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「ありがとう。ナイスゲームだったな」中学時代にユース昇格逃した2人が日本一懸けた舞台で再会

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清水ジュニアユース出身の青森山田高DF神田悠成名古屋グランパスU-18MF榊原杏太がファイナルで激突

[12.15 プレミアリーグファイナル 青森山田高 3-2 名古屋U-18 埼玉]

「すごく不思議な感じがした」

 青森山田高のDF神田悠成(3年)はそう言って笑う。その理由は高円宮杯U-18ファイナルという日本一決定戦で、自分と激烈なマッチアップを展開している名古屋グランパスU-18の選手がMF榊原杏太(3年)だったから。2人はかつて清水エスパルスジュニアユースで共に汗を流していた選手である。

「(神田)悠成とは本当に仲が良くて、今もオフで(静岡に)帰ると一緒に遊んだりしているんですよ。LINEでも普段から連絡を取り合っているし、今日の試合前もそうでした」

 榊原は2人の関係をそんな言葉で形容する。ジュニアユース時代は「二人ともエスパルスにいたときは試合に出られなくて、ユースにも上がれなかった」(榊原)という苦い記憶を共有している。そんな2人が日本一決定戦で相対するのだから、分からない。そして「本当に、うれしかった」(神田)のも当然だろう。

 名古屋のキーマンにしてU-18日本代表候補にも名を連ねるまでに成長した榊原のプレーはこの日も際立っていた。「本当に上手くなっていた」と神田が苦笑いを浮かべたとおりに見事に出し抜かれるシーンもあった。ただ、「名古屋の攻撃は本当に凄くて……。でも、チームとしては絶対に負けないと思っていた」と最後まで体を張って防戦を続けた。

 そんな神田の様子について、榊原は「悠成のプレースタイルは変わっていないですね。前からあんな感じです。でも質が凄く上がっていた」と振り返る。神田が「守備でめちゃくちゃ頑張るようになっていた」と驚いていたことを伝えると、「2年までは『自分がドリブルしてシュート打ってればそれでいい』という感じだったし、守備もしていなかった。そこは本当に自分が3年になって変われた部分なので」と旧友が自身の変化に気付いてくれたことを、ちょっと嬉しそうに話してくれた。

 試合終了直後、号泣する榊原に対して神田は「ありがとう。ナイスゲームだったな」と伝えた。榊原はピッチでは泣きすぎて言葉にならなかったそうだが、取材ゾーンでは落ち着いて試合を振り返った上で、「負けたことは悔しかったけど、ユース落ちた2人が日本一を懸けたピッチへ一緒に立てたなんて本当に感慨深いですし、嬉しかった」と笑顔も浮かべた。

 中学生のときに一回は夢破れた2人が、高校生になって日本一の夢舞台で再会した90分間。結果云々を超越した、確かに幸せな時間と空間がそこにあった。

(取材・文 川端暁彦)
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