セビリアで開催されたW杯、2017年にアルゼンチンで行われた世界選手権の両方で出場経験があり、日本のCPサッカー界の今後を担う存在だ。そんな大沢に日本のCPサッカー界が進むべき道を聞いた。

「W杯を経験して思ったのは、『結果が出たから競技者が増えるわけではないし、競技者が増えたらすぐ結果が出るわけでもない』ということで、両方が上手くいくことが必要だと思う。ただ今の自分としては代表選手としてこれからもプレーしていきたいと思っています。今はSNSなどがありますから、そういうものをうまく活用してCPサッカーを普及させるパワーや認知度、個性を持つ選手というか、人間になりたいですね」

更なる精進を重ねていく決意をしたのち、「CPサッカー全日本選手権大会」の存在意義についても言及した。

「CPサッカーという競技の普及のために欠かせない大会ですね。今年、岐阜県という素晴らしい土地・会場で大会を開催させてもらえた。そして、その試合を見た人たちがそれぞれの方法で競技や大会を周知してくれて、それを見た若い子たちが『CPサッカーをやりたい!』ってCPサッカー界に集まって来てくれるきっかけとなってくれたりしたら、またこの大会の存在意義が増える。そういう大会だと思っています。だから、次はエスペランサを倒さないと!」

 大沢もまた、CPサッカーの未来を切り開くために。来年に向けての戦いがもう始まっている。

(取材・文 神宮克典)

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