beacon

中島の“股抜き”にも衝撃…大卒1年目でA代表のDF荒木隼人「ここがゴールじゃない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表初招集のDF荒木隼人(広島)

 1年前は240人の部員を束ねる主将。4か月前は「まずはしっかりレギュラーを取る」と意気込む大卒ルーキー。それがいまや、日本代表の一員だ。A代表初招集のDF荒木隼人(広島)は「うまくいかない時もどうすればいいか、今日何をしないといけないのかを毎日考えて過ごした結果が今日ここにつながっている」と自身のキャリアを振り返った。

「非常に気持ちが高ぶるし、責任感が増してきた」。合宿3日目の18日、キリンチャレンジカップ・ベネズエラ戦を翌日に控えた23歳は、率直に高揚感を表現した。1年前は関西大で部員240人を束ね、大学選手権に集中していた立場。「日本代表は目標にしてきたけど、この段階で入っていることは1年前は想像できなかった」のも無理はない。

 しかし、真摯に成長を求めてきたという自負はある。「非常に濃い一年だった。でも一日一日、やらないといけないこと、積み上げていくべきものをしっかりできていたからこそ、ここにつながっていると思う」。そう語った荒木は「ここがゴールじゃないので、また良い一日を積み重ねていきたい」と新たな道筋に胸を躍らせる。

 小〜中学校時代を生まれ育った大阪市門真市のG大阪アカデミーで過ごし、高校時代は広島ユースでプレーした後、関西大での4年間を経て、今季から広島に加入。転々としたキャリアからは苦労の跡も感じられるが、それらはすべて大きな力になっている。

「過去のことはすべて未来につながっている。今がうまくいっていなくても、しっかり取り組むことで必ず未来は良くなると、ユースや大学で実体験を通して感じてきた。うまくいかない時もどうすればいいか、今日何をしないといけないのかを毎日考えて過ごした結果が今日ここにつながっている」。

 プロ入り後もその努力は継続していた。出場機会を得つつあった6月30日のJ1第17節・鹿島戦、試合後に「この先のビジョンは?」と話を向けると、次のように語ってくれた。

「シーズンの終わりに向けて、自分の中でもっともっと高い目標を設定して、それに対して毎日取り組んで、反省と課題を見つけながらやっていくことが大事。そしてまずはこのチームでレギュラーを取ること。ここで結果を残していけば、その先に日本代表も見えてくると思う」。

 そうして半年足らず、そのビジョンは現実のものとなった。

 日本代表に入ってもなお、謙虚な姿勢を失うことはない。「まだ一つ一つのプレーの強度は高めないといけないと感じた。パススピードも丁寧で速いし、そこに合わせていけるように自分自身がもっともっとトレーニングからやっていかないといけない」。ゲーム形式の練習で対面したMF中島翔哉(ポルト)からの衝撃も受けた。

「昨日、中島選手と一瞬マッチアップするタイミングがあったけど、対応はできたと思ったのにうまく股を抜かれてシュートを打たれた。Jリーグだと対応できたかなと思うシーンでも、あえて股を開かせて素早く狙ってくるところはあるし、ステップももっとうまくならないといけないと感じた」。

 そうした一つ一つの段階を乗り越えて、A代表デビューが近づいている。「覚悟を持ってプレーすることが増えたと思う。プロ選手としてやっていく覚悟、日本代表としてやっていく覚悟、ここで生き残っていく覚悟が日に日に増してきた」。自らと向き合い続ける23歳は明日、積み重ねてきた“覚悟”を故郷大阪のピッチで見せつける。

(取材・文 竹内達也)
●カタールW杯アジア2次予選特集ページ

TOP