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怪我で32分間のみのプレー。鹿島内定の東福岡MF荒木主将「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かった」

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東福岡高のU-17日本代表MF荒木遼太郎主将

[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]
 
「悔しい1年だったと思います」

 名門・東福岡高で下級生時から主力を担ってきたU-17日本代表MF荒木遼太郎主将(3年、鹿島内定)は、最高学年となったこの1年間についてそう振り返った。県新人戦とインターハイ予選を制したものの、九州新人大会は自身のPK失敗で敗退。日本一を目指したインターハイは怪我で欠場した。

 目標としていたU-17ワールドカップも怪我の影響でメンバー落ち。それだけに、「日本一を獲ってやるという気持ちが人一倍強い」と特別な思いを持って選手権に臨んでいた。だが、11月24日のプレミアリーグWEST・大津高戦で右足首を捻挫。その後、選手権予選準決勝とプレミアリーグWEST・福岡U-18戦は欠場してこの試合を迎えていた。

「動き自体は問題はないんだけど、キックっていう部分に関してまだ思い切りやれない部分があった。(再び)やってしまうと動けなくなるかもしれないというリスクもあった」(森重潤也監督)という判断でベンチスタート。戦況を見て、勝負どころでの投入と見られていたが、10番は0-0の後半8分にピッチへ送り出された。

 彼がピッチに入る前から、東福岡の応援席は荒木への大コール。絶大な信頼感と、特別な期待感が伝わってくるほどだった。そして、シャドーの位置に入った荒木はサイドへ流れてボールを受け、少ないタッチでのパスやボールキープで押し込む一因に。相手DFラインの背後へアーリークロスを入れたり、プレースキックで得点に絡もうとしていた。

 荒木は長短の質の高いキックと視野の広さ、相手の逆を取る動きからゴールを奪うこともできるプレーヤーだ。だが、この日は怪我の影響もあってキックの精度がわずかにブレ、ミドルレンジからシュートを狙うこともできない。後半29分の失点後は何とか自分がチームの雰囲気を上げようとしたが、焦りのある中でそれができず、ゴールに結びつけることもできないまま敗戦の時を迎えた。

「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かったと思います。連覇をしている中で自分たちの代になって自分たちも連覇をしてやるという気持ちが本当に強かったんですけれども、決勝戦で筑陽さんはそれ以上の気持ちがあったと思うし、だから筑陽さんが勝ったと思う。筑陽さんには頑張ってもらいたいです」。連覇は6でストップ。ただし、荒木は悔しさを滲ませながらも敗戦を認め、対戦した筑陽学園高の選手たちを讃えていた。

 東福岡の3年間では特にメンタル面で成長できたと感じている。300名もの部員の中で下級生時から先発を勝ち取り、注目される中で重圧を跳ね返す力を身に着けてきた。試合後は最後までスタンドの前に残って仲間たちに感謝と謝罪。自分が全国舞台に立つことができなかったこと以上に、メンバーに入りたくても入れなかった仲間を全国に連れて行けなかったことへの悔しさが大きかった。

「メンバーに入りたくても入れない人がいたので、その選手たちを全国に連れて行けなくて、本当に申し訳ない気持ちがあって……。アイツらのおかげでここまで来れたのもあったので『ゴメンな』という気持ちで言いました。自分がこのチームのキャプテンになって、上手く引っ張れたかどうか分からないですけれども、自分に信じてついてきてくれた仲間たちに最後は『本当にありがとう』と伝えたかったので伝えに行きました」。

 後輩たちへ向けては「この試合を一日たりとも忘れることなく、来年の選手権でさらに良い結果を残していってくれれば、この大会が一個下の学年からしたら無駄じゃなかったと言えるものになると思います」とメッセージ。後輩たちがこの悔しさをバネに日本一を奪還してくれることを期待した。

 荒木自身はすぐにプロ生活がスタートする。「自分はこのあとのステージがしっかりと残っている。そのステージでは、さらに厳しいことが待っていると思うので、この高校サッカーで培ったものを今後のステージで発揮していけたら良いなと思っています」と力を込めた。この日、「もっと良い影響を与えられる選手になれたら良かった」と実感していた荒木は鹿島でその課題を改善し、“常勝軍団”に影響を与えられる選手、チームを勝たせる選手になる。



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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