[デフフットサルW杯]女子は前回W杯王者ロシアを撃破し過去最高の5位に。ブラジルが優勝
女子はW杯2連覇中のロシアに快勝した(提供:日本ろう者サッカー協会)
【デフフットサルワールドカップ2019 5-6位決定戦】(スイス・ヴィンタートゥール)
デフフットサル女子日本代表6-2(前半3-2)ロシア代表
デフフットサル女子日本代表が現地時間14日、5-6位決定戦で前回ワールドカップ(W杯)優勝のロシア代表と戦い、6-2と快勝。過去最高の5位で大会を終えた。優勝はブラジルだった。
前半4分、13分とロシアに2点をリードされる苦しい展開だったが、前半14分の阿部菜摘のゴールから逆襲。約2分後に岩渕亜依、1分も経たないうちに、阿部がこの日2ゴール目を決めて逆転に成功。後半も勢いを止めずに3点を追加した。主将の岩渕亜依が大会をこう振り返った。
「個人的には、前大会より良い成績で帰ることしか考えていなかったので、喜びというよりは安堵が大きいです。史上最高位とされていますが、自分たちが目標としていた順位ではなかった。(前回W杯準優勝の)ロシアに点差をつけて勝てたことは、日本が4年間積み上げてきたことを証明できた試合だったと思う。ロシアに点差をつけてしっかり勝った分、ベスト4を賭けたブラジル戦で1-2と僅差で辛抱負けしてしまったことが強く悔やまれます」
優勝したブラジルとは準々決勝で対戦し、1点差で敗れた。試合中に足がつっていたのはブラジルの選手だった。世界一になったチームの「背中」ははっきりととらえていただけに、史上最高の5位になった喜びより悔しさの方が余計に募った。女子日本代表の山本典城監督もこう振り返る。
「W杯2連覇中で前回予選リーグで負けたロシアに勝利したことはしっかりとこの4年間女子代表が積み上げてきたものを証明できた。試合終了と同時に、前回大会の6位を上回る5位となり、ほんの少しの安堵感がありましたが、やはり自分たちが目指していた場所はそこではなく、そこに辿りつけなかった悔しさでいっぱいです」
王者の背中が見えていても追いつけない原因のひとつに、金銭的な面の不足があげられる。日本パラリンピックセンター(JPC)から日本ろう者サッカー協会に支払われる助成金は、耳が聞こえない人が競技するオリンピック「デフリンピック」の種目に対して出される。サッカーには出されるが、その種目ではないフットサルには、助成金がほとんど回ってこないという。W杯でチームトップの8ゴールをあげた酒井藍莉は7月下旬、日本障がい者サッカー連盟主催のスポンサー報告会で、こんな悲痛な叫び声をあげていた。
「私は今、仕事に就いて1人暮らしをしていますが、合宿の参加費、遠征費をねん出するのは本当に苦しいです。代表には行きたい。そして母の喜ぶ顔が見たい。聞こえない子供たちの笑顔も見たい。でも、自己負担が大きい分、活動できる範囲も狭くなってしまい、(他の人で)代表をやめざるを得なくなるケースも出てきている。私もその一人になりそうです」
生まれつき、耳が聞こえない酒井は静岡県出身。小学2年生の頃、妹がサッカーをはじめたことをきっかけにサッカーをはじめた。男子、女子2つのチームに入り、準優勝を経験。中学でも藤枝ジュニアユースに入り、中3で全国優勝した。それほど潜在能力を持った選手が、今、代表活動の断念を考えるほど追い込まれている。世界トップを狙える人材の芽を摘まないためにも、日本ろう者協会には環境面を整えるためのスポンサー集めの努力が求められる。
得点者
[日本代表]
(前半)
阿部菜摘2点
岩渕亜依
(後半)
酒井藍莉2点
中井香那
先発メンバー
[日本代表]
GK1芹澤育代
FP11酒井藍莉
FP10岩渕亜依
FP6阿部菜摘
FP9中島梨栄
監督山本典城
【女子日本代表スケジュール】
≪予選≫
11月09日(土)△3-3スウェーデン
11月10日(日)〇6-0フィンランド
11月11日(月)●4-6ポーランド
≪決勝ラウンド≫
11月13日 ●1-2ブラジル
11月14日 〇5-4スウェーデン
11月15日 〇6-2ロシア
▼大会の公式HPはこちら
【女子日本代表選手】
GK1芹澤育代(FOREST ANNEX)
GK12佐藤優(SDFCアレグリーナ)
FP2原田明奈(アスレジーナ)
FP3宮城実来(SDFCアレグリーナ)
FP4田村友恵(LasMaleza)
FP6阿部菜摘(日体大学友会女子サッカー部、日体大FIELDS横浜サテライトB)
FP7川畑菜奈(SDFCアレグリーナ)
FP8宮田夏実(関西学院大学体育会サッカー部女子チーム)
FP9中島梨栄(中野FCアサレア)
FP10岩渕亜依(early.f.t)
FP11酒井藍莉(SAICOLO)
FP13鳥海玲奈(FOREST ANNEX)
FP14中井香那(sonrisa)
FP15一色麻衣(FUSION)
【スタッフ】
監督:山本典城
コーチ:本多さかえ
トレーナー:田場吏
トレーナー:宮澤楓
メンタルトレーナー兼通訳:高橋基成
スタッフ:朝倉ゆり奈
最終メンバーの詳細はこちら
(取材・文 林健太郎)
●デフ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら
