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背番号4、そして副キャプテン…FC東京DF渡辺剛、飛躍の1年を終えて芽生える自覚

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FC東京DF渡辺剛

 ルーキーイヤーの昨季、シーズン途中にレギュラーポジションを奪取した。ピッチ上で結果を残し続けたFC東京DF渡辺剛は11月にU-22日本代表に初めて名を連ね、12月にはE-1選手権に臨むA代表に初招集され、香港戦でデビューを飾った。まさに飛躍の1年。大きな成長を遂げて迎える2年目のシーズンを前に、23歳になったばかりの若武者が、新シーズンに賭ける覚悟、そして夏に行われる世界大会への思いを語った。


「ここまでの選手はいなかった」
認められたことで得られた自信


――昨季加入したFC東京では、大卒ルーキーながらもシーズン中盤以降はレギュラーに定着しました。
「素晴らしい経験をさせてもらったと感じています。J1の舞台、あれだけのファン・サポーターの前でプレーしたことはなかったし、優勝こそ逃しましたが、シーズンを通して優勝争いをできたのは、ものすごく貴重な経験だったと思います。自分が試合に出られるのは2年目くらいになるだろう、もしかしたら2年目も出られないかもしれないと思っていたので、自分が思い描いていたものよりもうまくいっているのも確かです。試合に起用してくれた(長谷川健太)監督に感謝しています」

――チャン・ヒョンス選手が夏にアルヒラルへ移籍したことが一つのきっかけとなり、定位置を手に入れます。彼の穴を埋めなければいけないというプレッシャーもあったと思います。
「『チャン・ヒョンスと久保建英がいなくなって大丈夫か?』と彼らが移籍した際に言われていたと思うけれど、僕は気にならなかった。プレッシャーには感じず、チャンスだと思っていたし、チャン・ヒョンス選手から認められたことで自信もあった。今でも言えるけど、チャン・ヒョンス選手はJリーグでもナンバー1と言えるくらいのCBだったと思う。そういう選手から『お前ならやっていけるよ』と言われたことで、すごく自信になった」

――具体的に認められた部分というのは?
「技術やフィジカル、ヘディングや対人の部分を認めてくれましたが、一番は性格の部分でした」

――性格ですか?
「僕はチャン・ヒョンス選手から盗みたいものがいっぱいあったので、『一緒に筋トレをしよう』『一緒に何々をしよう』とグイグイ行きました。そうしたら、彼は『今まで一緒にプレーした選手の中で、ここまでグイグイ来る選手はいなかった』『自分からライバルに対して学ぼうとする姿勢の選手はあまりいなかった』『多分、お前は将来すごく良い選手になるよ』という話をしてくれました。僕はチャン・ヒョンス選手や森重(真人)選手をすごく尊敬しているので、分からないことがあれば聞くようにしています。試合に出られないとき、もちろん自分でも何が必要かを考えますが、経験のある選手に聞くのが一番だと思っています。的確なアドバイスをくれるので、今でも悩んだときには話を聞いています」

――試合ではCBでコンビを組む森重選手が横にいて、後方には林彰洋選手が構えています。彼らのような経験豊富な選手に囲まれた中でプレーすることで、1年目から持ち味を存分に発揮できたと思います。
「森重選手は本当に偉大ですね。安定感が抜きんでているし、色々な経験をしているので、どんなときでも冷静です。日本トップクラスの技術を持っているので、隣にいてくれることで安心できます。あと、林選手を含めて僕の周りは全員、日本代表経験者です。林選手、森重選手、室屋選手、橋本選手に囲まれているので、安心感が違います。皆から『自分の特長をガンガン出していっていい』『カバーするから思い切ってやれ』と言われているので、好きなようにプレーさせてもらっています」

――ただ、ルーキーイヤーとは異なり、2年目を迎える今季は、昨季以上に主力としての自覚を求められそうですね。
「2年目も同じではダメだし、副キャプテンとしてチーム全体のことを考えないといけません。『自分がこうやりたい』『自分はこうしたい』と言って、周りに負担ばかり掛けられないし、そういう立場ではなくなると思う。自分の持ち味を出しつつ、周りの選手をカバーしたり、チームを救えるようにならないといけない。あと、スタメンに絡んでくるような能力の高い大卒選手が3人も入ってきたので、彼らのサポートをしながらアドバイスできる立場になれればと思っています」

