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強さの秘訣は練習後30分以内の「部飯」。京都橘に欠かせないマネージャーの仕事に密着

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選手権V候補の一角、京都橘高を「部飯」でも支えるマネージャーたち

 苦しみながらも京都府予選決勝で洛北高に3-2で勝利し、2年ぶり8回目の選手権出場を達成。全国でも上位進出が期待されるのが京都橘高だ。今年のインターハイでもベスト4に入るなど、コンスタントに全国で結果を残せる背景には、選手が毎日の練習後30分以内に食べる“部飯”の存在がある。料理を作るのは、女子マネージャー。6人のうち2人がグラウンド担当で、残りが学校にある調理室で放課後に選手に振舞う料理を作るのが京都橘の伝統だ。

 取り組みが始まったのは、京都橘が選手権に初めて出場した08年度の第87回大会より前まで遡る。初めてマネージャーが入部した年に、「これまで飲み水やビブスの準備は自分たちでやってきた。マネージャーだからこそ出来る仕事は何だろう。選手のために役立つ仕事は何だろうか考えた」(米澤一成監督)結果、生まれた役割だ。



 狙いは育ち盛りの選手の身体を大きくするために、白米を食べることだ。初めは右も左も分からない状態からスタートしたため、レトルト食品やお味噌汁をおかずにご飯を食べる所から始まったが、今では管理栄養士のアドバイスなどを参考にしながら、栄養面まで気にしたメニューが振舞われる。

「練習後すぐに栄養を摂れるのは有難いし、味もとても美味しい」とMF佐藤陽太主将(3年)が話せば、GK松田龍之介(3年)も「冬の寒い時期に温かい料理が食べられるのが良い。お腹いっぱいになるので家に帰るまで買い食いせずに済む」と続けるように、選手の評判も上々。部飯の効果もあり入学後に身体が大きくなった選手も少なくない。

 買い出しを行うのは毎週火曜日だ。マネージャーが女性部長と共に近所のスーパーまで1週間分の食材を買いに出かける。70人以上の食材を一度に買い込むため、スーパーで周りの人に驚かれることも珍しくないという。食材を選ぶ基準は人参や玉ねぎなど調理しやすく、日持ちする物が中心で、選手がマネージャーに伝えるリクエストを参考にしながら、1週間の献立を決める。試合で活躍するためのエネルギーを摂取するため、週の後半はうどんやパスタ、ジャガイモなど炭水化物を増やすなど工夫をこらしている。白米は選手が1人1合を持参するため、1人あたり1回の食費は100円程で済み、保護者にとって金銭的な負担が少ないのもポイントだ。



 調理が始まるのは授業が終わる16時過ぎから。18時半には練習を終えた選手が戻ってくるため、毎日が時間との戦いだ。取材に訪れた際のメニューは八宝菜で、ニンジン、玉ねぎ、白菜、椎茸、ピーマンをカットし、7キロもの豚肉と手際よく炒めていく。グラウンド担当と調理担当をローテーションするとはいえ、毎日のように台所に立っていれば、調理の腕も上達していく。中には野菜を少しでも早くカットできるようにと自宅で包丁さばきを自主練するマネージャーもいるという。学校内でも彼女たちの活動は知られており、食堂のおばちゃんたちから「あんた凄いね!」と褒められるという。



 毎日、膨大な量の食事を作るのは決して楽な作業ではない。ただ、村上菜希羽マネージャーが「『美味しい』と言われると頑張って良かったなって思える。量が足りなくなると、おかわりしてくれたんだなって嬉しい気持ちになる」と口にする通り、選手の幸せな表情が彼女たちの力になる。森口こはるマネージャーも、「選手の後ろ姿を見て、前より体格が大きくなっていたら部飯のおかげかなって思えて嬉しい。美味しいと言ってもらえたら料理の疲れがとれる。毎日美味しいご飯を作ってくれるお母さんにより感謝するようになった」と笑顔を見せる。調理もチームへの貢献方法の一つであり、彼女たちも欠かせない戦力だ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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