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[MOM662]福岡大MF大熊健太(4年)_「確実に闘えるように」逞しさを身に付けた技巧派レフティのラストダンス

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大熊健太

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by KIRIN]
[12.11 大学選手権1回戦 福岡大3-0北海道教育大岩見沢校 柏の葉]

 縁も所縁もなかった福岡の地で積み上げた4年間が、自らを確実に成長させてくれたことは、誰よりも自分が一番よくわかっている。「守備に関しては際の部分と距離の部分で負けないという所を練習中から口酸っぱく言われているので、そこはもう練習で揉まれたかなと。確実に高校の時よりは闘えるようになっていると思います」。左足の武器はそのままに、闘える男へ変貌を遂げたMF大熊健太(4年=FC東京U-18)の大学ラストダンスは、柏の葉でその幕が上がった。

「大学に入ってからもほとんどないですね」と笑ったヘディングでのゴールが、重苦しい雰囲気を打ち破る。立ち上がりからやや劣勢を強いられた福岡大の、ほぼファーストチャンスは17分。左からFW井上健太(3年=立正大淞南高)が上げたクロスを、ファーでFW梅田魁人(4年=高川学園高)が折り返すと、その場所には8番が待っていた。難しいバウンドに「ヘディングしようか悩んだんですけど、結構ゴールが近かったので狙ってみようかなと思って」。大熊が頭で合わせたボールは、ゆっくりと右スミのゴールネットへ吸い込まれる。

「うまく自分の所にこぼれてきたなという感じでした」と照れ笑いを浮かべる先制弾でリードをチームにもたらすと、圧巻は試合終盤の後半39分。相手CKの流れから福岡大に訪れたカウンターのチャンス。「相手の1人が食い付いてきたのがわかったので、誘った感じですけど、そこで上手く剥がした瞬間にもうスペースしかなくて、運ぶしかないと思いました」と大熊は巧みなフェイントでマーカーを剥がすと、左サイドを50m近くフルスプリントで運び、中央へ丁寧なラストパス。途中出場の花田佳惟斗(4年=興国高)は左ポストにぶつけるも、同じく途中出場のFW今田源紀(3年=九州国際大付高)がきっちり流し込む。

 終わってみれば3-0での勝利。「ゴールとかアシストになりかけた所も(笑)良かったんですけど、それ以外は守備をしている時間も長かったですし、簡単なミスもあったかなと。法政戦はもっとプレッシャーも早くなってきますし、大事に試合になってくるので、もっと内容を良くしていかないといけないと思います」と本人は次戦に向けて気を引き締めるが、大熊の“1ゴール1アシスト未遂”がチームに勝利をもたらしたことに疑いの余地はない。

 中学高校の6年間はFC東京のアカデミーに在籍。当時から得意の左足を生かしたアタックには目を惹くものがあったが、トップチームへの昇格は叶わず、地元を遠く離れた福岡大へと進学。「もう流れに身を任せたらこうなりました。親(大熊清・前C大阪強化部長)もああいう仕事をやっていたので、そのアドバイスも多少ありながら、まああまり何も考えずに行っちゃったんですけど(笑)」と屈託なく話す笑顔に、おおらかな性格が透けて見える。

 とはいえ、FC東京時代とは様々な面で異なる環境が、大熊の意識に変化を訴えかける。「福大のサッカーが球際とか、ロングボールを蹴ってセカンドを拾ってとか、運動量を求められるサッカーをしているので、ユースの頃にはなかった部分が多くて、その課題をクリアしないとここでは試合に出れないので、そこは大学で意識して取り組んだ所でもありますね」。

 乾真寛監督もその変化はしっかりと察知していた。「技術力が前から高いのはわかっていたんですけど、4年間で変わったのは守備の貢献度とか、切り替えのスプリント力とか、球際の強さとかですよね。上手い選手にありがちな“走らない”、“闘わない”、“切り替えない”という所があったのが、その部分が付いてきたと思います」。身に付けた“福大らしさ”は、“大熊健太らしさ”にも好影響を及ぼす。走って、闘って、切り替えて。サッカー選手としてのトータル値が上がった手応えは、自身も十分に感じている。

 高校時代のチームメイトの活躍は気になっているようだ。「昨日もリョウ(明治大・佐藤亮)と連絡を取っていたんですけど、アイツは関東でMVPを獲っていて、『スゲーな』と思いますし、シュウト(明治大・安部柊斗)もFC東京入りが決まって、みんな同世代が頑張っているので、遠い所でしたけど刺激にはなっていました。そう意味では明治とやりたいですね。当たるには決勝しかないのかな。できれば、やりたいなというのはあります」。そのためにも、まずは次の法政とのビッグマッチを制さなくては、その先へ辿り着くことは叶わない。

 ここからの意気込みを問うと、力強い答えが返ってくる。「大学の集大成ということで、ずっとベスト4に行けなくて悔しい想いをしているので、全国の4強の中に入ってみたいという想いはありますね。目指すのは優勝ですけど、まずはベスト8の壁を超える所から1個1個やっていきたいと思います」。逞しさを身に付けた技巧派レフティの大学ラストダンスが前回王者を翻弄し、再び柏の葉を熱狂へ包み込む。

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(取材・文 土屋雅史)


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