――今季から背番号は、高橋秀人選手や吉本一謙選手が背負ってきた「4」に変わりました。
「最初は昨年から背負わせてもらっている32番で行こうと思っていましたが、チームから『4番をつけてほしい』と言われました。自分の思いとしては、32番のユニフォームを買ってくれた方、着てくれている方がいるのに、そこで番号を変えるのは申し訳ないという気持ちがあり、変えることに抵抗もありました。ただ、色々な人に相談して、『伝統ある番号を着けるタイミングがあるなら背負った方がいい』『チャンスがあるなら着けた方がいい』と強く推してもらえたので、僕も覚悟を持って4番を背負うことにしました」


海外だろうが国内だろうが
代表に呼ばれる選手は呼ばれる


――今年1月にはタイで行われたAFC U-23選手権に臨み、史上初のグループリーグ敗退という悔しい思いもしました。
「間違いなく、自分の力が足りなかった。当然、悔しさがあるし、周囲から色々なことを言われているのも分かっています。でも、自分たちとしては、勝てないときにどうすればいいかを考えたり、チームが一体感を持つにはどうしたらいいかを考えることもできました。また、VARがあることで、一瞬の隙が失点につながってしまうと実感できたので、この悔しい経験を次につなげていかないといけないと感じています」

――ゲームキャプテンとして、初戦のサウジアラビア戦、第2戦のシリア戦ではキャプテンマークを巻いてピッチに立ちました。
「サッカーをやっている全員、プロ以外の選手も含めた23歳以下の日本代表だと思うので、キャプテンマークを巻いたときに責任の重みをすごく感じた。キャプテンマークを巻いて国歌を聞いたとき、自分の中で『ついにここまで来ることができた』ということも実感できたけれど、それ以上に重みを感じました」

――本大会では海外組が主力になる可能性があります。そういう状況で、大会を戦う難しさもありましたか。
「海外でプレーしている選手は、国内でプレーしている自分たちでは経験できないことを経験していて、その差は確実にあると思う。自分は、実力がある選手が試合に出るべきだと思うし、選手の起用は(森保一)監督が決めるものです。本大会に向けて、海外組がメンバーに選ばれる可能性が高く、自分たち国内組の枠は少ないのかもしれないけれど、それを言い訳にするつもりはない。それを含めての代表だし、競争だと思うので。橋本選手のように国内でプレーしていても、代表に呼ばれる選手は呼ばれます。だから、まずは自分が与えられた場所で全力を尽くすことが、本大会のメンバー入りにつながってくると思います」

――いつかは海外でプレーしたいという目標はありますか?
「ドイツのブンデスリーガでプレーしてみたいという気持ちがあります。ドイツは高さ、強さ、スピードとCBとしての能力が要求されるし、リーグ全体のCBの能力が高いと自分は思っているので、そういうところで勝負したい。外国籍選手の方が身長が高いので、高さで勝負する難しさもあるけれど、そこでどうやって生き残っていくのか体感したいですね。何歳までに挑戦したいというのではなく、必要としてくれるチームがあって、挑戦できるタイミングがあれば挑戦したいと思っています」

――本大会まで半年を切り、その思いも強まってきていると思います。
「まずは東京で試合に出られないとメンバーには入れないと思っているので、本大会のことを考えすぎず、まずは東京でやるべきことをやらないといけないという気持ちが強い。今はU-23日本代表に対して批判的な見方をされてしまうこともあると思いますが、本大会で結果を残して、その声を歓喜の声に変えて日本中が喜ぶ姿を見たいと思っています。僕たちは本番で金メダルを本気で獲ろうと思っているので、そこに向けてしっかりと準備していきます」

――ご自身のプレーを支える、“相棒”となる『アンブロ アクセレイター』の印象を教えて下さい。
「大学4年生の頃からアンブロのスパイクを履かせてもらっています。アンブロの方から声を掛けて頂いて、初めてスパイクを履いたとき、フィット感が素晴らしかったし、ボールを蹴りやすい感覚があったので、すごく気に入っています。あと、履いたときに“スイッチ”が入るようなスパイクだと感じたので、そこは今まで感じられなかった部分だと思う。自分はジャンプとか瞬発的な動きが多いタイプの選手ですが、スパイクに負荷が懸かるような動きにも対応してくれるし、ジャンプもしやすいスパイクなので、自分にはとても合っていると思います」

――最後に今シーズンに賭ける思いを聞かせて下さい。
「『プロ2年目として、しっかりと活躍してくれ』という目で見られると思いますが、考えすぎてもうまく行かないタイプなので、昨年同様、まずはチャレンジャーということで生き生きとやりながら、チーム全体のことを考えていきたい。何より、昨年は最終節でリーグ優勝を逃し、悔しい思いをしました。東京はリーグ優勝をしていないので、そこはもちろん狙いたいし、ACLのタイトルも目指します。自分がやるべきことをやって、必ずタイトルを獲りたいです」


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(取材・文 折戸岳彦)

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