デフフットサル女子日本代表6-2(前半3-2)ロシア代表
デフフットサル女子日本代表が現地時間14日、5-6位決定戦で前回ワールドカップ(W杯)優勝のロシア代表と戦い、6-2と快勝。過去最高の5位で大会を終えた。優勝はブラジルだった。
前半4分、13分とロシアに2点をリードされる苦しい展開だったが、前半14分の阿部菜摘のゴールから逆襲。約2分後に岩渕亜依、1分も経たないうちに、阿部がこの日2ゴール目を決めて逆転に成功。後半も勢いを止めずに3点を追加した。主将の岩渕亜依が大会をこう振り返った。
「個人的には、前大会より良い成績で帰ることしか考えていなかったので、喜びというよりは安堵が大きいです。史上最高位とされていますが、自分たちが目標としていた順位ではなかった。(前回W杯準優勝の)ロシアに点差をつけて勝てたことは、日本が4年間積み上げてきたことを証明できた試合だったと思う。ロシアに点差をつけてしっかり勝った分、ベスト4を賭けたブラジル戦で1-2と僅差で辛抱負けしてしまったことが強く悔やまれます」
優勝したブラジルとは準々決勝で対戦し、1点差で敗れた。試合中に足がつっていたのはブラジルの選手だった。世界一になったチームの「背中」ははっきりととらえていただけに、史上最高の5位になった喜びより悔しさの方が余計に募った。女子日本代表の山本典城監督もこう振り返る。
「W杯2連覇中で前回予選リーグで負けたロシアに勝利したことはしっかりとこの4年間女子代表が積み上げてきたものを証明できた。試合終了と同時に、前回大会の6位を上回る5位となり、ほんの少しの安堵感がありましたが、やはり自分たちが目指していた場所はそこではなく、そこに辿りつけなかった悔しさでいっぱいです」
ゴールだけでなく、決定機を作るパスも出し続けた酒井藍莉(右、提供:日本ろう者サッカー協会)
王者の背中が見えていても追いつけない原因のひとつに、金銭的な面の不足があげられる。日本パラリンピックセンター(JPC)から日本ろう者サッカー協会に支払われる助成金は、耳が聞こえない人が競技するオリンピック「デフリンピック」の種目に対して出される。サッカーには出されるが、その種目ではないフットサルには、助成金がほとんど回ってこないという。W杯でチームトップの8ゴールをあげた酒井藍莉は7月下旬、日本障がい者サッカー連盟主催のスポンサー報告会で、こんな悲痛な叫び声をあげていた。
「私は今、仕事に就いて1人暮らしをしていますが、合宿の参加費、遠征費をねん出するのは本当に苦しいです。代表には行きたい。そして母の喜ぶ顔が見たい。聞こえない子供たちの笑顔も見たい。でも、自己負担が大きい分、活動できる範囲も狭くなってしまい、(他の人で)代表をやめざるを得なくなるケースも出てきている。私もその一人になりそうです」
生まれつき、耳が聞こえない酒井は静岡県出身。小学2年生の頃、妹がサッカーをはじめたことをきっかけにサッカーをはじめた。男子、女子2つのチームに入り、準優勝を経験。中学でも藤枝ジュニアユースに入り、中3で全国優勝した。それほど潜在能力を持った選手が、今、代表活動の断念を考えるほど追い込まれている。世界トップを狙える人材の芽を摘まないためにも、日本ろう者協会には環境面を整えるためのスポンサー集めの努力が求められる。
スタンドには男子日本代表の姿もあった(提供:日本ろう者サッカー協会)
得点者
[日本代表]
(前半)
阿部菜摘2点
岩渕亜依
(後半)
酒井藍莉2点
中井香那
先発メンバー
[日本代表]
GK1芹澤育代
FP11酒井藍莉
FP10岩渕亜依
FP6阿部菜摘
FP9中島梨栄
監督山本典城
【女子日本代表スケジュール】
≪予選≫
11月09日(土)△3-3スウェーデン
11月10日(日)〇6-0フィンランド
11月11日(月)●4-6ポーランド
≪決勝ラウンド≫
11月13日 ●1-2ブラジル
11月14日 〇5-4スウェーデン
11月15日 〇6-2ロシア
▼大会の公式HPはこちら
【女子日本代表選手】
GK1芹澤育代(FOREST ANNEX)
GK12佐藤優(SDFCアレグリーナ)
FP2原田明奈(アスレジーナ)
FP3宮城実来(SDFCアレグリーナ)
FP4田村友恵(LasMaleza)
FP6阿部菜摘(日体大学友会女子サッカー部、日体大FIELDS横浜サテライトB)
FP7川畑菜奈(SDFCアレグリーナ)
FP8宮田夏実(関西学院大学体育会サッカー部女子チーム)
FP9中島梨栄(中野FCアサレア)
FP10岩渕亜依(early.f.t)
FP11酒井藍莉(SAICOLO)
FP13鳥海玲奈(FOREST ANNEX)
FP14中井香那(sonrisa)
FP15一色麻衣(FUSION)
【スタッフ】
監督:山本典城
コーチ:本多さかえ
トレーナー:田場吏
トレーナー:宮澤楓
メンタルトレーナー兼通訳:高橋基成
スタッフ:朝倉ゆり奈
最終メンバーの詳細はこちら
(取材・文 林健太郎)
●デフ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら
LINEでゲキサカを友だち追加
